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第14話 主人公は過ちを犯す 前編

 俺はベットの上に寝転び、昨日の遊園地での清秀院さんとのデートを思い返す。


 清秀院さんと花火を見た帰り道、俺は桐生と詩織のキスを目撃し、激しく動揺してしまった。

 そんな俺を清秀院さんは正面から優しく抱き締めてくれて「わたくしが忘れさせてあげます」と言ってくれた。


 はあ、清秀院さんってホント天使だよな。


 あの時の記憶が鮮明に蘇る。


 抱きしめた彼女の温かな体温。

 滑らかな黒髪から漂って来る甘い香り。そして俺の胸に押し付けらる大きくて柔らかなおっぱい。


 その記憶を思い出すだけで俺は…俺は……。

 清秀院さんゴメン。今日もまたおかずにさせて頂きます。


 俺はベルトのバックルに手をかけてベルトを抜き、ズボンを下ろした。

 コンコン。


「優ちゃんちょっといいかしら?」


 ええっ! 母さんこのタイミングで!

 俺、今から野獣タイムなんだけど!


「ちょ、ちょっと待って……」



 急いでバックルにベルトを通し直し。

「……うん、いいよ」


 ガチャ。

 母さんがドアを半分開け顔を出した。


「優ちゃん、実はね詩織ちゃんがお話があるって家に来てるのよ」


 は? なんで詩織が?

 もしかして昨日俺にキスを見られたからか?


「詩織と話す事なんて無いから帰ってもらって」


「優ちゃん、お母さんの一生のお願いだから、少しだけでいいから詩織ちゃんのお話しを聞いてあげて」


 母さんはそう言うとドアを完全に開けた。

 すると母さんの後ろから僅かに詩織の姿が見える。


 なんでもう家にあげちゃってるの!


「さあ詩織ちゃん入って入って。優ちゃん、ちゃんと詩織ちゃんのお話しを聞いてあげてね」


 母さんは詩織の背中を押して無理やり俺の部屋に入れると、詩織を残しドアを閉めた。


「……優斗、突然押しかけて来てごめんなさい……」


 詩織は胸に手をあて、申し訳なさそうな表情で斜め下を向いている。

 詩織が俺に対して、こんなにしおらしい態度を取るのは初めてだ。そんな詩織を見ているとやっぱりこいつは可愛いなと思う。


 特に俺は丈の短いスカートから見えてる詩織の足に目がいってしまう。

 細いけど程よい肉づきがあって、全体的にも長すぎず短すぎず絶妙なバランスからなる芸術品。それは前から見ても後ろから見ても美しいの一言に尽きる。


 詩織と付き合ってた頃、俺はこの神足を思い出しながら何度も……、って違うだろ!


「何しに来たんだよ、昨日のキスの件だったらもういいよ。俺たちただの幼馴染だろ」


「ただの幼馴染なんかじゃないわ。優斗、昨日すごい悲しそうな顔してたじゃない」


「っ! お前がただの幼馴染だって言ったんじゃないか!」


 詩織は俺の怒鳴り声に体をビクッとさせると目を瞑った。

「……ゴメンなさい」


 怯える仔猫のような詩織の態度に少し胸が痛む。


「もういい、早く要件を言って帰ってくれ。俺は忙しいんだ」


「ねえ優斗……私と清秀院さんの言う事が違ってたとしたら……どっちの言葉を信じる?」


「はあ? そんなの清秀院さんに決まってるだろ」

 何言ってんだこいつ、頭でも打ったのか。


「そうだよね……。優斗……あのね……」


 詩織はゆっくりと俺に近づいて来て潤んだ瞳でじっと俺を見つめた。


「な、なんだよ……」


「わたし優斗の恋人に戻りたいの」


 はあ?


「お前、頭大丈夫か? エイプリルフールならとっくに終わったぞ」


「冗談や嘘なんかじゃない。わたし優斗の恋人に戻れるなら何だってするから!」


「き、桐生はどうするだよ?」


「桐生君とはちゃんと別れて来たわ、だから優斗の恋人に戻らせて!」


 はぁ、何だよそれ。

 桐生が良くなかったから俺と寄りを戻したいって事か? 昨日はあんなに仲良くキスしてた癖にどんだけ尻軽なんだよ、ふざけんな。


 好きだった女がこんな女だと知り、俺の中で詩織の評価がとんでもなくマイナスになった。


 でも詩織は確かに昔から我儘だったけど、こんな女じゃなかったはずだ。もしかしたら別れたから熱が冷めて、本当の詩織が見えるようになったのか?


 もしそうなら、これも全て清秀院さんのおかげだ。

 残念だったな詩織、俺にはもう清秀院さんと言う素晴らしい彼女が居るんだ。もうお前の我儘は俺には通用しないって分からせてやる!


「そうか安心しろ、俺は今更もう遅いなんて事は言わない。実は清秀院さんとは取り合えず1月だけ付き合ってみようって言う、言わばお試し、仮の恋人の状態なんだ」


「そうだったの!」


 予想通り詩織の顔に喜びの色が浮かんだ。

 だから俺は笑顔で告げてやる。

「その代わり今度はお前が下僕で俺がご主人様でいいよな?」


「え?」

 詩織の目が点になった。


 ふっ。

 そうだ、俺はその顔が見たかったんだよ。



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