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4-8、(番外編)とある王の討伐依頼・下


 アマミクは外に出ると伸びをして両手を天に掲げた。

 戦闘前の精神集中。

 周囲にある建物や命を範囲探知でだいたい把握する。燃えそうなもの、生存者、駆除すべきもの。今理解しないといけない情報を頭にいれて、一度全て忘れる。


 ……頭で忘れても、体が覚えていれはいい。戦地では直感が全てだ。余計な情報はいらない。


 両手を空に伸ばすと、右手を曲げ首の後ろに触れる。うなじから熱が吹き出し、赤髪が燃えるように輝いた。

 私は背中から大きな燃える剣を引き抜いた。

 

 目線は羽犬に縫い付けたまま、剣をスッと空に放る。剣は空にいる鳥に当たり、炎に包まれ鳥が一匹広場に落ちてきた。鳥は黒く焦げて炭化している。それを見た他の鳥は焦って、周囲の屋根の上に下りた。

 

 投げた剣が刃を向けて落ちてくるが、私はそれをどう扱えばいいのかを知っていた。

 この剣は私の魔力の塊で、自由自在に操れる。

 私はそれを見ずに受け取った。大剣の重みを逃すように、宙でくるりと回転させ、地面に向けて斜めに構えた。

 

「……グルルル」


 私より大きな羽犬は状態を低くし、唸って威嚇する。そして前足を上げて、天高く雄叫びを上げた。その声は振動を伴い、広場にある水場の水面が波立ち、家の壁が震えた。


「……うっさい」


 魔物の雄叫びで聴覚が一瞬麻痺したが、瞬時に回復した。さっき教会で小鬼に刺された足の傷も既に消えている。


 ……なんだろう、すごく体の調子がいい、いまなら神だって殺せる気がする。


 間合いを計り、地面を踏んで一気に加速した。勢いをつけて水平に剣を振る。魔物は大きく後方に飛んで、剣は空振りした。

 私は今度は上に振りかぶってみるが、魔物は少し横にずれるだけで華麗に避けた。

 魔物の足元でパチパチと火花が見える。


「あっ、マズイ……」


 見ていたアマツチが呟いた瞬間、魔物の足元が爆発して、魔物を中心に広場に火柱が上がった。

 アマツチは立ちあがり、小鬼を胸に抱いて呆然としていた。火が収まり風が煙を流すと、爆発の中心にいた魔物もミクも平然と戦っている。

 

「ゴメンねー、わたし、焦げないの!」


 煙が流れて視界が戻ると、私は素早く魔物の後ろ足を一本切り落とした。


「あ、浅かった。胴体ごといけたと思ったのに」


 本来私の大剣に触れたものは焼け焦げる。しかしその魔物も火属性らしく焼けていなかった。魔物によっては手足をもがれても再生する。私は剣に犬の足をひっかけ、アマツチに向かって放り投げた。


 魔物の足は綺麗な弧を描いて飛んでいき、アマツチの座っていた場所に落ちた。魔物の足は教会の屋根を破壊し、石畳に転がった。

 慌てて教会の入り口の上に飛び乗ったアマツチは、ため息をついて胸の小鬼を撫でる。


「小鬼かかえてんのに、あいつ俺を殺す気か!」

「ゴブゴブ!」


 小鬼も同意する。

 距離的にふたりの声は聞こえないが、怒っているようで、私はアハハと笑った。



 後ろ足を切られた羽犬は飛びあがり、血を流しながら円を描いて空を飛んだ。

 

 ……今度はぶったぎる!


 急降下をしてくる魔物を避けて、頭を狙い素早く剣を振り下ろす。その隙を待っていた魔物は私に向かって激しい炎を吐いた。

 火そのものには問題ないが、羽と火炎の風圧であおられて剣がずれた。私の攻撃は石畳を削っただけに終わった。


 魔物はすぐに安全圏である空に戻る。悔し紛れに石を投げてみるが、かすりもしなかった。

 

