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消えた幼馴染みを探しに異世界転移します  作者: dome
十四章(最終章)
174/185

14-5、猫神様


 ジーンのアパートに残された私は、机に散乱した、異国語の書類を見ていた。

´689年、アスラに第四の都市ラスカ設立´

´695年、ラスカ竜巻に襲われ廃都に´


「これは年表だなー。南の国ね」


 異世界にいた記憶はないのに、地名を聞くと何となく覚えている。それを端からくまなく英語に訳す。


 ……名称はまんまアルファベット変換できるから楽ね。


´712年、第二の都市サレム魔物に襲われ廃都に´


「……あれ? 第二ってサレムだっけ? サレアでは?」


 こんな時は便利アイテム、異世界猫兼辞書の猫様召喚!

 スマホをつけて。寝ていた猫を指でつついて起こす。


『ねえ、猫様? 昔のアスラの第二の都市の名称は?』

『サレア。長の名前だな』

『ありがとう、やはりこの資料は原本が間違ってる』


 猫は画面を覗き込むような仕草をした。


『なんでアスラ史を?』

『さあ? 翻訳しろと言われただけ』


 理由は不明だが、ジーンが仕事と言うなら、これはお金になり、責任が伴う作業なのだ。


´722年、アスラ首都崩壊´


『南は生きていくのが大変だなあ。すぐに都市が滅びちゃう』

『過酷な自然環境と、魔物がいるからなー。あと俺もいたし』

『猫様は竜巻や魔物と並べていいの? 災害レベルの迷惑ものなの?』

『当時は荒れていたからな、まあやらかした』


 猫は目を細めて笑う。

 南の国の民にとっては、笑い事ではない筈だ。


 ……猫様はドラゴンだから、飛びながら火を吐いて町をを焼いてしまったのかも? それなら災害呼ばわりされてもおかしくないし。


『今は平和?』

『平和。ってか、今アスラは魔物の国だから、結構ものものしい』

『あ、そうだった。ミクがそうしようって』


 なにげなく口に出して、「あっ」と驚き、手で口を覆った。


 ……ミク。ミクってここで出てくる人なのか。


『ねえ、ミクってどんな人?』

『美人。赤い』

『情報が少なすぎでしょう猫様、赤いって……』


 猫は目を顔の中心に寄せて、困った顔をした。


『身長百七十八センチ、女性、外見年齢は十代後半。巻き毛の長い赤髪を頭頂で結び、背中に垂らしている。背中には宝具の炎剣を収納している。なのでいつも背中の空いた服を着ている。この服は肌同様再生可能。性格は率直で単純、精神面弱い、人類最強』

「……あっ、スマホの画面が文字で埋まっちゃった!」


 吹き出しを指でどかすと、猫は「どうだ!」と、顔を上に上げて、自慢げにふんぞり返っていた。かわいい。


『沢山の情報をありがとう、スクショ撮ったから後で読むね!』

『三の姫も寂しがっていたから、思い出してやるといい』


 ……姫なんだ。ミクさんは女性なんだねぇ。


『ちなみに、アマミクは何度もお前とキスをしている。あと、よく一緒に寝ていた。抱き枕にされていた』

『……え』


 ……寝ていた? 抱き枕とつくなら添い寝だよね? 私、浮気していないよね?


『アマミクって、女の人が好きな女性なの?』

『違うと思う。多分だが、男女の分類をしていないだけだと』


 ……異世界と聞いて思い出す人の体温は、ミクって人のかもしれない。


 このへん、スマホのメモに記載。メモメモ。

 異世界用語が並んだメモを見ながら、ふと思い立って聞く。


『ねえ、君と私はどーゆー関係だったの? ずっと敵だった?』

『お前は恨みを持続出来るか? すぐに忘れてしまうのではないか?』

『そうね、たいていの恨みはご飯食べる頃にはなくなってる』


 ……隼人は除く。


『だよなー』

『じゃあ、仲良かった? お友達だと思っていい? 今!』


 スマホを両手で持ち、食い入るように画面を見た。ここは是非頷いて欲しい!

