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消えた幼馴染みを探しに異世界転移します  作者: dome
七章(西の塔・再)
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7-7、会議

 

 白竜が去ってから数日経過した。紫の障気で倒れていた人達は全員回復し、塔に日常が戻っていた。

 週の中日は塔では休日とされている。そんな休日の昼前に、三人の王とシェレン姫はカウズの自宅で卓を囲っていた。


「でね、シェレン姫は一度ファリナに帰って頂きたいのですよ……」


 ずず……と、お茶をのみながらアマツチが言う。


 アマツチは聖地自治区での経緯をみんなにに話した。姫はその話しを聞いて、目を輝かせて喜ぶ。


「……まあ、私、お値段をつけられましたわ」

「いや、犯罪者以外で値段つけられる機会なんて普通はないから、あのこがアホなだけだからね」

「守れと言ったのに、はぐれるアマツチも愚かですがね」


 カウズの辛辣な一言に、アマツチは肩をすくめた。


 ……いや、自治区で売られた件については私が全面的に悪く、アマツチは全く落ち度無いんだけどな。


 私は部屋の隅でアレクを撫でながら、みんなの話を聞いていた。

 アマミクは話が自分と関係が無かったので、机に伏せて居眠りをしている。

 姫とアマミクはいつの間にか仲良くなったようで、姫はアマミクの肩にショールを掛けていた。

 カウズとしては姫とアマミクが懇意にしていることが不本意なのだろう。しかし口を出す気は無いようで、黙ってシェレン姫を見ていた。


「シェレン、あなたは居場所をファリナ王に伝えておられないのですか?」

「それは、どうやって?」


 カウズは笑顔をひきつらせる。


「手紙も魔法も手段はいくらでもありますよ? ファリナとは常に外交をしていますから、てっきり周知の事と思っておりました」

「前の水竜の導きにより、西へと連れてこられまして、そのまま安寧と時を過ごしてまいりましたが、まさか水竜と懇意のお父様がその事をご存じないとはゆめにも思っておりませんでしたわ」


 カウズとアマツチは顔を見合わせた。


「聖地に引きこもる直前の水竜」

「さぞ錯乱されてたのでしょうね……」


 カウズは姫の手を取ってニッコリと微笑む。


「北への扉の座標が直り次第ファリナに参りましょう。私個人も王宮魔術師殿に納めたいものがありますし」

「まあ、カウズ様も一緒にいらしてくれるのですね!」

「勿論、世界にとっても重要な事ですので、共に参ります」


 アマツチは「頑張れ!」と、笑ってカウズの肩を叩いた。カウズは友人の能天気な顔を見てため息をついた。

 シェレン姫は席を立ち台所に向かう、おそらくお茶をいれるのだろうと私もついていくと、カウズに呼び止められた。


「……コウさん」

「ん?」


 カウズはチョイチョイと手招きをする。

 姫との話が一段落ついたら、次は私の話らしい。

 私はアレクを抱いたままカウズの前に立った。


「コウさんの血を頂きたいのですが」

「あ、はい、カッターを取って来ます」

「カッター?」

 

 私は部屋の隅に置いていた小さな手さげを開けてカッターナイフを取り出す。それをカウズに渡すと興味深げに触っていた。


「それ、紙を切る道具らしいよ? 俺それで切られかけたし」

「そんなことはしてないよ!」


 慌てて弁明するが、カウズはカッターに釘付けで聞いていないようだった。


「金属をこんなに薄く加工するなんて……」

「あーこれとても便利ですよ。刃の先端を切り目で折れば切れ味戻りますし」


 私はカチカチと刃を出したり引っ込めたりしていて思い出した。


「セレムとアレクを避難させないと、守護竜に私の痛みが伝わります」

「ああ、取るときに結界を作るので、そこで採血すれば大丈夫でしょう」


 ……さすが二の王、千年生きているのは伊達じゃない。


 カウズと二人で話していたら、シェン姫がお茶を手に戻って来たので、私は焦った。

 愛するものたちの邪魔をするととても怖い目にあうのだ。小さい頃から私は、ママと隼人の邪魔をしないように気をつかっていたので、シェレン姫とカウズの間を邪魔しないよう、細心の注意を払った。

 私は姫に聞こえやすいように、カウズの目的を話す。


「カウズは血を取るのだったね、ちょっと今血が足りないからあんまりあげられないけど、それでもいい?」

「……失礼」


 カウズは私の顔に触れて、あかんべーをするようにめくり、目を見ていた。


「貧血ぎみですね……怪我をしたというのは本当だったんだな……」

「わわ……」


 私は驚いて尻餅をついた。カウズは助け起こそうと私に手を向けるが、姫が怖いので、一人でそっと起き上がった。

 机の端にいるアマツチはにやけ顔で私を見ている。私はその顔がめがけてセレムを投げつけた。


 ……カウズは不用意に接触しないで欲しいよ!


