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消えた幼馴染みを探しに異世界転移します  作者: dome
七章(西の塔・再)
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7-8、会議(終)


 レアナの騒動の後、三人の王とシェレン姫と私は二の王の家でずっと話をしていた。

 

「コウさんの行き先は双方の国に聞いてからきめるとして、水竜と黒竜を成体にしないと話が進みませんね。風竜は一週間程で成体になりますが、あなたはどうなのです?」


 カウズは床にいる黒猫をじっと見た。黒猫のアレクはカウズの視線を避けて、私の膝に上る。私はアレクの背中を撫でた。


「アレクに用事がありますか?」

「人口調整についてお聞きしたいのですが、話してくれそうもありませんね……」


 カウズはフーッと息を吐いた。

 

『……現時点で人間の出生に分ける命の水はゼロだ。水の内訳は銀の盆が無いと正確には分からない』

「わっ、アレクがしゃべった!」


 私は驚いて猫の顔を見た。猫の話を聞いて、カウズはさらに沈痛な面持ちになる。

 

「聖地か……さいわい今日は休日ですし、今行きましょうか。聖地なら扉で……ああ……」


 机に手を付いて落ち込むカウズに、アマミクが続きを話す。


「転移扉の座標、白竜が変えていたみたいね」

「………」

「なーにが、西の守りは完璧よ、あの女の掌で踊っていただけじゃなーい、ウフフ」


 アマミクはいつもカウズから猿や猛獣等とバカにされているので、ここぞとカウズの失態をつついた。シェレン姫が心配そうにカウズを見ている。


「カウズ、どうしてフレイはアスラとセダンを滅ぼしたの? カウズはその理由を知ってる?」

「樹木には起こったことしか記載されませんので、理由は不明です。でもまあ、アスラの都を壊滅させたのは神と守護竜ですよ」

「都市の壊滅は夢で見たことがあります。沢山人が死んでとても怖かった……あれ、守護竜のしたことだっのね」

「主に火竜の魔法ですね、火竜は地上の都を人ごと焼き尽くしました」


 夢で見た恐ろしい光景を思い出して、私は猫を抱きよせる。猫はゴロゴロと喉を鳴らした。


「七百年まではサーラジーンは一人でした。行動に一貫性があった。しかし、その時代から、サーの行動に二面性が出てきたのです」

「「二面性」」


 皆で発言したら声が重なった。カウズは気にせず話を続ける。


「女神に体を与えたり、守護竜全員をつれてアスラを焼いたり、アスラ全域に女神が隕石を落とすのを許したり、ですね。女神に傾倒している竜は水竜だけでした。守護竜全員を集められるのは、サーラジーンしかいませんよ」

「隕石をアスラに? そんな怖い魔法があるんですか?」


 カウズはこくりと頷いた。


「魔力消費が恐ろしい程かかりますが、魔方陣は残っています。決行しようとすると西でも魔力を集めるのに一月はかかりますね」

「えーっと、フレイって、なんにも魔法使えないですよ? なのにそんなたいそうな魔法使えます?」

「樹木にはNo.8が魔法を使ったとだけ記載されておりますので、事実ですね」

「うわぁ」


 ……都の破壊だけでなく、国土の殆どを焼き尽くして砂漠にしたなんて、フレイはなんてことをしたんだ。


 私は自殺しようとしていたアマミクの原因がフレイのせいであることを申し訳なく思いアマミクを見る。ミクは私と目が合うと、歯を見せて笑った。


「コウ、アンタがやったわけでもないのにそんな顔しなくていいよ、あのとき私は国を追い出されてセダンにいたし、火竜も地下に潜ってたからね、私や火竜に向けて天罰が下ったわけじゃないの、気にしないで」

「サーはそれに怒っていたのでしょうね。国が代表である三の姫と守護竜を放棄したから、神が罰を下したと樹木には書いてあります。姫を放棄する気持ちはとてもとても、よーく分かりますがね……」

「なによー」


 アマミクを見て溜め息をつくカウズを、ミクがにらむ。カウズが手を払うと、ミクの卓に散らばるパン屑が隅っこにまとまった。

 私はフレイの夢を思い出しながら呟いた。

 