 猫はしばらくうろうろしたのちに、丸くなって寝た。そしてあくびをする。


『最後の方は、出会い頭にキスしても怒らなかったな』


 ……えっ、なにそれ?


『キスはどこに? 手? それとも頬?』

『口にしたこともあったな。本当に忘れているんだな』


 なんてことだ。私は異界に恋人がいたのか! いや、流産した子どもはジーンさんの子どもだと言っていたじゃないか。なら、二股? まさか? いや、竜だよね、猫様は、なら問題ない?


『ちなみに、口にキスしたとき、どんな状況だった? 再会とかお別れとか、ダンスってのもありか』

『コウは相手が泣いていると何しても怒らない。むしろ、抱きついてくる』


 ……ああ、そのパターンか。それなら何度もやらかしているな。初対面の信がまさにそれ。泣いている人にキスするのはママのやるおまじないだ。ママはまぶたとかおでこだけど。


『なるほどー』


 うんうんと頷いていると、猫が笑うように目を細める。


『俺達の関係より先に、俺の姿を思い出したほうがいい』

『分からない。異界では信とパンを食べてたことしか思い出せない』


 猫の横に『ニャ!』と、吹き出しが出る。


『その、信の体に入っていたのか、俺だよ』

『ええ-』


 私は混乱しながら、猫との会話を思い出した。


『まってまって? だってあなた先日、二年間、信と私を引き離したと、だから私が泣いていたと言ってたよ?』

『外見がハザマシンでも、中身が俺だとお前は泣くよ?』

『じゃあ、ハザマシンはその間何してたの? 貴方と体を交換してたの? ドラゴンに変身していたの?』

『……説明するのが面倒だ、自分で思い出せ』

『意地悪』

『シンの事は本人に聞けよ。じゃあまたな』


 猫はそっぽを向いて、画面の外に消えていった。



 ジーンのアパートの外から、トラックが通過する音が聞こえた。夢中で猫と話をしていたら、既に時計の針は正午を過ぎている。

 猫が消えたスマホを机に置いて、スゥと深呼吸をする。


 ……なんか一杯教えて貰った。


 ミクのこと、異界のこと、そして中身が猫様のハザマシンがいたこと。

 異世界でキスをした記憶は確かにある。挨拶じゃないまじめなやつ。相手は信だと思っていたら、猫様の可能性も出てきたぞ?


「……なんかよけいわからなくなった」


 フゥとため息をついて、目を閉じた。



◇◇


 昼に戻って来たジーンは、私を送るついでに昼食を食べようと言う。

 ジーンが選んだお店はサンドイッチ屋さんだった。

 一度行った事のあるハンバーガー屋さんとはちがって、アイスクリームのような展示ケースに沢山の具材が並べてある。それらを細かく注文して、好きなものを挟んでくれるらしい。


「幸は野菜多めで頼むといいよ」


 経験者のアドバイスを胸に、前の人を見ていると、注文が細かすぎる。

 一度訪れた事のあるバーガー屋さんでは、完成品を頼む形式だったのに、ここでは具材を全て指定しないとダメみたい。


「な、な、何でもいいんだけどな。注文怖い……」


 ジーンは笑って、テーブルを指す。


「適当に頼むから座ってていいよ」


 それはありがたいと、レジ前から逃げた。

 しばらくして、ジーンが持ってきたトレイを受け取り、テーブルに並べて感嘆する。


「すごいなー、ファーストフードとか、すごく久しぶり。十年ぶりくらい?」

「ママが外食嫌いだったから、遠出したときしか機会は無かったな」

「うん。上野や両国に行った時だよね。そこで貰ったおまけのおもちゃ、大事にしてた」

「俺のまで奪い取る勢いだったな」

「だって映画の人形だったから、主人公カップルを引き離すわけには!」


 言い訳をする私の頭を、ジーンはポンと叩く。これとかデコピンは信が昔からよくやる仕草だ。隼人さえ知らないママとの相撲観戦の話もするし、ジーンさんが昔は信だったというのは本当なんだなぁ。


