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消えた幼馴染みを探しに異世界転移します  作者: dome
七章(西の塔・再)
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7-4、対決


 突如正体を現したレアナは、部屋を紫の煙で満たした。

 この世界の生きるものを眠りにつかせる紫の煙は、部屋にいた人を襲い、次々と倒れていった。


 私は紫の煙を避けつつ、呻く人の間を抜け、セレムと一緒に部屋の外に這い出た。レアナもゆっくりとした足取りで、瘴気がうずまく部屋から出てくる。


「……なんで? あの紫色のやつはサーの結晶に反応して眠らせるんじゃないの? なんでレアナには効かないの?」


 私は必死に階段目指して走った。レアナは私の後ろをゆっくりと歩いてくる。


「聞いて、コウちゃん大変だったの……。ここの人たち、あんまり結晶もってなくて、私頑張って、結晶を増幅させる薬を作ったのよ。みんな、ヨロコンデ飲んでくれたわ。だからほら、これだけの量の結晶がとれた」


 ……飲んでくれた? それってもしかして姫がいれていたコーヒーのこと?

 

 私は走りながらどうしようか考えていた。

 今、レアナの手には紫色の結晶がある。あれは魔女の森からじゃなくて、ここの人たちから取った結晶みたい、あれは絶対に取り戻さないといけない!


 私は一段飛ばしで階段を下りる。少し走るだけで、運動不足気味の心臓が苦しいと根をあげた。


「……ねえ、あんまり怪我しないでぇ……私痛いの、キライなの……」


 私が必死で逃げていたら、胸元から声が聞こえた。


『わかるぅー』


 ……なんでこのこ、寝てないんだろう。


「セレムは、竜じゃ、なかったのか……」

『正真正銘、世界さいきょうの竜だし!』


 セレムは私の頭によじ登り後ろを見ている。私は筒状の塔の階段を下りながら、後を追いかけてくるレアナを見た。

 レアナはアリスみたいに金色の髪を三つ編みにして、頭の後ろでぐるりと巻いている。服は白衣で、胸元が大きく開いて、胸の谷間が見えていた。

 そんな、服と髪型は研究所にいたアリスそっくりなのに、顔はエレンママそっくりだった。

 

「ああもう、なんでママに似ているの? レアナは、ママを殺した張本人なのに!」


 私は塔の内側の階段を下りていく。どこまでも続く螺旋階段の途中、私は足を止めてレアナに向き直った。


「貴方の目的は何? 私に用事? それ以上来ると、私ここから飛び下りるよ?」


 レアナは突然足を止めた。そして首をかしげてふんわり微笑む。


「あら、なんでだったカシラ……?」


 その優しい笑顔はやはりエレンママに似ていた。

 

「邪魔されたから実験トチュウで出てきちゃった。最後まであつめなきゃ……」


 レアナは鼻歌を歌いながら、踊るような足取りで研究室に戻っていく。その歌はエレンママがよく歌っていたミュージカル映画の歌だった。


『おお、逃げていく。助かったな』


 セレムが呑気な口調で言う。


「ダメだよ! 部屋には三人の王と姫と風竜がいるのに! みんなの結晶がレアナにとられちゃう!」

『オイヤメロ、肺が苦しい、痛いのもヤダけど苦しいのもイヤだ、上るのムリ! もうヤメテ!』


 泣きわめくセレムを無視して、私は階段を上った。途中セレムが私のうなじあたりの服に噛みついて、上へ上へと運んでくれる。塔の周りを階段で上がるよりも、上に直線で移動出来るのですぐに最上階についた。

 私は廊下に下ろしてもらい、一心不乱に走る。


 ……レアナの目的は何?

 どうしてサーの結晶を集めているの?

 どうしてママそっくりなの?

 信をこの世界に連れてきて、一体どうするつもりだったの?

 信の体は、今どこにあるの?


 何も分からないまま私はレアナを追いかけた。

 レアナが研究室のドアを開けたとき、入口がキラリと光り、レアナの右手が消え去った。


「……アラ?」


 レアナは自分の手が消えた事を首をかしげて見ていた。切断面から血が吹き出たので、レアナは左手で切断面に触れると、手か青く光り、血はピタリと止まった。次にレアナは右腕の再生魔法をかけるが、発動しなかった。


「……?」


 困惑するレアナが部屋の中を見て、驚いて後ずさる。部屋のなかから出てきたのは、アマツチだった。


「セレムさん……王じゃなかったひと、もう一人いたようだよ……」


 私はようやくレアナに追い付いて、膝に手を置いて肩で息をした。

  塔の最上階では部屋の入口にアマツチがいる。廊下にいるレアナを挟んで、階段側には私とセレムが立っていた。二人と竜の二匹はお互いの動きを警戒して、その場で凍りついたように動けなかった。


「コウさん、この方、誰?」

「竜だよ、白竜、植物担当の守護竜だよ!」


 私がいうとアマツチは苦笑した。


「植物って、もしかしてアナタ、西の転移扉出口に素敵な創作物配置されたりしました?」

「アラ、御名答……一生懸命育てたのに、赤毛の王に焼き払われてしまったわ。かわいそうな、私のコ達……」


 レアナは頬を染めて、はぁ……と、悩ましげに息を吐いた。腕から流れた血が白い霧になってレアナに吸い込まれていく。


 ……レアナはおおげさにため息をついたり、悲しげな表情を見せるのは何故なのだろう。日本で見た幽霊みたいな白竜とはまるで別人だ。まるで、人間……いや、ママがそこにいるみたいだ。