「サーとフレイは破壊しない……二人は基本的に、生き物の自由を尊ぶもの。作るだけで見てるだけなの。だから悪人も処罰しないし、悪いことも消えないんだけど……」

「はい、七百年まではそうでしたね。その時代に変化があったと想定するのが妥当でしょう」

「……迷子?」


 カウズは手にしていたキューブから顔を上げて私を見た。


「それはどういった意味でしょう? コウさんは女神の視点でしか世界の事を知り得ませんよね? 聖地に迷子がいたと言うことでしょうか」


 聞かれて私は冷や汗を流す。


「ご、ゴメンね。その辺の記憶は夢に見ていないの。双竜が生まれて、フレイが竜の体に入って、セダンで殺された事しか分からないの」

「セダンで殺されたって、時期とか場所とか分かる? それって俺が結晶になる前だよね、旧セダンの話だよね」

「ごめんね、年代は分からないの。というか、今現在私は何年で何月で何日なのかも知らないから、夢の話となるとさっぱり……」


 アマツチと私、分からない者通しで顔を見合わせていると、カウズがフムと手を合わせた。


「今日は千十九年、夏季の四十一日です」

「……四十一」


 ……三十一日より月が多いなんて、いや、夏季って何だ? これが月? フレイの夢にカレンダーが出てこなかったからさっぱり分からない


 慣れない日にちの数え方に私が頭を悩ませていると、アマツチがボーッと呟いた。


「……あなたのせいじゃない」

「あんた、今なんて言った?」

「あなたのせいじゃない、と言いましたね」


 アマミクとカウズににらまれて、アマツチは萎縮する。


「先日、倒れたコウが朝に西の塔をうろついていたんだ。その時に、コウが言っていた言葉だよ」

「……私そんなことを言ってない」

「じゃあ、やはりあれはコウちゃんじゃなくて、フレイっていう人だったんだな。内容は、謝られたのと、俺にしか出来ない事だった、あとは想定外の事が起きて、最悪な事態になった。と言っていたよ」

「西が滅んだのはアンタがアホなせいよ」


 アマミクが辛辣な口調で言い放つが、アマツチは困って笑った。


「覚えてないのに責められてもな、そこには空虚しかないから反省も出来ないよ」

「私もそのへんは分かりません」


 私はアマツチの記憶の欠如に同意した。それを見てカウズがフムと頷く。


「七百年代、サーの二面性、一の王とコウさんの記憶の削除。ここが鍵ですね……」


 カウズは机に置いたキューブを手に持って立ち上がった。カウズは薄笑いを浮かべてアマツチを見る。


「アマツチ、アスラを探索しなさい」

「……は?」

「ここ最近、呪われたアスラの大地は清浄化されつつあります。火竜の住む南はかわらずですが、北に森が出現しました」


 ……森って、出現するものなのかな?


 話を聞いていた私は、突如現れる森が想像できずに苦笑した。いや、ママの好きなアニメ映画でそーゆーシーンを見たことがあるけれど。


「森というより、密林なのですがね。偵察に行っていただきたい」

「え、何で俺? 南は怪力女の担当っしょ?」

「三の姫を行かせて、何か利益があると思いますか? こいつは破壊と服従させることしかやらないでしょう、その点、一の王は暇ですし、隠密行動に適しています」


 アマツチは不満そうに机に頬杖をついた。


「……ほんとーに、物知りだなアンタ、よく現状を理解してるよ」

「アスラ北部に拠点を張っているだろう、想定外の何かを探索して来てくださいね」

「ちなみに、何がいると想定してる?」


 カウズはそんなこともわからんのかと、アマツチを見る。


「邪神がいるでしょう。コウさんの言われる迷子ですかね。白竜を使役出来るのはサーしかおりません。なので七百年代にサーが分裂したと言うワタシの推測をのべておきます。あと、白竜が持っていた青い液体についても調べて来てくださいね」

