幸、プロローグ
幸が目を覚ますと、あたりはまだ暗かった。
まだ夢うつつなまま枕元に置いてある目覚まし時計をつかむ。時刻を見ると、アラームが鳴る時刻は過ぎていた。どうやら私は寝ぼけてアラームを止めたらしい。
……しくじった、間に合うかな?
私は焦ってベットから飛び下りた。
着地点で何か柔らかいものを踏んづけた気がするが、確認するのは後まわし。今はとにかく時間が惜しい。
私は二階の端の部屋のベランダから外に飛び出し、立て掛けてある梯子から急いで屋根に上った。
空は白んでいるが、まだお日様は顔を出してはいない。どうやら日の出鑑賞に間に合ったようだ。
私はホッと胸を撫で下ろして、屋根の定番の場所に座った。肩辺りでざっくりと切り揃えた黒髪が、風に吹かれて、汗ばんだ首を撫でる。
急いで屋根に上ったので、私の軟弱な肺は悲鳴を上げている。
私は朝の空気を深く吸い込んで、呼吸を整えた。
私の家は坂の上にあるので、屋根の上から街が一望できる。坂の道に沿って家々が建ち並び、坂の下には港町が、そして遠くには鈍色の海が見えた。
ここは関東のすみっこの坂の多い町だ。
遠くに見える山の稜線から、紺色の空を太陽の光が赤く染めていく。薄ぼんやりと明るくなる空の色合いは、夜の終りを告げていた。
「……寒っ」
九月と言えど朝は涼しく、夏にパジャマがわりにしているキャミソールと短パンでは肌寒い。
しかしもう空は白んでいる。お日様が顔を出すのはもうすぐだ。ここで服を取りに戻るヒマはない。
……なるべく空気にあたる肌の面積を減らしてしのごう。
私は屋根の上に座り縮こまって、むき出しの肩と腕をさすっていた。すると、ふわりと肩に柔らかくてあたたかいものが掛かる。
振り向くと、私が座っている屋根の上には、いつの間にか男の子が立っていた。
何も言わずに遠くを見ている男の子を、私はじっと見つめた。
幼さの残るふっくらとした輪郭は、最近少し細みをおびてきた。目は大きめで、黒く大きな瞳は男の子にしてはかわいい。
毛が濃いのか、眉が太く、睫毛も長い。彼は髪の毛も太いので、短く切った黒髪が頭の上でピンピンと跳ねていた。
彼、羽間信は、お隣の住人で、私と同学年だ。私たちは同じ中学校に通っている、クラスメイトでもある。
この、お隣の男の子、信と、私こと幸は、私がここに越してきた幼稚園の頃に知り合った。
それからは学校に行くのも、放課後も、朝ご飯も夜ご飯も、何をするのもずっと一緒。むしろ、私の隣に信がいないほうが珍しいくらい親しい。
――私にとってお隣の男の子は、誰よりも近い、家族同然の存在だった。
汗が引いて寒かった背中に、ショールがふんわりとあたたかい。
何故か仏頂面をしている信だが、普段の彼はとても優しいのだ。
「ありがと、信、ちょーど寒かったの」
日の出の様子を確認しつつお礼を言うが、返事は無かった。
信は無口な人ではない。お喋りとまではいかないけど、普段はフツーに話す。彼が黙しているならば、今現在彼は不機嫌なのだ。それか何か喋れない理由があるのか?
