表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
横浜山手の宝石魔術師  作者: 桜居 かのん
第三章 君を守る檻とルビー
91/199

16




そう言って朱音の方を向けば、朱音は目に涙を溜めていた。


さっきまで色々な事が嫌で仕方が無かったのに、いつも笑みを浮かべて優しく微笑んでいる印象しか無い冬真があんな表情で話したことを聞いてしまったせいなのか、朱音の心が酷く苦しい。


冬真はポケットから真っ白で綺麗なハンカチを出すと、そっと朱音の瞳から少しだけ流れた頬の涙を拭う。


しかし朱音は目の前の冬真に視線を合わすこと無く俯いてしまい、冬真はハンカチを持ったまま心配そうにそんな朱音に落ち着いた声で話しかける。



「すみません、とても不愉快だったでしょう。


部屋に戻りますか?それとも何か飲み物を持ってきましょうか?」



冬真が心から心配しているのがわかる。


それが余計に朱音の涙を溢れさせた。



「・・・・・・嫌なら、突き飛ばして構いませんから」



真面目な声でそう言うと、冬真は朱音のすぐ横に座り朱音の肩を引き寄せ、ゆっくりと頭に手を伸ばし朱音の黒髪を撫でる。


朱音は驚き身を固くしたが、段々と何か押さえていたものが溢れ流れ出てきたのか、声を押し殺したように泣き出した朱音を冬真はただ優しく髪を撫でていた。




しばらくして落ち着いてきたのか顔を上げようとした朱音に冬真がハンカチを差し出すと、頷いてそれを受け取り顔に当てる。



「あと、で、洗って帰し、ます」



泣いてまだ呼吸が苦しいのか、途切れ途切れになりながらそんなことを言うと、



「あの」



身体を起こし座り直した朱音はそう声を出し、また俯いた。



「私の母が亡くなったことは、お話ししましたよね」



「えぇ、高校生の時ご病気でと」



「違うんです」



朱音は俯いたままで、冬真は何も答えずに疲れ切ったようにも見える朱音の横顔を見つめる。



「母がなくなった本当の理由は過労死です。


父が、その、私が中学の時リストラにあってなんとか転職したんですが給料が凄く減ったそうで、母はパートに出ました。


でもすぐに転職した会社も辞めてしまって、一時期は母のパート収入だけに頼ることもありました。


私は高校の進学も諦めようかと思いましたが、母が大学まで女の子でも行きなさいと。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