 いつも寝ているセレムは投げられる事に慣れてしまったようで、一瞬起きたが、アマツチの膝の上で寝直した。


 カウズの手伝いに慣れているのか、シェレン姫は私の横に立って、看護師さんのように私の腕を消毒する。

 カウズは私に昔の注射器のようなものを見せた。


「これくらいなのですが、大丈夫ですか?」


 カウズは一センチくらいの目盛りを指差した。


「あっ、はい! 倒れたら寝てもいいなら大丈夫です!」

「なら長椅子で取りましょう。そのまま横にもなれるので」


 カウズは長椅子全体を結界で囲った。

 血は何度もアリスに取られたけど、何度やっても体に針が刺さるのは怖い。

 私は怯えながら長椅子に座ると、アレクがトトッと走り、膝の上に乗った。


「アレクは痛いから、魔方陣の外にいて」


 黒猫を床に下ろすと、また膝に乗ってきた。


「ニャ」

「いや、キミは言葉喋れるでしょ、猫の振りをしない」


 ぐりぐりと猫の額を指でつつくが、アレクは何も説明しなかった。


「……キミはマゾなんだね、痛いの平気な子なんだね」

「ニャ」


 ……鳴き声に一ミリもぶれがないよ。さっきと全くおんなじで、何考えているのかちっとも分からないよ。


 心の中で文句を言うが、アレクは完全に私を無視した。

 その様子がおかしかったのか、姫はクスクス笑う。私は顔を赤くして、カウズに腕を差し出した。

 カウズは手慣れた様子で血を抜いて小瓶に移す。


 膝の上の猫は「ニャ」と、一声鳴いて、針の痕を舐めて消した。猫は魔方陣を展開しなかったので、カウズは目を丸くして驚く。


「黒竜は、治癒能力に長けているのですか?」

「……ニャ」


 少し溜めたアレクのニャ。いや、違いは分からないよ?


「守護竜はみんな治癒力があるのかと思ってた、これってそんなに驚く事なの?」

「いえ、得手不得手はありますが、守護竜は殆どの魔法を使えますよ」

「おお、さすが守護竜」


 私は猫に額をくっつけて、「ありがとう」と言い、その背中を撫でた。


「驚いたのは、コウさんに対する治癒魔法の魔力消費量の所以です」

「消費量?」

「聖属性魔法による治癒も、五千程で死にかけたものも回復します。しかしコウさんの場合かすり傷の治療にもコストは一万越えのようです。なのでこの子竜が簡単に治す事は稀有な能力かと」


 いや、アレクはかすり傷どころか膝が抉れたような傷もペロリで治すよね。それってカウズも驚くようなスゴイ事なんだ。


「さすが人間担当の守護竜、アレクはスゴイ、エライ」


 私は黒猫を抱き上げて、その顔を覗く。アレクは日本でしていたように、私の口をペロッと舐めた。




◇◇


 採血後も貧血にならなかったので、シェレン姫を手伝って昼食の準備をした。

 姫が西に来る前には、カウズの家には助手や家の事をする仕えの人が数名いたらしい。その人たちは姫が追い出したと言う。


「だって、みなさんカウズ様のいいなりなんです」

「……それ、何か問題あるの? カウズって西の国の王さまだし、この世界で一番偉い人だから仕方がないんじゃない?」

「おおありですよ!」


 姫はドン! と、木のボウルを台に置く。


「カウズ様はですね、何も言わないと全く寝ないで魔方陣書いてるし、何も食べないんです! 信じられますか? 魔力切れるまで塔でずーっと仕事しているんです、不健康ですよね?」