「ここのは中身を好きに選べておいしいよ」

「いただきます!」


 食前のお祈りをして、トマトサンドにかぶりついた。

 エビとレタスとアボカドとトマトとオニオンとチーズにバジルソースがかかっていてサッパリしてておいしい。


「中身が凝ってるねー。君のは何なの?」

「チキンサンド」

「なんで私のは凝ってるの?」

「野菜多めで、店員さんおまかせにしたから」

「……ふーん」


 食べかけのサンドイッチからトマトをつまんで口に入れ、サンドイッチをジーンに向ける。


「食べる?」


 ジーンは少しためらって、一口かじった。


「……おいしい」

「何で顔赤いの?」

「こーゆー状況に慣れていないから」


 私はキョトンとした。


「私……君によく、ご飯を食べさせていた気がするんだ」

「それは、俺じゃないよ、レーンだよ」

「それは……どうやって見分けをつけたらいいんだ……」


 困惑する私を見て、ジーンは笑う。


「黒猫が常時一緒にいて、かつ魔物がいるのが異界。白ヘビかいる場合はそれ以外。そして、白ヘビと一緒に出てくる背の高いがっしりした体型の黒髪の男は中身が俺」

「ん? 今も背が高くて黒髪だよ?」


 ジーンは悩む。


「自分の外見を見る機会は殆ど無かったからな……でも幸さんがすごく小さかったから、今より十センチ以上は高いと思う。あと、外人顔だった。鼻が高い」

「外見が違うのに中身が君って、不思議ね」

「幸だって、フレイの時もあれば、エレノア妃にとりつかれていたこともあったよ。体を乗っ取られまくっていたね」


 そうだったのかと、机に突っ伏して、ため息をつく。


「いつも誰かと一緒だったの。でももうその人いなくなったちゃったみたい。私のなかに私しかいないって変な感じね」

「寂しい?」

「うん……でも、その人がいたときも寂しがっていたから、私は君の中身がいないと泣くらしいよ」

「……中身」


 ジーンに向けて手を伸ばすと、ジーンは手を握ってくれる。

 骨ばっていて、大きくて、私より体温が低いのか、少し冷たい。でも優しい、安心する手だ。


「君がいる世界にいて良かった……」


 ジーンは苦笑する。


「もし俺が隼人さんに乗り移ったら幸はどう反応するのか見てみたいな」

「近寄らないから君がとりついてても分からないよ」

「幸さんセンサーはあなどれないよ? 結構ズバリ見分ける。魂レベルで見分けている」


 ……魂レベルって、うさんくささがスゴい。怪しい。


「君は変な女に目を付けられちゃったねぇ……」

「自分でそれ言うんだ」

「大丈夫だよ、こっちも大概どうかしてると思うし」

「どうかしてる?」

「生きる目的が幸さんになってる」

「……ひぇ」


 そういえば昨日そんなことを言っていたな、勉強するのも私と世帯を持つ為だ、みたいな……。


「あ、あのね……」

「何?」

「あの翻訳の書類、元の文字自体が間違ってるのが多いかも……」


 それを聞いたジーンは分かりやすく青ざめた。


「抜き出しから間違っているとか、最初からやり直し?」

「どこからあの情報を持ってきてるの? それ、私がやってもいいよ? そしたら君の時間が空いて私は嬉しい」


 ジーンの手を揉みながら言うと、くすぐったいのか、ジーンは口もとを手で隠した。これは多分にやついている。


「上司に間違いが多いことを伝えて、夏辺りに幸さんが暇ならやってもらおうかなー。まあ上司の判断次第になるけど」

「あれは機密書類なの?」

「いや、もう幸さんのプライベートだけの問題になってるから大丈夫だと……でも、本人が見るのはショックかもしれない」

「ショックって」

「向こうの情報の殆どが幸さんの日常風景だから」

「プライベート? 日常?」


 ……なにそれ、詳しく?


