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横浜山手の宝石魔術師  作者: 桜居 かのん
第三章 君を守る檻とルビー
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自分が行きたくても行けず結局高卒だったのはその後とても苦労したからって言って後押しをしてくれ、私は公立の高校に進学しました。


父もまた再就職したとは言え給与はやはり厳しい額だったようで、私の高校はバイトが出来なかったので家事を私が担当して、母もパートを掛け持ちしている日々が続きそろそろ私が三年生になるときのことでした」



朱音は手に持っていたハンカチを強く握る。



「母が仕事先で倒れ、そのまま運ばれた病院で亡くなりました。


医師からは死因は心筋梗塞だが、あれだけの仕事をしていればその前に前兆があったはずだがと聞かれて、母は風邪気味だったとかそんな話しを私がしても父は一切口を開きませんでした。


無理も無いんです、ずっと私と母には顔もまともに会わさず会話もしていませんでしたから。


母の葬式でも周囲は母が必死に働いていたことを知っているので、何か言われるのが嫌だったのか最低限顔を出した後、父は家に籠もってしまいました。


母の死から父はおかしくなったと思います。


私に高校卒業までは待ってやるから卒業したらすぐに結婚しろと言ってきました。


お前の面倒なんて見たくない、と言っていましたが、母と声がよく似ている私とは一緒に居たくないのだとその頃は思っていました。


父が集めてきた見合いは、相手の顔も性格も二の次。


優先されるのは有名企業や収入でした。


そこで気が付いたんです、父は私に母と同じ苦労を味合わせたくは無いのかもしれない、と」



まるでタイミングを見計らったかのようにアレクが珍しく氷の入ってないロンググラスに入った冷茶を朱音の前に置き、思わず朱音が顔を上げてアレクを見ればその漆黒の瞳と目はいつもより優しく思え、小さな声でありがとうと言うとアレクは会釈をして部屋を出て行った。


朱音は目の前の飲みやすい温度の冷茶をぐっと飲めば、静かな優しさが伝わってくるようだ。


冬真は少し表情が落ち着いた朱音を確認して自分用の氷の入った冷茶に口をつける。




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