「……それは、そうだね。不老不死だけどねぇ、寝ないのはさすがに」


 ……アマミクは赤ちゃん並によく寝るのに。極端だな。


 アマミクの事は思い浮かべただけだったが、匂いにつられてかキッチンにやって来た。

 私は「皆でお祈りをするまでは食べないこと」と、よく言い聞かせて大皿に乗ったサンドイッチを渡す。


「もっとお肉入れて、むしろ肉だけでいい」

「分かった、アマミク用のを作るから、そのお皿は手付かずで机に置いてね」


 私が手で押したくらいでアマミクはびくともしないので、肩をアマミクの背中にグイグイと押し付けて、リビングに誘導する。振り返るとシェレン姫が目を丸くして停止していた。


「……三の姫に命令される方を初めて見ました」

「えっ、確かにアマミクは野生動物っぽいけど、ちゃんとお手伝いしてくれるよ? お肉があれば」


 ……あれ? 餌が無いと無理かな? やはり猛獣っぽいな。


「アマミクとはここ半年くらいずっといっしょだったから、お話しやすいの。お肉で釣っているわけじゃないよ」

「仲がよろしいのですね、ほほえましいです」

「お互いにね、そして王様たちの健康管理頑張ろう」

「ウフフ、そうですわね」


 姫はカウズを、私はアマミクを相手に、私と姫は似た立場であることに親近感を持った。



 肉多めサンドイッチと、鶏肉の蒸し焼きを持って食卓に戻る。

 部屋ではつまみ食いをしようとするアマミクを、アマツチが止めていた。アマツチナイス。


 私が皿を並べ終えると、背後からミクが現れて、ヒョイっと持ち上げられる。そのままテーブルの誕生日席に座らされた。

 私は隣に座るアマミクのお皿に、アマミク用のサンドイッチと蒸し鶏を盛る。ミクはそれを食べながら私に尋ねた。


「ねえ、コウ。あんたはこれからどうするの? 訪ね人を追いかけてファリナに行くの? それともアスラに行くの? その辺きちんと報告して頂戴!」

「あっ、説明してなかったね! 探していた人にファリナに行くのはダメって言われたから、火竜を頼ってアスラに行こうと思うの、でもアスラ行きはミクさんがついてきてくれたらの話だよ」

