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「詳しくホロスコープを見るならパソコンを使う方が便利なのですが、今日は簡易ですのでこちらの本で行います。
では、生年月日を教えていただけますか?」
不思議そうにパソコンを見つめていることに気がついた冬子が説明をしながら質問をする。
「1995年7月2日です」
本を開こうとした冬子の手が止まる。
朱音はそれに気がついたが、すぐに冬子は何事もないようにページをめくり、あるページを広げた。
占星術師がよく使う『天文歴』という本は、ある程度の期間の天体位置が記載されている。
占星術とは天体、星の位置を元にその人の運命を占う方法で、古くは紀元前から存在し、今も世界において色々な方法に分かれつつも親しまれているものだ。
本来は対象者の生年月日、生まれた時間、場所等をもとに現代ならパソコンを使って出生時のホロスコープを作り、細かく読み解くものである。
だが簡易で行う場合や、天体の移動などはこちらのほうがわかりやすいこともあり、占い師にとって身近なこの本は冬子も日頃から使っているもので、今回もそれを開いていた。
興味深そうに朱音は見ていたが、とある日に赤のペンでチェックがしてあったのに気が付いた。
テーブルを挟んでいるためどの日にちにチェックをしているかまではわからなかったが。
「朱音さんの太陽星座は蟹座ですが、月星座は獅子座ですね、魅力的な組み合わせです」
「月星座、ですか?」
太陽星座というのはいつも星占いで見る星座だということはわかるが、月星座という言葉を朱音は初めて聞いた。