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2-15、夏至祭

 

 学院の六月は行事が多い。スポーツ祭や聖人を祝う夏のお祭りで学院は賑わっていた。

 私はこっちの行事がさっぱり分からないので、ミレイにくっついて言われるままに準備をしていた。

 

「コウは夏至に行くんだよな? 祭は夏至より前だから参加出来るな」

「お祭りって何するの?」

「礼拝後にハイキングに行くだけかな? 小さい学年の子はダンスするみたい?」

「へー」


 ……そんな行事があるのね。日本なら春の遠足みたいな感じ?


 私は小学校の修学旅行も、キャンプも遠足も全て参加していなかったので、少し緊張した。



 時間は早足で過ぎ去り、夏至はもうすぐだ。

 私は自分がこの世界から消える日を思って、部屋の私物をあらかた片付けた。叔父が貸してくれた冬の衣類を叔父に送り返し、部屋には必要最低限の私物だけを置くようにした。

 私が枕カバーをつけかえていると、ミレイが私の背中に乗しかかってきた。

 

「ミレイ、重いよ……」

「だって見てたら寂しくなったんだもん。あー、コウはあったかい。来たときはガリガリに痩せてたのに太ったよなー。触り心地よくなった」


 そう言って、私に巻き付いてくるミレイを、私は背中に乗せてからベッドに転がした。太ったと言われた事が恥ずかしくて、私はボソッっとつぶやく。

 

「ミレイに付き合っておやつ食べてたから、そのせい……」


 ここに来たとき私は食べ物が食べられなかったが、欠食児童のように食べ物を欲しがるミレイに食べさせていたら、私も普通に飲食が出来るようになっていた。ミレイは本当にありがたい。ミレイがいないと生きていけなかった。


「同じもの食べてるのにコウはちっとも大きくならねーな……」

「ミレイ? どこを触っているのかな?」

「胸」


 私のベッドに寝転がっていたミレイが、ふざけて背中に乗ってくるので、私はミレイをベッドカバーでぐるぐるとまいた。

 私はそのまま片付け作業を再開するが、ミレイがす巻きのまま動かないので、心配になり、様子を見た。


「ミレイ? 息出来てる? 大丈夫?」


 私が聞くと、ミレイはカバーから顔だけ出した。いつも明るいミレイが、気持ちションボリしている。


「はじめはコウの面倒見るの面倒くさいと思っていたけど、いなくなると思ったら寂しいなぁ……」

「おやつ食べられなくなる?」

「それもあるけどさ、コウといるときは全く気を遣わなくて楽しかったんだ。これからまた女の園に一人いるのかと思ったら憂鬱しかないよ……」


 私はミレイのふわふわの巻き毛を撫でた。

 

「ミレイは楽しくていい子だから、他にもお友だちが出来るよ。おやつはアリスとジーンに言っておくね」

「……コーウー」

「私の面倒が終わったなら、転校ってのもありかもよ? 家から通える学校とかいいんじゃない? 叔父さんに聞いてみようか?」


 それを聞くとミレイは起き上がり、プルプルと首を横に振った。


「いや、学費免除で三食おやつ付きで、次の学校の推薦も貰えるここがいいです」

「だってママが心配でしょう?」

「ママはもうボーイフレンド見つけたから大丈夫だもん。それに、ボクがここにいないとコウが戻って来たときに寝るところ無いよ?」

「ミレイ……」


 私はベッドの上に座っているミレイに抱きついた。

 

「ありがとうミレイ、待っていてね。ちゃんと戻ってくるからね」

「うん、待ってるよ」


 そうして二人はしばらく抱き合ってめそめそ泣いていた。


 信と別れた時は寒々しかった木々も新しい芽つけ、雨が降る度に新緑から深い緑へと装いを変えていった。

 夏至はもうすぐ訪れる。



◇◇


 祭当日、生徒もシスター達もどこかわくわくしているようで、厳かな朝のミサまで笑顔で参加する人が多かった。


 私は何をしたらいいのか知らないので、ミレイに言われるがままにくっついて歩いた。シスターの話を聞くと、学院近くの小さな丘に遊びに行くようだった。私はミレイにならって私服を着て、背中にリュックを背負った。


 

 私はミレイと一緒に部屋を出て集合場所に向かった。そこで水筒とランチボックスを貰って、持ってきたリュックにしまう。

 移動は班別らしい。ミレイと私の班にはずっと前に食堂で話しかけてきた高飛車女子がいたが、向こうも私をいないものと扱っていたので気が楽だった。


 班で緩い傾斜が続く道を歩いていると、その女の子が話しかけてきた。

 

「あなた、日本語しか話せないんじゃなかったの?」

「普通に英語も話せます。英国史にはかなりうといけど」

「うそつき……」


 私の日本の家は長い坂の上にあった為に私は坂道に慣れていたが、その子は息が切れて苦しそうだった。

 

「休む? 荷物持とうか?」

「フン、今さら話しかけてくるなんて遅いのよ。出会いは最初が肝心なのに……」


 ミレイや他の班のメンバーは、空気を読んだのか、恐れているのか、少し離れて歩いてくる。


 日本の学校で私は意地悪をされる側だったが、おじさんの学校というだけで状況が一変した。彼女たちに必要なのは私ではなく、私の肩書きなのだろう。ミレイも同じ理由で肩身が狭いというなら、ここを離れる前になんとかしたいところだ。


 ……信だったら、菊子さんだったら、こーゆーときはどうするのかな?