 うしろめたいことがあるらしく、ジーンは顔を背けてこっちを見てくれない。

 私は握っていたジーンの手を引っ張った。


「幸が寝て、起きて、人と喋って。みたいな情報ばっかりだよ」

「なにそれ……どーゆーことなの?」


 呆然とした隙に、握っていた手が離れた。


「俺ら……隼人さんやロード、俺が幸に´どこにいたの? って聞かないのは知っていたからだし……」

「私、どこにいたの?」

「異世界に。幸は学園からアスラの砂漠に出て、セダン、西の学舎、聖地、ファリナ、最後に異界にいた」

「砂漠……」


 脳裏に一瞬砂漠の風景が浮かんだ。目を閉じて、その感覚をより深く思い出す。


「砂漠寒いし暑いの。あとね、ミクさんちょうつよい」


 赤髪を背中に垂らして宝具を背中に……


 頭の中に、満天の星空の下で、篝火のように舞う姫の姿が浮かんだ。肌を刺すような夜の寒さも、彼女の側にいればあたたかかった。炎のように明るく、熱く、率直で直感的な人だった気がする。


 赤髪の姫を思い出すと同時に、もう二度と会えない。という寂寥感に襲われる。

 黙ったままポロポロ泣き出したので、ジーンは立ち上がり、私を車に誘導した。


「ごめん、なんか猛烈に悲しい……」


 助手席でタオルを貰い、顔に押し付けて背中を丸めていた。ジーンは隣に座って背中を撫でてくれる。


「好きなだけ泣くといいよ」


 そう言って、ジーンは叔父さんの家に向けて車を走らせた。


「幸は仲良くなりすぎる。相手を心底愛するから別れが人一倍辛いと思う」

「そんなにお友達はいないよ。君とミレイだけだよ……」

「ここ数年の間に友達がいたんだよ。思い出すと寂しくて泣くほど仲が良かったんだ……急がなくていいから、少しずつでも思い出すといい」


 ……私にお友だちがいたの? ホントに? 小中学校では悲しい思い出しかないよ?