「飛んでる敵は苦手かもしれない……」


 魔物が飛んでいる姿を見るが、下りてくる気配はない。私はひとまず大剣を背中にしまい、アマツチのいる教会まで後退した。

 教会入り口の屋根の上にいるアマツチの隣に行くと、小鬼を取り上げて胸に抱いた。


「あまっちー、攻撃あたんないよ……」


 小さいのにあまり柔らかくない小鬼を抱いて気をまぎらわす。


「……うわ、あの魔物、足を失った腹いせに村を燃やしてる」


 アマツチの声を聞いて私は顔をあげた。

 村を見ると、空飛ぶ羽犬は炎の玉を吐いて、被害を拡大していた。私は火をつけるだけで消せないのに、燃える家が増えていく。

 どうしたものかと途方に暮れていると、胸に抱く小鬼がゴブと鳴いた。


『……アイツラ、水、弱い』

『可愛い! 教えてくれるの? でもゴメン、私たち、水は使えないの!』


 教えてくれてありがとうと、小鬼を抱いた。


「姫が抱くと骨が折れるだろ、離してやれ」


 小鬼の言葉がわからないアマツチが、冷たい目で私を見た。


「最近ふんわり扱う修行をしているの、魔物よりも弱いコウは潰れて無いでしょ? 私だって学ぶこともある!」


 ふん! と、横を向く私を無視して、アマツチは隣の屋根に止まっている鳥頭を一匹光の矢で仕留めた。アマツチは空を飛ぶ魔物をにらんで息を吐く。

 

「あと鳥が四匹、犬が一匹、そして火事な……」

「地面に下りていてくれたら焼き滅ぼすのに」

「犬は炎に耐性があるみたいだな」

「なら八つ裂きにする!」


 ……近くにさえ来てくれたらなあ。


 ふたりは途方にくれて空を見上げた。



 空を見上げていたら、座っていた屋根が微かに揺れた。

 その瞬間、アマツチは屋根から飛び下り、地面に伏せて目を閉じた。


「……どうしたの? いきなり」

「地竜が巣から出てきた! これで地の魔法が使える!」


 ……地の魔法って飛んでるのに意味ないわよね、今必要なのは水よ、水。


 そんな事を思いつつ、私もアマツチの隣に座る。

 地竜との縁は無いので、地竜の念話は聞こえない。なので、停止しているアマツチを守るように周囲を伺う。


「爺さん、三の姫と一緒に、南西の村に魔物退治に来たけど、魔物が飛んでいて攻撃出来ない。爺さん、魔物を地面に押さえつけて」


『正確な情報と座標を送れ。下手すると建物も押し潰す』


 アマツチは広場の端から端までぐるっと一回り走った。ついでに燃えている建物も巻き込むように座標を送る。


『範囲が広いな、三百待て、準備が出来たら合図する』

「ありがと、爺さん! 愛してる!」


 ブツブツと数を数えつつ、広場を走っているアマツチに鳥が寄っていく。私は剣を投げ鳥を落とした。


「……あっ、しまった」


 鳥が落下する方向にアマツチがいる。多分ぶつかる。

 地竜との会話中、目を閉じて動いていたアマツチは、悪寒を感じて一歩横に飛び退いた。

 するとアマツチの座っていた場所に黒こげの鳥が落下し、プスプスとくすぶっていた。

 