 私は無い知恵を振り絞る。


「はじめの日に嘘をついてごめんね、私すぐにここを離れる予定だから、クラブ活動とかをする余裕はなかったの」

「……えっ、転校されますの?」

「うん、近々、その予定」

「……そう」


 お嬢様はそのまはま黙って坂道を登りはじめた。私は横から手を出して、その子の荷物を持った。


「……断ったのに」

「まあまあ、気にしないで。私はあなたより少しだけ体力があって、坂の上の家で育っただけ、困った時は助け合おう」

「あ、ありがとう」


 お嬢様は気まずそうに言い、前を向いた。


「私ハウスワークしか取り柄が無いんだけどね、ミレイはすごいの。頭が良くて、色々な外国語が喋れて、もう大学の準備をしてるの」

「……はい?」


 お嬢様は何を言っているのかと、首を傾げて私を見る。


「カレッジだよ! 私バカだから高校行けるか怪しいのに、ミレイはね……」


 話途中で私はミレイに捕獲されて、口を塞がれて黙らされた。ミレイは小声で話す。


「……ボクの話しはしなくていい、迷惑だ」

「いや、この状況でミレイを置いていくのは気が引けるから、ここはミレイのいいところを宣伝しておかないと」

「それが迷惑っていってる!」


 ミレイが大声で怒るので、班員が一斉にミレイを見た。ピンチはチャンス、衆目が集まった時は宣伝。


「ミレイはね、叔父も……父も認める天才なのよ。これを機会に仲良くしてほしいなーって」

「えっ、ヤンソンって国の奨学生じゃないの?」

「違うわ、父がミレイの才能に出資しているのよ、ミレイはスゴいの、これを機に仲良くしてね」


 ……いや、お金の事はよくは知らないけど、ミレイの背後には隼人がいます。ミレイを、ミレイを何卒よろしくお願いします!


 私が祈るような気持ちでミレイを持ち上げていたら、ミレイは大きくため息をついてまわりを見回した。


「ヤンソン、あなたって」

「まって、ボクの背後にコウの保護者がいるのは本当だけど、ボクは君たちと仲良くしようとは思ってないんだ」

「えっ?」


 ミレイはガシガシと頭をかく。私はミレイが何を言い出すのかと、うろたえつつミレイを見ていた。


「ボクの目的は勉強と進学、家じゃろくに勉強できないからね、こうしてコウの保護者に助けられてこの学院で勉強してる。だからさっさと次に行くから、今後もボクには関わらないで欲しい。それがボクのお願い」

「ミレイ、それだとずっと一人よ? それでいいの?」

「いいよ、ボクはお嬢様方と遊ぶ金も時間もないからね」


 班の人たちはなんと言ってよいのか分からずに、困ってお嬢様と私を見ていた。


「そうだ、ならバイトだ!」


 私はパチンと手を合わせて、まわりを見た。


「ミレイのノートはとても綺麗だし、勉強をおしえるのも試験の問題を予測するのもとても上手なの! だから、学院の勉強で困ったら、お金を出してミレイのノートを借りたらいいと思う」