「コウがアスラに行くというなら一緒に行ってもいいわ。ご飯作ってくれるし」

「……腹の事情なのか?」


 脇で聞いていたアマツチがポツリと呟く。これからアスラに行くなら、生活用品や調味料が欲しいところだ。私はメモ帳にミクのお世話計画を書いた。


 あれがいるこれがいると、アスラで必要なものを三人で書き出していると、キッチンからお茶のポットを手に、カウズと姫が入ってくる。

 全員揃ったところで、カウズの先導によりサーへの祈りを捧げた。食前のお祈りが済むと、食事が始まる。

 天井をフワフワと浮いている水竜に、カウズは話し掛けた。


「コウさんと三の姫がアスラに行かれるのはよいですが、なら水竜は私がファリナに連れて行きますか?」

『……ヤダ! 俺もアスラに行く!』


 水竜はツン! とそっぽを向いて、私の頭の上に乗る。


「セレムはファリナの守護竜なんだから、いい加減自分の国に帰りなよ……」

『まだファリナにメグミクいないからな、アスラとセダンにいないか見てから帰る!』


 ……セレムさん、アスラだけでなくセダンにも行く気なんだね。


 私は頭を傾けて水竜を手のひらに落とす。水竜は投げられまいと私の腕に巻き付いた。


「守護竜って自分の国にいなくてもいいのですか? セレムがいなくて、ファリナが荒れたりしない?」


 カウズに聞くと、カウズは眉を寄せて唸った。やはりよろしくない事態のようだ。


「守護竜は国の運用には必須の存在です。守護竜の浄化は魂だけでなく、大地も含みますから。しかし、No.7がファリナにいるなら明日滅亡することは無いでしょう」

「滅亡って……セレムはすぐに帰ったほうがいいのでは?」

『今の王とは契約しないので、帰る意味無いもーん』

「……どーゆー意味?」


 契約と帰還の関連性が分からなくてカウズを見る。カウズは理解しているようで、頷きながら説明をしてくれた。


「守護竜は王と契約をしないと浄化が行えません。No.7はファリナ王と契約をされたようですし、水竜が王を選ばないのならば、直ちに帰る必要性は無いかもしれません」

『ほーらなー! 四国漫遊するなら今のうちってことだ!』

「遊び目的なら、ファリナに叩き返すよ?」


 めっ、と険しい顔をしつつ、水竜の顔の脇に生えているヒレをつついていると、シェレン姫と目が合った。


「コウさんはファリナの方を探しておりますの? お名前は? なら私たちと共にファリナに行かれますか?」


 姫も自分の国の名前が出てきたので、話しに入って来た。


「一緒に行くかどうかは置いといて、彼はジーン・ゲイルと名乗っていました。本当の名前はハザマシンです。ハザマがファミリーネーム。たぶん十五才」

「えっ、ジーン様って、異世界の方でしたの? 父様は聖地から連れて来られましたが」

「何ですか? どーいった地位の方なのです?」


 姫の反応に、カウズは少しだけ頬をひくつかせた。姫はカウズの心配に気がつかず、笑顔でジーンの説明をする。


「お父様の側近の方ですわ、いつも大抵お父様と一緒におられます。わたくしよりかは一回りくらい年上の無口な青年です」

「へぇ」


 ニコニコと話す姫と反対で、カウズは不機嫌そうだった。これは焼きもちだね。

 アマツチが私を見て言う。


「その黒い男、五才だって地竜が言ってたよ? コウは十五才っていうし、姫は俺たちよりも一回り上という。これ、どーゆーこと?」

「あー、それねー、たぶん、入れ物を起動した年数だと思う……アマツチだって千才じゃないでしょ? 再生後の年数で数えるよね? だから、ジーンさんはあの体に入って五年ってことだと思うよ」


 私は膝の黒猫を撫でる。猫は軽くしっぽを振った。


「入れ物? ジーン様は人形なのですか?」


 姫の疑問に私はうーんとうなった。


「守護竜……」


 その返答に驚いたのはカウズだった。


「……えっ? ナンバーは?」

「ななです。No.7」

「裁定者……彼は異世界人でしたか……」


 カウズはそう呟いて、悩ましげに目を伏せた。二の王と信は顔見知りなのかな?


「なにそれ? 初耳」


 ミクがカウズの頬を指でつついた。カウズは嫌がってミクから椅子を離す。

 

「聖地にずっと放置してあった守護竜ですよ。男神の入れ物らしいですが、起動されたのは初めての事です」

「男神の入れ物?」


 首を傾げたミクの言葉に被さるように、姫が話した。


「まあっ! ではジーン様はサーラジーンなのですか? だからお名前がジーンなのですね」


 驚くシェン姫に、私はナイナイと手を横に振る。


「それは、本名がシンだからだと思う。中身は私と同じ、普通の人間です。サーラジーンとは別人なのは断言できます」


 私がキッパリと言うと、ミクが私にしなだれかかる。


「カウズさえも会ったことのない神を、コウは知り合いみたいに言うわねぇ」

「それは、サーラジーンとはお話したことあるからです……」

「「エエッ?」」


 一同が一斉に私を見た。私は視線に驚いてカウズに聞く。


「えっ? カウズはサーと話せないの? 守護竜は皆話せるよね?」


 私が猫に聞くと、猫はニャアと鳴いた。猫の返事は無視して、カウズは私に聞く。


「今、サーと話すことはできますか? タイミングが合えば私も聞き取れるかもしれません」

「それが……」


 私は申し訳ないと頭を下げる。


「サーはおじいちゃんみたいなの。ずっと寝ていて、滅多に起きないんだって聞いた。最後に話したのは、私をここに連れてきた時なの。それ以降は一度もお話していないわ」


 それには、黒竜が補足した。


『サーラジーンは寝ている。このところ起きた形跡はない』

「……成る程ね。それゆえに、交代が必要になったとも言えますね」


 ……神様の交代? そんなことを出来る人がいるの?