 レアナはウフフと笑って、髪をくくっていた紐をといた。長い金色の髪の毛がさらりと揺れる。その色を見て、セレムが呟いた。


『おい、コウよ、白竜って白くないのか?』

「前見たときは白かったんだけどね……異世界で私のママを食べたから、ああなったのかもしれない」

『守護竜が、人を食った?』

「そう、合ってる」


 レアナがママに似ているのは、ママを食べたせいだろう。同様にレアナは聡明な菊子さんの人格も保持しているのかもしれない。


 唖然とするセレムを放置して、レアナは一の王に話しかける。


「おかしいわ? 貴方は寝てくれると思ってタンだけど。結晶量少ないのカシラ? 一の王のくせに」

「ねー、俺も不思議なんですよ? でも、その手に持っていた青い液体のほうが、なんなのか知りたいんですけど」

「……やぁね、教えないわよ。私、ウソつけないの……聞かないでぇ?」


 レアナはフフフと妖艶に微笑む。

 アマツチは手のひらの上に光る玉を出した。光の玉は耳鳴りのような高い音を出して、じわじわと大きくなる。


 アマツチはレアナに向かって光球を投げつけた。

 レアナは察知して横に避けるが、光はレアナの動きに添って曲がり、レアナの腹に触れた。

 女の腹部をかすめた光はまたアマツチの手に戻る。光が触れた部分が抉りとられ、そここらおびただしい血が流れた。

 白衣が血で赤く染まっていく。それを見たアマツチ呆然としてうめいた。


「セレムさん、俺、胸が痛い……。この竜、外見はキレイな女性なのに、俺、何やってんだろう……」

『あいつには性別は無い、しかしアレの結晶を消されるのも困るなぁ……加減しろ阿呆』


 セレムは視線をレアナに固定したまま、ブツブツと呟く。レアナは壁に持たれかかり、穴の開いた腹に手を当てて、哀しそうな顔をした。


「……痛いわ、痛いわ、一の王。私、そこを通りたいだけなのに……ヒドイ……」


 変化する力が無くなったのか、白竜の変化が解けて、金髪の巻き毛が白いストレートに戻っていく。着ている服は変わらないが、目の色が白くなり、顔から表情が消えた。


「あ、やっぱ撤回。コノヒト存在がホラーだわ、怖い……」


 アマツチは再び光球を構えた。一触即発の気配を感じて、私がどうしたものかと伺ってると、セレムが言った。


『あれ、混じってるぞ』

「なに?」

『白竜だけかと思ったら、黒竜もいる……』

「……えっ? どこに?」


 私は必死でレアナの黒い箇所を探した。


『左腕の内側だ、服の切れ目から見える』

「日本で混ざったままなのかな? どうやったら分離できるの?」

『意識はあるからな……糧さえあれば、自力で分離出来ると思うのだが……』

「どれくらいいるの?」

『俺の頭の大きさくらいかな?』

「うわぁ、結構いるのね……」

『まてよ、ステイ、三百数えてからな? 約束だぞ!』

「いち……に……」

『ヒィィ!』


 糧という名の私の血、しかも結構多い。これは唇を噛むんじゃ足りない、さて、どうしよう?


 ……カッターはリュックの中だし、ここで武器を持ってる人はいないし。


 私が何で切るかを悩んでいる間に、セレムは全速力で私から逃げ、風竜のいる塔に飛んでいく。私は窓辺に下がり数えながら、セレムの姿を目で追った。


 ……いつも恐い目に合わせてゴメン、セレム、ジルヴァを守って。


 アマツチが再び光球を投げた。今度は完全に避けられて、球はレアナの背後に行き、壁を綺麗に丸く切りぬく。

 その、壁にぽっかりと空いた穴に私は標的を定めた。

 私はアマツチの横を走り、壁の穴に手をいれて、鋭角に抉れた角にひっかけ、勢いよく引いた。


「……コウちゃん?」

「……ヒッ」


 アマツチとレアナが息を飲んだ。私の手首に鋭い傷が走り、断面から勢いよく血が吹き出た。私はその手をレアナに向かって伸ばした。


「キャアアァ!」


 鋭い悲鳴をあげてレアナが逃げ惑う。レアナはアマツチを押し退けて、研究室の扉を開けた。


「それ、捕まえて!」


 私は出てきた人に向かって叫んだ。中から出てきた赤い人は、眠そうな目で、入ってきたものの左腕をつかむ。レアナは身をよじるが、ミクの怪力には勝てないようで、必死に抵抗していた。

 ミクがつかんでくれているので、レアナの脇に隙が出来た。私は濡れた手でレアナの左腕にしがみつく。


「アレクセイ・レーン、出てきて!」

「ギャアアアァ!」


 塔にレアナの悲鳴が響く。

 私が触れた所が炎で焼かれたように痺れ、中から黒煙が吹き出した。

 レアナは体の半分を失い、ヒトの形を保てなくなり、床に崩れだらりと広がった。

 その赤い染みは端から白い霧に変わり、一点に収束していく。その点は鳥になり、窓を割って空に飛んで行った。


 私はそれを見届けると、貧血で意識を失い、床に崩れた。


 アマツチとアマミクが呆然と白竜が飛んでいった空を見ている。その足元で、黒猫が幸に寄り添い、手の傷を舐めていた。

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