「は? コウは何いってんの?」

「みんなは楽しく学院生活がしたい、で、ミレイは先の学校の為に準備したい、なら、ミレイから効率的な勉強を教われば遊ぶ時間も増えるし、ミレイの懐も潤うわ!」

「……コウ」


 ミレイは笑顔を顔に貼り付けて、ギリギリと私の腕をつかんだ。これが信だったらデコピン三発はされるだろう、静かな怒りを感じる。ミレイ怖い。


 お嬢様の取り巻きが、おずおずと手を上げた。


「あの……ヤンソンさん」

「ミレイでいいよ」

「じゃあ、ミレイ、試験じゃなくて、本とかのの翻訳も出来る?」

「あ……翻訳は得意だけど、何で?」


 少女はおずおずと、リュックから小さめの本を出した。


「この前保健室でこれを借りたんだけど、内容ゼンゼン分からないの、返す前にちょっとでも感想言えたらいいんだけど……」


 ミレイと私はその本を覗く。それは日本で売っている、少女向けの漫画だった。


「日本語だな……」

「これはスゴいキラキラしてるね、出てくる男子がこぞって歯が浮くような台詞を言う、怖い」

「コウ、このはみ出てる場所に書いてある文字はなに?」

「これは心臓の音で、胸がときめいている様子を表している」

「この、登場シーンに被る文字は?」

「ドーン! はなんだろうなぁ。迫力のある登場かな」


 ミレイは擬音語には戸惑っていたが、台詞は読めるようで、本を出した女の子は真剣に話を聞いていた。

 ミレイはハッと我に返り、本を女子に返す。


「今はハイキングだ、そろそろ移動しないと間に合わないだろう、翻訳は後で」

「ありがとうミレイ!」


 ワラワラと山道を登りだすと、お嬢様もミレイに話し掛けてきた。

 

「ヤンソン……ミレイはコミックに詳しいの?」

「いや、あんまり。保険医のアリスが世界のコミックを沢山持ってるだけ。言えば貸してくれる。ただ汚すとすごく怒られるけど……」


 それを聞いた班員はわっと喜んだ。

 

「ドクターと仲がいいの? 私にも貸してくれるかな?」

「貸してはくれると思うけど、あるのは翻訳してないやつだよ?」

「じゃあ読めないじゃん!」

「そーゆーときはミレイだよ!」


 私がミレイの背中を押すと、ミレイは私をにらんでから、はにかむように笑った。

 お嬢様もミレイに笑いかけた。


「ヤンソンさん、今度勉強でわからないことあったら聞いていい?」

「うん、いいよ、気軽に聞いて。呼び方もミレイでいいよ」


 少し照れているが、楽しそうなミレイを見て、私も一緒に楽しくなった。



 一行は目的地の丘につくと、一時間程ランチ休憩がとられたので、私とミレイは班から離れた。


 学生達から少し離れた見晴らしの良い場所にシートを広げてランチボックスを開く。

 中はハムとチーズのサンドイッチとりんごというこっちでは定番メニユーだが、今回は何故かポテトのフライが入っていた。私が散々食堂で作っていたために入れてくれたらしい。

 私はミレイの箱にポテトを入れると、ミレイは赤い丸いチーズを入れ返した。


「ミレイはチーズ苦手なの?」

「ううん、コウの胸にいいかと思って」


 私は複雑な心境でお礼を言うべきか悩んだ。ミレイは本当に良かれと思っているようで、ニコニコしてポテトを食べている。


 ……たんぱく質と脂肪分、胸に栄養補給。よろしくね。


 私は貰ったチーズをありがたく頂いた。

 私がチーズをちびちびと食べる姿を見て、ミレイは笑う。


「二才年上のルームメイトとか気を遣うだろうと警戒してたけど、全然そんなことなかった。コウはあれだよな。外見ガキっぽいのに中身ママだよな」

「……それ、全然誉め言葉じゃないよ」


 苦笑する私に、ミレイは水筒からお茶を差し出す。


「誉めてるよ。ボクにとってアウェイだった学院をホームだと思えるくらいのんびりと過ごせたもん。それってすごいことだよ! 相手に警戒心を抱かせないって、多分コウの長所だと思う……」

「馬鹿にされやすいというふうにもとれるね、それ」


 私はミレイの言うことを考えた。どうりでいろんな箇所でいろんな人が私の頭をこねくりまわす筈だ。警戒心の問題だったのか……。


「私にとっても、ミレイはそーゆー存在だったよ」

「へっ?」

「ミレイはね、しゃべり方や雰囲気が私の探している人に似ているの。だから私、ここでも普通でいられた。こんなに元気になれた。みんなミレイのおかげだよ……」


 ミレイは照れてハハッと笑う。


「ボクはコウのくれた物を食べていただけどけどね」

「食べさせるの好きなの。沢山食べてくれてありがとう、ディムサムは無理だったけどね、帰ってきたら食べに行こうね」

「コウのおごりな? ついでに博物館でミイラも見ようぜ」

「ミイラは怖いからやだ。恐竜がいい」

「両方みればいい。約束」


 ミレイが手を出すので、私はぎゅっとその手を握った。


 まわりを見ると、ランチを終えた生徒がパラパラと野原に移動していく。みんなどこへ行くのだろうと見ていると、ランチボックスを潰してリュックにしまったミレイが、私を立ち上がらせた。


「ボクらもいこう。めぼしいのなくなっちゃう」

「何かを採取いにいくの? 虫とか?」

「虫じゃないよ、雑草」

「雑草?」


 ミレイはしゃがんで草を探しながら言う。

 

「なんか夏至に七種類の草花を摘んで寝るときに枕元に置くとまじないがかかるんだと。前にそれがはやったせいで、学院のハーブ園がねこそぎ抜かれたらしく、それ以来ここに取りにくるんだって」