 私はカウズの言葉を不思議に思った。


「話がそれましたね、コウさんの今後の行動に話を戻しましょう」


 ずっとメモを取っていたカウズが、机に散らばった紙片を集めて、話を元に戻した。


「私の行き先ですね。本当はファリナに行きたいですが、危険だから来るなと言われました。それならばと、火竜の巣に来いとフィローに言われています」

「……危険? ファリナ城が?」


 首を傾げる姫に、カウズが捕捉する。


「多分、姫と同じ理由だと思いますよ」

「私? では、コウさんが四の王をお生みになると?」

「……うわ、そんな理由で家を出たのか」


 それを聞いたアマツチは、苦いものを食べたように顔を歪ませた。アマツチがポソリと言う。


「成る程ね……。たとえまだ子どもでも、メグミクの母体が欲しいんだ。 ファリナはもう、子どもを生ませるのは諦めて、メグの結晶を集めた方が手っ取り早いんじゃねーの?」


 カウズはうーんと唸った。


「昨日の塔の装置を、ファリナの国の中で使えば可能かもしれません。但し、結晶を取られた国民の安否は保証できませんが」

「それは、ダメでしょ!」


 魔力持ちの塔の研究者がバタバタと倒れた装置を、ファリナ国民に向けて使うとか怖すぎる。

 思わず叫ぶような声を出したので、全員がまた私を見た。私は視線に怯えて小声で言う。


「皆元気でいてもらわないと、サーが悲しむからダメだよ?」

「貴方かそう言われるのなら、止めたほうがいいですね。ならやはり結晶の保有量の多いアーヴィン殿下に期待するのが順当ですね」


 兄の名前を聞いた姫は苦笑した。


「……お兄様に結婚相手が見つかるはずはありませんわ。優しさのやの字も持ち合わせておりませんからね」


 ……ファリナの兄妹は仲が悪いのか。


 私は聖地自治区で私を買った、横柄な態度の怖い王子様を思い出した。


「まあ、ファリナには来るなと言われたので、後はアスラしか無いのですが、アスラに行く前に、私はハザマシンの体を探したいです!」


 カウズはキューブに手を置いて「フム」と呟く。


「体の情報を……」

「ハザマシンは十五才男、黒髪、黒目、眉毛が太く、アゴは細い女の子みたいな顔をしています。体格は中肉中背、太っても痩せてもいません。行方不明になったときは、植物を編んだ白い半袖のシャツに、紺の羊の毛で出来たズボンをはいていました」


 私は一気に説明して、ぜーはー、と息を整えた。カウズはキューブから手を離す。


「この世界ではもう子どもはおりませんが、外から来ているとなると可能性かあるかもしれませんね。まあ、西にはおりません。それは確定」


 カウズの言葉に、アマツチも頷く。


「東も人が住むエリアに子どもはいないよ。魔物の出る洞窟や、魔女の森は確認していないが」

「北と自治区も無いと、ジーンさん本人が言っていたの。もうアスラしか残って無いのね……」


 カウズはコホンと咳をした。


「コウさん単身でアスラに行くのはやめてもらいたい」

「行くのは火竜の巣だけど、どうして?」


 カウズはキューブに手を乗せて言う。


「南は魔物の国と化しています。邪神が巣を作っているとの噂も聞きました。おそらく、火竜はそれを庇護していると思われます、そんな国に女神を置くわけにはなりません」


 ……女神?


「……私は、人間なので、ふつーに、名前が」


 女神と呼ばれた事に私がうろたえていると、ミクがバン! と私の背中を叩いた。


「ギャア!」

 

 猫が私の膝から床に落ちた。水竜も机の上で痙攣している。私も机に伏せて、背中の痛みにうめいた。


「コウ一人なら余裕で守れるわよ!」


 得意気に胸をそらすアマミクを、カウズがギロッと睨み付けた。


「……その子どもへのダメージは、守護竜に伝わると、何度言えば分かるのか」

「あは、そーだっけ。でも、背中に手を置いただけだけど?」

「魔物の基準ならそうだろうよ……」


 二の王はチッと舌打ちをした。

 

「三の姫と二人でアスラに行くのは止めて頂きたい。うっかり怪力で殺されかねない。かといって、一の王は三の姫対策には使えないので、隔離設備のあるセダンかファリナの滞在が望ましいです」


 ……アスラ行きは止めた方がいいのか。


 私は体を探しにアスラに行こうと思っていたので、止められて拍子抜けする。セダンかファリナならセシルのいたファリナに行きたいけど、来るなと言われたのに行ったら信が怖いよ?


 私は迷惑そうな黒衣のジーンの顔を思い出して、ため息をついた。


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