「その人とは、もう会えないの?」

「うん、もう魔法使いがいないから無理だね。あと、異界渡りのリスクは大きいからレーンに誘われても絶対に行かないで」

「リスク?」

「怪我をしたり、閉じ込められたり、記憶が消えたりする。最悪死ぬ」

「……もしかして、今私の記憶が欠けているのはそのせいなの?」


 ジーンは首をかしげた。


「それもあるかもしれない。あとはフレイという人が幸から離れたのもあると思う」

「フレイって、隼人にも言われたわ。私のおばあさまが、ずっと私の中にいたのかしら?」

「多分……明言はできないけどね」


 これは隼人が言ってたヤツだ。失われた期間の記憶は、自分で思い出すしか無いのだ。


「謎が多いなぁ。異世界とかワープとか憑依とか映画みたいな事言われても困るよー」


 不満げに言うと、ジーンはクスッと笑う。


「幸自身に起きたことだからね、見ているほうが混乱するよ」

「過去に飛ばされた人に言われたくないし」


 ツーン、と顔を横に向けると、窓の外が見えた。

 車は町を離れて住宅街に入る。よく散歩をする公園を横目で見ながら、私はジーンに尋ねた。


「ねぇ、レーンって誰なの?」


 ジーンは真っ直ぐに前を見て言う。


「向こうにいる魔法使いだ」

「猫様は神様って言ってたの」

「こっちだと魔法使いだけど、向こうでは神レベルの能力があるだろうね」

「神様であっているのね……」


 ……黒猫で、真の姿は災害を及ぼす竜。そして信の体に入っていた神様。


 広い公園の脇を抜けて、車はターナー家に着く。ジーンは車を止めて、私に向き直った。


「コウ、よく聞いて。君が今思い出したのは、もう会えない知り合いの事だ。幸がそれを思い出すことでレーンにひっぱられるなら思い出さないで欲しい」

「……え、うん」


 何を言われているのか理解出来ずに、取りあえず頷いた。


「もし向こうに渡ることがあるなら、もう二度と俺には会えないから、覚えておいて」

「君に会えなくなるなら思い出さなくていい、うん、忘れる」

「ありがとう」


 お礼を言うと、ジーンは私に顔を寄せた。

 目を閉じて、キスを受け入れると、脳裏に大きな樹木のあるドームが浮かぶ。


「大きな木が見える……?」

「……木?」

「大きな樹の下で貴方と何回かキスしたことある気がしたの……」


 私の記憶に出てきたのは、確かに日本人じゃない顔立ちの黒髪の男性だった。

 ジーンの眉間に触れ、眉からまぶたを指でなぞり、記憶の人と比べてみる。


「……ああ、本当だ、君よりも鼻が高くて、彫りが深い……この人の中身は君なのかな?」


 ジーンは困惑して、私を抱きしめた。


「幸の記憶が見えたらいいのに」

「……?」

「もう、レーンと俺とジーンゲイルを見分けようとしないでいいよ、混乱するだけだ。幸と向こうでキスしていたのは全部俺と言うことで」

「えっと……お隣の信と、今の君と、彫りの深い君ね」

「いや、十四才の俺、今の俺、レーン入の俺、あとジーンゲイルで四人か。それは別に幸が浮気をしていたわけではないから」


 ……大小様々な四人の信と私は付き合っていたのか!


 それを思い出そうとして、脳裏に黒目がちな不機嫌そうな男性の顔が浮かんだ。いや、この顔はもっと小さいときも知ってるぞ? 幼稚園サイズから見上げるほど背の高くなる、この人は誰だ?


「あと、ミクとつり目の黒髪男性もいるの……」

「そっちの場合、幸は被害者だから、犬に噛まれたと思って忘れなさい」

「そんなこと言ったって、赤い人は挨拶っていうレベルじゃないのよ? 結構ショッキングなキ……」


 話の途中で、ジーンは私の口を口で塞いだ。


「……っ」


 ジーンは私の肩にかかる髪に触れて、髪に顔を寄せるように、首を口でなぞる。

 体の力が抜けるような感覚に目眩を覚えて、私はジーンの服をつかんだ。


「……ふぁ」

「忘れること、いいね」


 なんだかいたたまれなくなって、言われるがままに頷いた。

 ジーンは手を止めて、私を抱きしめる。


「本当に幸さんエロい」

「……うう。否定できない」

「こんなんでよく家に来たなぁ……」


 ジーンの手が髪に触れる。それだけで息が詰まって、体がビクッと震えた。


「向こうの世界だと、この幸さんの異様な感覚がまわりに筒抜けるからね、そーゆーえろい気持ちが周囲にガチで伝わります。半径一キロくらい」

「……ひぇ」

「こっちに戻ってきてよかったね」


 そう言ってジーンが頭をよしよしするので、私は頷いてため息をついた。

 ジーンは私から体を離して苦笑した。


「やめよう、止まらなくなりそうだし」

「……うん。顔あつい。心臓破裂しそう」


 タオルで顔を覆って、息をととのえる。

 ジーンは子どもをあやすように、私の頭を撫でて笑った。


「早く学校卒業しなさいね」

「まだ受かってもいないのに……」

「がんばれ」


 そう言ってジーンは車を降りて、幸の女学院時代の荷物を幸の部屋に運んだ。

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