「お前は何で俺を潰そうとする?」

『ゴブゴブ』


 私は笑って小鬼の言葉で話す。多分通じないだろうから、からかうように投げキッスを送っておいた。女に弱いアイツならこれで帳消しになるだろう。

 アマツチは地竜との交渉が終わったようで、私のいる場所に走ってくる。


「今から魔物を中央に集めて、地竜が魔法で地面に押し付ける。対抗する魔法をかけるからじっとしてろ」


 アマツチは右手を赤く光らせて、私の顔の前に出した。私はその手をパシッとはねのける。


「いらない、私、魔防数値高いの。あんたの魔法くらいじゃ動きに支障はでない」

「……守護竜より強いんですか?」

「もちろん」


 私がエヘンと胸を張ると、アマツチはハァとため息をついた。


「だから魔女の森で光の雨を受けても平気だったのか……」

「私を倒したければ魔法じゃなく拳で来なさい」


 私は自分の髪の毛を引き抜いて、尖った棒に変え、隣の屋根にいる鳥を貫いた。犬と違って鳥は燃えて、屋根に炎が移る。


「あ、やば……」


 私は小鬼を小脇に抱えてタタッと屋根を走り、隣の屋根から鳥を蹴り落とす。後は手で叩いて屋根の火を消していた。

 私は民家に寄って、窓から小鬼を投げ入れた。


『そこの地下に小さいのいるから、一緒に待ってて!』

『分かった』


 小鬼は民家の奥に消えた。


 私は広場に戻りまた大剣を出した。

 広場の隅にいるアマツチはすっと手を上げた。アマツチは広げた指を一本ずつ折っていく。ゼロになったら地の魔法が来るのだと私は理解した。

 私は鳥の死骸をつかむ。


『下りてこい、弱虫! こうなりたくないから逃げ回っている羽虫! 害虫!』


 羽犬は空から私に向けて火球を繰り出す。私は笑いながらそれをかわすので、鳥は焦って私を追いかけた。私は鳥を引き付けつつ、広場中央に向けて渦を描くように走った。


『アスラの王は私だ。邪神などいない! お前らの目的ははなから果たせないものだ! アスラを望むなら、私に服従しろ! さすれば道を与えん!』


 鳥は私を選ばなかった。

 私の言葉を聞いて、鳥が私に突撃しようと降下した。


「行くぞ! アマミク、耐えろよ!」


 アマツチは地竜から借りた力を地面に押し付けた。


「アマツチの名に於いて告げる。範囲にいる全ては大地にひれ伏せよ!」


 広場の中心がグラリと揺れて、大きな赤い魔方陣が地面に描かれた。その上に乗るもの全てを地面に引き寄せ、中央に向かって押し潰した。

 魔物はもちろん、広場にある水場のモニュメントが崩れ、範囲内にあった燃えている家屋も地面に潰された。それらは中心に向かって地面に飲み込まれていく。


「どっせぇい!」


 およそ威厳もへったくれも無い掛け声をあげて、過重力範囲内で唯一立っている私が、地面でつぶれている魔物に剣を突き立て止めを刺した。

 私は残っていた鳥を三匹消し炭にすると、広場中央で伏せて痙攣している犬に向かって悠然と歩いた。


『犬はその姿だけで美しいのに、羽をつけたのは失敗だったわね……』


 私は大剣を掲げ、羽犬の脳天に突き刺した。それでも羽犬は死ななかった。


「……アスラで産まれたものは、アスラに還りなさい」


 私は髪を赤く燃やして剣に力を送る。剣を中心に赤く燃え上がり、地面はボコボコと泡を立てて石が溶けた。剣に頭を貫かれていた犬は、溶石と共に地面に飲み込まれた。

 私は剣を引き抜くと、溶けていない地面に向けてジャンプした。



 私が空を見ると、小鳥が鳴いて飛んでいた。燃えるように輝いていた髪の毛が、光を失い背中に垂れる。

 教会や焼け残った家屋から、多くの村人がその姿を見て呆然としていた。


 私は視線に気がついて、照れて笑う。まだ地面に残った家屋の残骸は燃えていたが、既に周りには延焼するものがなく、途切れた水場の配管から水も流れているので、火もじきに消えるだろう。