何故黙っているのか不思議に思い、私は立っている信を見上げる。信は動かず腕を組み、不機嫌そうな顔をして、じっと私を見下ろしていた。
「ど、どうしたの、なんか機嫌悪い?」
じっと見られると、とても気まずい。
私は視線を空に向けつつ、おそるおそる無言の理由を聞く。信は質問には答えずに、私の隣に座った。
「これ……」
信はそう言うと、右腕を私に向ける。まだ薄暗いので見えにくいが、どうやら腕が痛いらしい。
「怪我をしたの? だいじょーぶ?」
どこが痛いのか分からないけど、痛いの痛いの飛んでいけーと唱えつつ、信の腕を撫でる。信は仏頂面のまま、手で私の髪をぐしやぐしゃにした。
「なんでー? 君が怒ってる原因、私のせいなの?」
頭を守りつつ、乱れた髪を手ぐしで整えていると、信は東の空を指した。
「日が出るぞ」
少しでも早くお日様が見えないかと、私は立ち上がった。
紺青の空が紫に、薔薇色に変化していき、空と大地の切れ間から眩しくてあたたかい光が顔を出す。すると、街のあちらこちらから小さな光が現れ、陽の光を浴びてキラキラと輝いた。
「わぁ……」
辺り一面がお日様に照らされて、世界が金色に染まる。
私はこの時間の風景が一番好きだった。
私は毎日時間を調べて屋根にあがり、晴れた朝は必ず朝日を見ていた。
「……はあ、堪能した。今日もキレイだった」
私はゆるむ頬を手で押さえつつ、満足して息を吐いた。そして足元を見てフフフと笑う。私の隣に座っている男の子のつむじがよく見える。まだ櫛を入れてない信の剛毛が、跳ねまくっていてとてもかわいい。
膝に頬杖をついている信に、私は背中から飛び付いた。
「おはよう信! どうしたの? 朝からウチにいるなんて!」
浮かれた私に対して、信は不機嫌モードのままだ。
信が私の腕をほどいて距離をあけるので、私はその横に座って距離を詰めた。
ショールを広げて信の背中に掛ける。肩にかけるついでに抱きついて、信の顔を至近距離で覗いた。
すると、信は私から顔をそむけ、不機嫌そうに言った。
「……昨晩のことは何も覚えていないのか?」
「うん、分からない。昨日、なんかあった?」
信はがっくりとうなだれて、ぼそぼそと語る。
「昨夜二時頃、幸が眠れないと泣いて言うから、俺は朝まで幸の面倒を見ていたんだけど、全く、何も、ひとつも覚えていないのか?」
「あー」
言われてみるとなんとなくそんな気がする。そうだ、悪夢を見たんだ、なんというか、災害系の……。
「人がいっぱい死ぬ夢を見た……かな?」
口に出すと、忘れていた悪夢の光景が頭に浮かぶ。私はそれを再現するかのように、手を上げて前に振り下ろした。
「こう、隕石みたいな大きな火の玉がね! 人の住んでいる町に落ちて、ドーン! ってなるの。人がいっぱい焼け死んで、とてもこわかったかな……」
信の顔色を伺うと、信はうんうんと頷いて私の話を聞いていた。
「……で? そのあとは?」
「あまりにも怖かったから、木をつたって君のおうちの部屋の窓を開けたかもしれないね……網戸で入るの簡単だったよ、夏はいいよね」
「良くはないが、そう、不法侵入。んで、寝ている俺を起こして幸の部屋に連れ帰った。そのあとは?」
「えっ……」
私は挙動不審に視線を泳がせた。
「寝てしまったので、後と言われてもわかんないかな……あはは……」
……ヤバい、全然思い出せない。穏和な信がここまで怒るなら、私はなんかやらかしたのだろう。信が怒る事って何だろう? マナーが悪いとか、日本の慣習からずれているとか、歩いていて道路にはみ出すとめっちゃ怒られる。それ系かな?