「……神相手に、何が出来る?」

「見てくるだけでいいですよ」


 そこでアマミクがドンと机を叩いた。


「アスラに邪神がいるなんて、火竜は言ってなかったよ!」

「でもね、ミクさん。火竜はサーは起きていると言っていたの。でも、アレクも私も、サーラジーンはずっと寝てると思ってる。だったら、火竜がサーと呼ぶのは、誰?」


「レーン」


 カウズの呟きに、みんながカウズを見た。


「誰それ?」


 アマミクが眉を寄せて聞く。カウズはうーんと考えながらつぶやいた。


「女神が消える数年前に、聖地にそういった名前で呼ばれていたものがいたらしいです。その人物が邪神に変わったのかも……」


 レーンという名前を聞いて、私の心臓はうるさく鳴った。それは、イギリスの病院で書庫のジーンさんから知り得た名前だ。


「……レーンは、もしかして、時間を操る魔法使いなの?」

「いや、時間を操る魔法はありませんよ」

「無いの?」


 この世界の魔法を全て記憶し、管理している塔の長が言うので本当なのだろうが、それだとサーラジーンの話しが嘘になってしまう。


「時間操作が可能なら、No.8の死は阻止しますよ。出来れば体の起動もしてほしくない」

「えっ、あっ、フレイか。アスラとセダンの崩壊か。そうだね、あれがやり直せるならそれにこしたことはないね」

「……なら、話を戻しますよ」


 サーラジーンや書庫のジーンがいると言うのだから、レーンという時間を操る魔法使いはいると思うのだけど、私にはいるのだと反論出来なかった。だって、なんの証拠も無い。


 私がションボリしてうつむくと、膝の上のアレクが私の頬をペロリとなめた。私はアレクのスベスベした背中を撫でて、心を落ち着かせた。


「アマツチはアスラに行き、邪神を視認し、生態ナンバーを取ってくること。あとは、コウさんをアスラ側に取られる事が無いよう、常に誰かが守り、また、守護竜を害さないようきっちり隔離してください、以上」


 言うことを言うと、カウズは書類をまとめ、キューブをポケットにしまい私室に籠ってしまった。

 カウズに置いていかれた姫は席を立ち、食器の後片付けを始めたので、私も手伝う。姫は慣れた手つきで食器を洗うのを見て、私は聞いた。


「ファリナって、お姫様も家事をするの?」

「初めは何も出来ませんでしたよ、ここの研究員さんの仕事を見て、一つづつ教えて貰ったのですわ」


 ……努力の人だ!


 私は感心して、拭いた皿を重ねていく。


「私はママが家事全般を出来なかったので、小さい頃から掃除洗濯、炊事をしていました。裁縫もちょこっとね」

「カウズ様はなーんにも出来ません。まあ、食べず寝ずでも体調には問題ないらしいですが、人らしい生活をしていただきたいので頑張っておりますよ」


 ……愛だ。姫からラブオーラが出てる


「コウさんは、ジーン様とお知り合いなのですよね」

「あ、はい。四才の時から一緒に暮らしていました」

「ジーン様って、ほとんど口を開きませんよね、私、彼がお父様の命令に返事をしているときしか声を聞いたことがありませんの」

「それは、アレクを越える無口っぷりだぁ……」


 私が困って笑うと、姫もつられて笑った。

 

「本体は極めて明るい、真面目が服を着ているような人なのです。でも、あの体に入ると感情を忘れるとか言ってたかな? 笑うという事も全て忘れていたと言ってました」

「まあ、ジーン様って笑われるのです?」

「ワハハと、大口を開けて笑うのではなく、隅っこで肩を丸めて口を隠して笑いますよ。本体はおだやかで人懐っこい優しい人です」

「それは、一度拝見して見たいですね。かなりのレア物件なのです」

 

 シェレン姫の笑顔を見て、私の胸はチクリと痛んだ。これはあれだ。菊子さんに感じていたものと同じだ。この人にはかなわないという劣等感と、信を持っていかれる予感。

 私はあの時ちゃんと信に言うべきだったのだ。常に隣にいたい、いつも見ていたいと。たとえそれが世間一般の恋心とは違っても、ちゃんと好きだと言うべきだった。

 

 私がボーッとしている間に、姫は皿をしまって、キッチンの水滴をきちんと拭いた。

 

「今夜は美味しいものを食べましょうね、買いだし頑張りますので」

「あ、私も……」


 ……買い物に行きたい。と私は思ったが、二の王が嫌がりそうなのでそれ以上言うのはやめた。


「作るの手伝わせてくださいね」


 私が笑うと、姫もありがとうと言い、キッチンから出ていった。アマミクとシェレン姫は、アマツチを荷物役にして買い出しに行く。私はひとり庭でため息をついた。


「……常に隔離されていろって、私本当に迷惑ものだな、何のためにここに来たのか疑いたくなるレベル」


 独り言を言ったつもりが、足元から返答が来る。


『フレイが計画したことだ、内容はフレイとサーしか知り得ない』


 ……問題は、フレイと私は絶対に会えない事だ。そしてサーも寝っぱなしだ。


 私は猫を抱き上げて、その顔を覗く


「君はいつ大人になるの?」


 私がアレクの黒い目を覗くと、猫はフイと顔をそらした。嘘のつけない竜にとって、答えたく無いことは沈黙するようだ。そんなに返答に困る質問だったのだろうか?