 私は再び髪を赤く燃やして、大きな剣を振り回し、その場で舞った。


 ……火竜、この魔物はアスラのもののようよ。この銀の水を受け取って。


 舞いながら空に祈ると、『承知した、送れ』と、火竜から返事が返ってきた。


 私は魔物の魂を故郷に送るため、祈りを込めた舞を舞った。羽犬の魂は複合生命体だったようで、かなり大きな銀の水が遺骸から染み出した。私はそれを空に送る。


 広場の黒煙がおさまる頃には、私の祈りの舞いも終わり、アスラの女王は観衆に向かってうやうやしく礼をした。

 女王の舞に見とれていた村人が我に返り、拍手と歓声が沸き上がった。


 私は照れて、そそくさとアマツチのいるところに向かう。アマツチも笑って手を叩いていた。


「つっちー、私まだ魔物の分しか祈ってないの。村人もやっとく?」


 アマツチはアハハと笑う。


「人の葬儀はこっちでやるよ。遺族も銀の水が残っているうちにお別れしたいだろうし」

「そう……」


 ふたりは破壊され尽くされた広場を見た。


「……後片付けも大事だね」


 私は、タタッと走って振り返る。


「私壊すの専門だから! あとはよろしく」


 私はぶんぶんと手を振って、小鬼を押し込んだ家屋と教会に向かった。

 家屋の地下から小鬼を引っ張り出し、教会に向かう。

 私が教会に入ると、村人が驚いて道を開けた。私は村人に向けて手を軽く振って、真っ直ぐに祭壇までいく。


『移動だよ、出ておいで』


 歩ける小鬼は歩かせて、怪我をしている子は小脇に抱えた。小鬼は私に従い、ゾロゾロと後をついて来る。


「……ま、魔物をどうする気か? また山に返すのか?」

「私の国で貰うわ。この国に入れないように誓約をさせる、もう二度とここにはこられないから安心して」

「私の国とは?」

「アスラ。私はアスラの女王、三の姫アマミク。この子たちの面倒は暇な火竜にみさせる」

「そ、そうか……」


 老人は納得したようで、教会の扉を開けてくれた。私は民家に隠した小鬼も回収して、壊れた広場まで連れて行き、足がもつれてパタリ倒れた。


『……!』『死んだ?』『女王さま?』


 周りの小鬼が慌ててギャーギャー騒ぐ。うつぶせに倒れたが、ゴロリと回転して仰向けになり、へこんだ腹を押さえた。


「グウウウ」


 私の腹が盛大に鳴った。

 昼から何も口にせず、戦っていたのだから当然だ。

 無礼にもアマツチが吹き出して、村人と一緒にワハハと笑った。

 空は晴れて澄み渡り、小鳥がピイピイと鳴いていた。



◇◇


 しばらく経つとセダンから軍が到着した。

 もう魔物は倒したので、アマツチは家屋の修繕と怪我人の治療を任せた。

 城の翼竜をアマミクに貸すと、アマミクは篭に小鬼を詰めて竜に縛り付けていた。それだけでなく、村人はお礼にと、干し肉やパンや果物をくれたので、アマミクはそれも竜に縛り付けた。


「姫は食わないの? 腹を空かせていただろ?」

「アスラでは食べ物は貴重だから、私が食べたらこの子たちが困る」


 ……小鬼には慈悲深い。


 俺は苦笑して、ミクのポニーテールを手で払って揺らした。ミクはイラついたのか、髪を赤く燃やしたので、俺は慌てて手を引いた。


「魔物を倒してくれてありがとう。姫がいなかったら村が壊滅していた」

「ホントね、私一人にやらせて」

「一人のほうが動きやすいだろ?」


 俺の顔を見て、アマミクは仕方がないな、と笑った。


「アンタのほうが強いらしいよ? 前に火竜に言われたことがあるもの。アマツチと黒竜とは戦うなって」

「初耳ですよ、女王様」


 クスクス笑うふたりに、村の女性たちが篭を差し出した。


「よかったらどうぞ」


 篭をあけると、焼いた羊肉を串にさしたものと、平たいパンが入っていた。


「水も、酒もありますが、旅立たれるようなので水にしました」

「おさけ……」


 アマミクがあらかさまにションボリするので、女は笑って酒瓶もいれた。


「飲んで飛ぶと落ちるぞ」

「小鬼に操竜術を教えようかしら」

「帰りは一人だ、城の翼竜はちゃんと返せよ。戻って来た褒美に酒を樽で準備しておくから」

「ホント?」


 パアッと髪を光らせてアマミクは喜ぶ。食い物と酒、昔から姫はこれに弱い。


「三の姫がいないと、コウが寂しがるし」


 ミクはしばらくキョトンとし、ポンと手を叩いた。


「そんな子もいたわね。忘れていたわ」

「昨日怒られた事を忘れられる姫がスゲーよ……」


 ミクはアハハと笑ってごまかした。


「ピアスで開けた穴か治るまでには帰るから、アンタがあの子を見てやってね! 食べたら結晶に戻るまで焼き滅ぼすよ!」

「……ハイハイ、承りましたよ」


 ミクと俺、小鬼らは広場の片隅で固まって平たいパンを食べている。魔物と食料……と考えて、ふと思い出した。


「ねぇ、邪神って何? 姫が言ってたけど」

「あー、あれね。魔物が、食べ物を持っていくと邪神の配下になれると言っていたのよ。お里帰りついでにその辺見てくるわ」


 ……邪神? 魔王……というか、魔物を統治する魔王なら見たことがあるけれど、神がいるのか? アスラに?