「ふーん……」


 私は適当に青い花を摘んでミレイに渡す。ミレイはそれを受け取って数を数えた。


「あと四種類くらいほしいな……」

「ちなみに、どんな効果があるの?」


 私が聞くと、ミレイはヘラっと笑う。

 

「未来の旦那様か見える」

「……」


 私が黙ったので、ミレイは赤くなって私の手から花を取り上げた。


「お前は相手がいるからやらなくていいな。摘んだ花よこせ、 貰ってやる……」


 私は持っていた花をミレイにあげた。


 ミレイは男の子っぽいと思っていたら、しっかり女の子だった。

 私はそれがとてもかわいく思えて、花を見つけてはミレイに差し出した。ミレイは黙ってそれを受けとると、茎の長いものを器用に編んで輪にしていた。

 ミレイは花輪を頭に乗せて笑う。


 ……ミレイはどんな人が好きなんだろう。


 私は未来の旦那様の事を考えてみると、浮かんだのが先日の書庫のキスだったので、私は邪念をはらうように顔を振った。大きな手、がっしりした固い胸、そしてキス……。

 湖で見えた信も、いつかああなるのだろうかと思うと、なんだか信じられなくて、私は熱を逃すように息を吐いた。



 生徒はハイキングから帰ると、また後で会うことを約束しておのおのの部屋に戻った。夕食後にまた校庭に集まるけど一時解散。

 校庭を見ると、色とりどりのリボンで飾り付けられたポールが立っていた。年少の学年の生徒がそれの周りで踊っていたらしい。


「丘じゃなくて、あの子達が踊るの見たかったな」


 私が愚痴るとミレイは「そーゆーところがママなんだよ」と笑っていた。




 夕食後、支度を終えた私とミレイは制服に着替えて通路に並んだ。そのまま寮の皆で日の暮れた校庭に出た。昼間に立っていたポールは片付けられて、中央には小さな木の櫓が立っていた。


 シスターのお祈りの後、みんなで讃美歌を歌う。その後シスターの芝居があり、中央の櫓に火がつけられた。

 私は小学校のキャンプも修学旅行も参加していなかったので、初のキャンプファイアーだ。ゆらゆらと揺れる炎を見ていると、なんだかとてもワクワクしてくる。


 火に照らされて、弦楽クラブの生徒たちが演奏を始める。するとまわりに座っていた生徒が立ち上がって踊り始めた。

 

「ボクたちも踊ろう」


 ミレイが私の手を引く。私も他の生徒に混じって踊った。

 ダンスは家でママ相手に踊った事しか無かったので、皆で火を囲んで踊ると高揚して、躍りながらにやけてしまう。

 ペアダンスだけでなく、皆で輪になって踊ったり、私ははじめての事だらけだった。

 まわりも、相方のミレイもケラケラ笑っている。なんて楽しい、しあわせな場所なんだろう


 私の目に涙が滲む。


 軽快な音楽と、火に照されて弾けるように笑う少女達。その足は円を描いて地面を回る。回る。それに初夏の闇をはらんだ濃厚な空気が混ざって神秘的な空間を作り出した。



 私は、ミレイの手をとって躍りながら、飛行機に乗っている時のような高い耳なりと、浮遊感を感じた。


『……楽しそうだね』


 どこからかサーの光かまたたくので、私はこくんと頷いた。


 ……楽しいです、とても


 あの日から、あの黒い沼の底を見た日から、またこんなに穏やかな気持ちになれるなんて思えなかった。


『人は人で癒されるものだよ。私も君に癒されたからこうして今も思考することが出来る。君に話し掛けることが出来る。人はこれを奇跡と呼ぶだろう。私はそう思うよ……』


 朝の光のような、厳かで優しいサーの言葉を感じて、私は静かに頷いた。


『さあ、フレイ、時は満ちた。今ならまたあの世界と扉で繋げることが出来るよ? どうする?』


 ……行きます。そちらに連れていってください。


 私が強く思うと、私の中で光がまたたいた気がした。


『おいで……』


 私の意識は赤く照らされた校庭の火を飛び越えて、高く高く舞い上がった。そこから扉の気配を探して、あの泉へと意識を下ろしていく。

 夏の夜のねっとりとした空気の中、私の周囲には、沢山の意識が浮いているのを感じた。私はそれに導かれて泉に浮かぶ月を目指した。



 私が正気に戻った時、私の足元には泉があり、校庭の曲や喧騒は全く聞こえてこなかった。

 辺りには虫の声が鳴り、霧が立ち込めていた。湖の周辺は湿気を纏って、空気が重い。手を動かすと指の間を空気がすり抜けていくのが分かる。

 

 泉の中央は月を映して白く輝き、解錠を待つようにゆらゆらと揺れていた。

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