 私は猫を地面におろして、自分の胸元を上から覗いてみる。胸そのものは短いタンクトップのような下着に隠れて見えないが、夢で見た大人のフレイのように谷間が見えるなんていうことは無かった。

 

 ……ぺったんこ。


 自分で思って自分で傷つく。

 誰だ? そんなことを言うのは。


 私はつい最近聞いた気がして、それはフレイの記憶だろうと漠然と思った。

 その時フレイは、アマツチを懐かしいと思って見ていた。それは恋人に向ける感情ではない。自分の息子を思うようなあたたかなものだ。


 ……フレイとアマツチは、セダンで何かあったのかな? フレイのセダンでの事は、本当に何も思いだせないのが不思議。どうしてここの記憶だけは消されているのか。アレクは知っているだろうな。聖地でアレクはいつもフレイのそばにいたもんね。


 私は胸のセレムが落ちないように手で押さえて、地面にいる黒猫を撫でた。



◇◇


 夏の日の朝、風竜の朝のお勤めを皆で見学した後、アマツチ、アマミク、私と二匹の竜はセダンからの迎えの翼竜で帰ることになった。

 塔の転移扉は白竜襲撃時から調整中なので、空路になったらしい。


「二の王、シェレン姫、お世話になりました」


 私が日本風に深々と頭を下げると、カウズはクスッと笑った。直角に体を折るしぐさは珍しかったらしい。

 セレムはシェレン姫の前でふわふわと浮いていた。


『前任がいやに心配していたぞ。お前の行きつく先はここで大丈夫か?』


 セレムのぶっきらぼうな口調に、姫はクスクス笑う。


「最良です。ファリナのお城でもよくして頂きましたが、私は面倒を見られるよりも、見ていたいのだと理解しました。前任の方に感謝を伝えたいです。ここに連れてきてくたさって、ありがとうございました」