青ざめてうんうん唸っていると、信は私の頭をペシッと叩いた。
「すまん、そこまで猛省されるような事は起きてない、さっき俺を踏んづけて部屋から飛び出て行っただけだ」
「もーせーとは?」
「酷く反省すること、もうせい」
「そっかー、さっき何か踏んだなと思ったけど君だったかー、無視してゴメンね、ジャンプして踏んだから余計にいたかったね……ふーふーしよっか?」
信の腕の赤くなっている部分に息を吹きかけようとしたら、顔面をわしづかみにされて距離をとられた。
私はつかみ損ねた腕を探して手をさ迷わせる。
「あばばばば」
「家で冷やすから、大丈夫だから」
「えー? 君は日の出を見るシュミは無いから、その文句をいいにここに来たんでしょ? 手間暇掛けて屋根に上ったのだし、謝罪くらいさせて?」
「いや、いらん」
信は気がすんだのか、サッと立ち上がり、慣れた様子で梯子を下りた。下から木の葉がガサガサと揺れる音が聞こえる。
謝罪が受け入れられたのか確認することもできず、私は口を開けたまま、誰もいなくなった屋根の隅を見ていた。
「あっ、私も朝の支度をしなきゃ」
信を追いかけるように立て掛けた梯子を下りる。私はベランダ家に入るが、信は二軒のおうちにまたがるように生えた樹木をつたって、信の家の窓から自室に戻っていた。
私、篠崎幸、十四才女。
お隣の男の子は羽間信、十四才男。
信の家はウチの隣に建っている。
って言っても、ウチの庭は無駄に広いので、敷地としてはお隣とは言いがたいけど、建物は隣接している、なのでお隣さん。
私たちの家の間には木登りをしやすい木が植えてあり、私の家のベランダから、木をつたって、信の部屋の窓に侵入できるのだ。
小さいときはそこから出入りしていたけど、中学になってから木登りルートは殆ど使っていなかった。昨夜は久々に木登りした気がする。
お隣の信は、母親を小さい頃に亡くしていた。
信の父親も県の警察官なので、あまり家に居ない。
なので小さい頃から信は私の家にいることが多かった。
信の家庭環境とは逆に、私の家は母子家庭状態だ。
まあ父親はいちおう生存しているが、父親の隼人は外国に住んでいる。私の物心がついてから、数えるほどしか父親の顔を見たことがない。
「……まあ、隼人はキライだからいないほうがいいけど」
私はおぼろげな父の顔を思い出して、頭から追い払おうと、頭をブンブンと振った。
◇◇
日の出観賞も終わり、私は一階のリビングまで下りた。誰もいないリビングの空気を入れ換えようと雨戸を開ける。日は完全に昇っていて、朝露に濡れた庭木がキラキラと光っていた。
蚊が入らないように網戸を閉めていると、ママがリビングに入ってきた。
「Good morning,Kou(おはよう、コウ)」
「オハヨーママ、先にシャワーつかうよー」
ママはまだ眠いのか、寝ぼけまなこであくびをしつつ、ヨロヨロとキッチンに向かった。多分、朝ごはん用のお湯を沸かしてくれる筈だ。
寝起きの手入れをしていないママの長い髪の毛は、おひさまいろに輝いて、絵画の後光のよう。
そんなママの後ろ姿を見送りつつ、私は逆方向にあるバスルームに向かった。
私のママは外人だ。どうもイギリスの田舎育ちらしい。ママはイギリスの田舎で日本人の父と出会い、結婚して、旦那様をイギリスに置き去りにして、娘とふたりで日本に住んでいる。
私は瞳の色と顔立ち以外は日本人と大差ないのに、ママはどっからどう見ても外国人に見える。実際日本語も殆ど喋れないのだから中身もばっちり外人だ。
ママはウエーブがかかった金髪を腰まで伸ばし、シュシュで結んで、緩く背中に垂らしている。瞳は私と同じ明るい緑色。私とママの共通点なんて瞳の色しかない。どうやらこの緑色はおばーちゃん譲りらしい。
「私はおばあちゃんに似ているってママは言うけど、ママに似てる方が良かったなぁ……」
シャワーのコックを捻り、熱いお湯を頭からかぶる。頭の上から雨のように降り注ぐお湯を顔に受け、ぼーっと昨夜の夢を思い出していた。