「火竜の巣には行けないんじゃなかったのか? 紫の障気がどうとかって……」

「ああ、里って小鬼の村よ? 家も残ってるし、オアシスも近いの。畑も掘り返せば種イモくらいとれる。そこで小鬼は暮らせばいいと思うの」

「なるほど……」


 俺は笑って、ミクに寄りかかっている小鬼の子どもの頭を撫でた。


「邪神がいてもいなくても戻ってこいよ」

「うん、お酒くれるしね。じゃあアンタはコウの機嫌を取っといて、私のいいところを宣伝しておいてね」

「まった難しい事を……」


 俺は、昨日コウに怒られた事を思い出した。


「まあ、今日は仲良く戦いましたと、仲直りアピールしたら許してもらえるかもなぁ……」


 ミクは噛んでいた肉をゴクンと飲み込む。


「バッカみたい。喧嘩なんて、仲良くなきゃやんないのに」

「……はい?」


 仲良しと暴力の関連性が分からん。と顔を歪めると、アマミクに笑われた。


「私に敵対するものは燃やすわ。アンタは私に燃やされたことは無いでしょ?」

「……うわ、そこなんだ。実は姫と仲が良かった事を七百年越しに知ったわ」

「うん。殴っても死なないヤツ、アンタしかいないから、貴重よ」

「……死なないけどね、痛いよ?」

「うん、それが目的で殴るのだし」


 俺は絶句してアマミクを見た。アマミクは昔から変わらない外見で、燃える炎のようにふわふわの赤髪を風に揺らして笑っている。


 ……見ているだけなら、本当に綺麗な人なのだけど。


 アマミクの子どものように無邪気な笑顔につられて、俺も笑った。

 


 アマミクは食後すぐにアスラに旅立った。残された俺は村の後片付けを手伝っていた。

 広場中央に集まった建物の残骸や、魔物の死骸を荷押し車に乗せて、郊外に埋めていく。

 

 死骸や残骸があらかた片付いても、焼けただれて溶けた広場は、戦場のすさまじさを物語っていた。

 溶岩は今だ熱を持ち赤黒く煙を吐いている。それを見たセダン兵が恐る恐る呟いた。

 

「これ、三の姫がお一人でやったと聞きましたが、本当なのですか?」

「本当。お国柄、彼女は魔物慣れをしていたけどね。人類最強の人は、魔物においても最強だと証明しちゃったねぇ……」

「見てみたかったなぁー戦う姿。美しかっただろうなぁ」

「祈って踊るのはきれいだけどね。戦ってると魔物そのものだよ、魔神っぽくもあるけど」

「いいなぁー呼んでくれたら良かったのに」

「そしたらその石畳みたいに溶けてるよ」

「うわぁ……」


 兵士は熱で溶けて変形した石畳を見てぶるりと震える。


「城でお見かけした輩はその美しさに見惚れてましたが、その力がこれとはおっそろしいなぁ……」

「外見の美しさと反しての強さ、また、弱冠精神面の弱さを含めて三の姫は世界一の美姫、かぁ……サーはまた、とんでもないものを世に送り出したよ」

「えっ、何か言いました?」


 気にするなと手を振って、俺は城に向かって歩き出した。


 しばらくはミクさんのいない、平穏で退屈な日常に戻れるのに、それを寂しいと思う自分もいる。あの暴力性も、すぐ泣いてすぐに笑い、すぐに忘れるあっけらかんとした性格にも、昔からどうしようもなく惹かれているのだ。


 問題があるとしたら、彼女の後ろしか歩けない俺を、彼女は恋愛対象としては見ていない事だ。この悩みは昔から変わらず続いている気がした。


「……だから、間違えた」


 口に出して気がつく。俺は過去に何か間違いをしでかしたらしいと。おそらくそれが自決した理由なのだろう。でも、それが仕事だったのか人間関係なのかは全く思い出せなかった。

 

 城まで続く、青々と風に揺れる麦畑の農道を俺はひとり歩いて帰った。

 


私が中学生の頃、この話の主人公はアマツチでした

この番外編でも見せ場をアマミクに食われるんだから主人公をとられるのもしかたがない

(次回から本編?に戻ります)

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