 少し涙ぐんで感謝を述べる姫に、セレムは照れたのか逃げるように空に浮いた。セレムはそのまはまふわふわと飛んで、二の王の頭の上に乗る。


『姫の件も、四の王の件も、西に苦労をかけっぱなしですまないな。いつかまとめて礼を返すから、考えておいてくれ』

「なら魔昌石で返してくださるとありがたいですが、国が落ち着いてからでいいですよ」

『今後、さらに迷惑をかけると思うのだが……』


 二の王は穏やかに微笑み、その竜を見つめた。


「……私の望みは、西だけが栄えることではなく、この世界の安泰と均衡ですからね、早く北を立て直してくだされば、それで」


 二の王の鼻の前で、水竜はニヤリと目を細めた。


『骨の髄までしゃぶりつくすぞ』

「私の仕事は高くつきますよ」

『……うへぇ』


 セレムは二の王から離れて、勢いよく私の胸に飛び込んできた。

 私の姿は、竜に乗るらしいので下はズボン、上は半袖のセダン風の服、そして風避けに学院で貰ったマントを被っていた。


『腹に帯をくくれ。これでは俺が下に落ちる』


 道中寝る気満々のセレムに私は笑う。


「二の王と何を話していたの? どうしてアスラに行きたいの?」


 セレムは、帯で固定された私の胸元から眠そうに答えた。


『アスラには四の王探し。二の王は……ここにも四の王の気配があるから、万が一の為の道作り』


 私は、四の王はアーヴィン殿下の子どもになると思っていたので、今生まれている可能性を全く考えていなかった。セレムは、考えられる可能性を全部潰しておきたいんだ。


「ね、私に手伝えることはある?」

『……もっと太れ』

「なんで?」

『あんな量の出血で倒れんよう、ブクブクに肥えるがいい』


 言い方がとても酷いが、多分これは、貧血で倒れないように健康になれと言っているのだろう。


「心配してくれて、ありがとう」

『胸が板だと、寝心地が悪いのだ』


 ――全然違った! 体調の心配ではなかった。


 私は胸から白いヘビを取り出して、アマツチに向かって投げつけた。アマツチは白いヒモのような竜を受け取り、腰にぶら下げている布袋にいれた。

 ミクはシェレン姫をそっと抱きしめてお別れをしていた。その横で、ミクの怪力に潰されないか、二の王が心配そうに二人を見ている。


 飛竜の前で、アマツチと私は喋っていた。


「ミクさんも、女の子の知り合いが出来て良かったね」


 私が微笑ましく二人の女子を見ているので、アマツチはからかうように言った。


「あの女が、いらんことを姫にしてないといいけどね」

「いらんことって?」


 アマツチは私の耳に手を当てて、小声で言った。


「ピアスをつけた日に、アマミクがやらかしたような……」

「……ひっ!」


 私がフレイに体をのっとられ、ミクにキスをされて倒れた日を思い出して、私の顔は真っ赤になった。すると私の足元にいた黒猫が、アマツチの足に爪を立てた。


『……不用意に、近付くな、消すぞ』


 猫の姿で威嚇しても怖くは無かったが、消すと言う言葉は本気だろう。私は青くなって黒猫を拾い、アマツチから距離を取った。

 アマツチは肩をすくめて、カウズに別れの挨拶をしに行った。

 私はアマツチの後ろ姿を見て、ため息をつく。


「もしかして私は、一の王とお話をしたらいけないのかな?」


 猫はニャアと鳴いた。


「むぅ! ちゃんと言語化して! 理由を教えて!」

『それは禁忌に触れる。サーが消したものを我々が口にすることは出来ない』

「いや、でもさ! 理由が分からないと納得出来ないし、一の王に近付くと爆発するとか、そーゆー理由を話して」

『ならば、それでいい』

「……は?」

『過去のフレイは一の王と接触して、結果的に爆ぜて飛び散った。サーはそれを酷く懸念されている』

「アレクセイ、人間は爆発しないわ……」

『過去に実際に起きたことだ』


 ……そんなん納得出来ないし。


 私は猫と会話することを諦めて、飛竜の大きな翼を撫でた。先端に爪のついたコウモリのような翼はとてもかっこいい。人に慣れている竜は、私が触れても大人しくしていてくれた。


「竜はいいねぇ。知性のある守護竜もいけど、野生の竜も個性的でキレイだなー」

『良かったな』


 ぶっきらぼうないいようだが、本当にアレクの言う通りなので、私は頷いた。



 飛竜の背にまたがり、西の国からこの島を見下ろす。

 聖地周辺の三日月型の森は西側が薄くなっている。なので、東からは聖地に行きにくく、西からは行けるのだ。

 聖地から戻る時にアマミクが焼いた大地も、浄化されて野原と化していた。


 私はアマツチの背中を見て、ここまでの旅路の意味と、サーやフレイの事を考えていた。


 先日の伝説の王との話で、私はここに来た意味がおぼろげに分かってきた。

 何人もの日本の人を傷つけて、多くの研究者がサーの命を繋ぎ、無力で非力な私をここに送ったのは、この世界を消さない為だろう。

 私はカウズの言う神の代理は出来ないけれど、肥やしくらいにならなれる。私の使い道なんてそれしか思い付かない。

 

 ……だから私はイギリスに戻れなかったし、ジーンさんはずっと待っていたのかな? でも待ってるって事は、帰れる可能性はあるの?


 多分私がここですることは、神様のかわりができる人を探して、その人にこの世界を守ってくれるように頼むこと。そして、その人の名前はレーンだろう。


 私は空を見上げた。

 空はどこまでも高く晴れ渡り、名も知らぬ鳥が空を横切っている。


 ……なんにしても、信はおじさんの所に帰って貰わないと。あと、アスラにいるらしいレーンという人に菊子さんを治してもらう。これだけは譲れない。


「……一度アスラに行って、レーンという人にお願いしないといけない、頑張ろう」


 私は黒猫を胸に抱いてフゥと息を吐いた。そんな私を小さな黒猫はじっと見ていた。

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