その夢では、砂漠にある大きな都に、空から火の玉が降り注ぐ凄惨なものだ。
その夢では人が沢山焼け死んだ。
建物が砕ける音、人々の悲鳴、焼ける街。その光景を思い出して、私はぶるっと肩を震わせた。
昨夜の夢は本当に怖くて、夜中なのに信に助けを求めてしまった。中学に上がってからは、なるべく夜に信に助けを求めることはしないようにしていたのだけど、無理だった、夢が怖すぎて我慢出来なかった。
「……普段の夢は平和なんだけどねぇ」
お湯を止めて、換気扇をまわすと、体をふきつつ中学校の体操着を着た。
袖に学年を示す色のついた、白いTシャツと紺色のショートパンツ。速乾性でサラサラした肌触りが風呂上がりの火照った体には気持ちいい。
ドライヤーは無くても大丈夫。私の髪は短いのですぐに乾くし、私の髪の毛は信みたいにはねない。
「毎朝鏡の前で寝癖を押さえている信は大変だねぇ、ママだって髪の毛長くてくるくるで乾かすの大変だし、私の髪の毛は楽ちん」
そうつぶやきつつ、浴室のドアを開けると、シャワー室の入口に、私のスリッパが並べて置いてあった。
「……廊下を裸足で歩いていたの、ママにバレてた」
手にスリッパを持って、足音がしないようにそーっと歩く。開いているキッチンのドアから中を覗いて、私はママの背中に抱きついた。
エレンママは背が高いので、肩甲骨の窪みに私の顔が埋まる。フワフワでサラサラのママの髪の毛は好き。ママはいっつもいいにおい。
「You don't look well today. Are you all right?(元気無いの? 大丈夫?)」
「オールライト。ダイジョーブ、ダイジョーブ……アー……ママスキ……」
心のおもむくまま充電するように、ママにくっついていたが、時間が無いので離れた。
紅茶をいれるママの横で、パパッと朝食とお弁当のおかずを作る。とはいっても、夕飯の残り物をあたためて卵を焼くだけだ。
お弁当のおかずを冷ましている間に、薄切りの食パンを出して、クリームチーズとブルーベリーのサンドイッチを作り、冷ましていたおかずと弁当箱に詰めた。はい、朝のおつとめ終了。
ママがいれてくれたミルクティーを飲みながら、多めに作ったサンドイッチをかじっていると、ドアのチャイムが鳴った。こんな時間に来る人は一人しかいない。
「ハーイ、オマチヲ」
ママは時代劇で学んだ日本語を披露しつつ玄関のドアを開ける。そこにはお隣の男の子、信が立っていた。
ママは笑顔で信を招き入れた。
「もーにんー信、パンたべる?」
キッチンに案内された信に向けて、袋に入った食パンを揺らす。信は怪訝そうに眉をひそめた。
「パンはいらない、しかし、体操着……」
「あーそこきになりますかー……」
日頃お世話になっている、信に指摘されたら仕方がない。
私は立ち上がり、二階の自分の部屋に入った。
まず目に入った通学鞄に、今日の時間割りの教科書とノートを詰める。通学鞄とジャージの入った袋を持って、さらに制服のシャツとスカートとリボンを乗せた。
「あっ、両手が塞がったから着替えるのは無理だ。鞄は着替えてから持つべきだった」
仕方がないので、鞄と制服を持って一階に下りる。鞄を廊下に置くと、そこで制服を着た。
開け放たれたリビングの扉の向こうから、呆れ顔の信が見える。
「……自分の部屋で着替えてこいよ」
「これは鞄で手が塞がっていたからしかたがないの、ふかこうりょく」
「鞄は置けばいいだけだろう」
「鞄を持った労力が無駄になっちゃうでしょ、ここだと学校行くときに通るからいいの」
「……理解不能」
信はしばらく呆然と立ち尽くしていたが、持っていた通学鞄からプリントを出して、棒状に丸めて私の頭をしばいた。
スパーン! とこ気味よい音が響いたので、リビングの扉からママが顔を出した。
「……っつあ」
私が着替え途中のまま、しばかれた頭を押さえてうめいていると、ママが出てきて私の衣服を整えた。
エレンママは真剣な顔で首のリボンを結んでくれる。
「Be careful about one's appearance in public.(人前ではちゃんとしなさい)コウ」
「Please forgive me,Mom.(許して、ママ)」
口では許しを乞いつつ、ママに抱きついて顔を埋める。本日二度目のママ充電。
信は抱きつこうとすると逃げるけど、逃げないママは貴重だ。あとママは柔らかい。しあわせ。
「あーママ、朝から騒いでスミマセン、プリントを渡しに来ただけなんで、俺はもう学校に行きますね」
「プリント?」
ママから離れて、信が持っているプリントを貰う。プリントには数式がいくつか書いてあった。
「これは?」
「昨日、コウが寝ていた時に配られた宿題、今日の数学の授業で提出」
「いや、これゼンゼンわかんないよ? 数学何時間目? 何で昨日渡してくれなかったの?」
文句を言うと、信は「忘れてた」と苦笑した。ママもプリントを覗く。
「You learn from Shin?(信に習えば?)」
「信は学校でお話してくれないから無理、今写させて!」
「写すのはダメ、そして教えている時間はない」
「信のけちんぼ! ママは信をハグしてて!」
私は信の肩をがしっとつかんで、ママの前に押し出す。ママは笑って信を抱きしめた。
「ちょ、まっ、コウ?」
美人のママにハグされて、信がうろたえている間にプリントを写させて貰おうと、信の鞄をあさる。するとお弁当箱が見えたので取り出した。
蓋を開けると、ふりかけのかかったご飯のみのさみしいお弁当だった。
私は鞄をあさった目的も忘れてキッチンに向かう。
信のお弁当箱のご飯を寄せて、冷ましていたおかずを詰めた。
玉子焼き。お肉の野菜巻き(二色)。ウインナーとブロッコリーの炒めもの。キュウリとハムの串刺し。昨日の残り物含む。
信はいつの間にかハグから解放されていて、キッチンの入り口から私を見ていた。
「君は朝昼晩とお米を食べるよねー、よっぽど大好きなんだねー、お米」
「いや、フツーだから、米は日本国民の主食だからな」
「こてーがいねんにこだわらず、好きなものを食べたらいいのに」
まあ、信はお米だろうな、と思ってお米用のおかずを作ったけど。
「朝御飯は食べたの? 何か食べてく?」
「朝練あるからすぐ行くよ」
「えっ、君は昨日寝てないんじゃ?」
昨夜二時に部屋に行った時、まだ信は起きていた。その後は私の部屋で私の面倒を見て、朝の五時には屋根にいたよね? 私の部屋には信用の布団が敷いてあったけど、寝ている時間は殆ど無かった筈だ。それも全部私のせい。申し訳ない。
あわわとうろたえていると、信は私の頭に手を置いた。
「大丈夫、それなりに寝たよ、別に寝なくても朝練くらいは余裕」
「不健康じゃない?」
「お前が言うな」
文句を言うと、ピシッと露出したおでこを指で弾かれた。
そりゃそうだ。昨夜の信の睡眠不足は私が原因。
「すっ、スミマセン……君にはいつもお世話になってます……」
お弁当を詰めなおしたリュックを背負い、玄関に向かう信に、私は深々と頭を下げる。
「それは気にしないでいいから、それよりも、通学迄にプリントやっとけよ」
「いやーそれは無理でしょー、解き方ゼンゼンわかんないもん。信のプリント置いて行って、写すから」
「それはダメと言っただろう、じゃあ学校でまた」
「……むぅ」
授業を聞くだけで理解できる人には、出来ない人の気持ちなど分からないのだろう。
あくびをしつつ外に出ていく信の後ろ姿に、私はベーッと舌を出した。
信はそのまま、駆け足で学校に向かった。
私は数学のプリントを手に、どうしようかとうなだれた。
九月になると思い出すこの話(長編)
昔から頭の中にいたキャラクターを供養がごとく表に出しました
キャラが日常生活を送ったり、ぐだぐだと喋るシーンか好きなので、異世界にいくまでがホント長い
暇潰しになれば幸いです