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「どんなお仕事をされているんですか?」
「占いと、カウンセリングのようなものですね」
朱音が困惑したような顔をしたせいか、女神は少し笑い、
「そんなことを言われると怪しく思うのは無理も無いことです」
「いえ、私占い大好きです!」
朱音が慌ててそう言うと、女神はきょとんとしたあと、くすっと笑った。
可愛い。くすっと笑うと美しさに可愛らしさまで追加されるなんてずるい。
こんな美しい存在と生で対峙したことの無い朱音のとしては、新たな発見ばかりだ。
「簡単でよければ占いましょうか?」
朱音がそんなことを思っているとは知らず、女神は声をかける。
「良いんですか?!あ、えっとお値段は」
思わず反射的に言ってしまったが、チェーン店のような占いでもそれなりにするのに、こういう個人のとこでやっているのはとても高額な場合が多い。
慌てて朱音が遠慮がちに質問すれば、女神は心配させないように優しく微笑む。
「もちろん無料です。こちらがご迷惑おかけしたのですから。
あぁ、ご挨拶が遅れてしまいました」
女神は未だに朱音を見上げながら、艶やかな唇が動く。
「私の名前は、吉野冬子と申します。
おそらく外国人と思われていますが、イギリス人と日本人のハーフなんですよ。
お名前を伺っても?」
「こちらこそご挨拶が遅れて失礼しました。
相良朱音と言います。
治療して頂きありがとうございました」
「いえ、こちらがご迷惑をおかけしたのですから。
では朱音さん、もし足が大丈夫でしたらあちらに移動しましょうか」
冬子はそう言うと、部屋の真ん中あたりにあるテーブルに視線を向けた。
暖炉を背にし冬子が、テーブルを挟み入口側に朱音が座る。
年季の入った色のアンティークなテーブルの脚が、えんじ色のテーブルクロスから覗く。
椅子もテーブルとセットのようで、焦げ茶の木の椅子は曲線的なデザインがほどこされ、格式高い印象を受ける。
冬子は使い古された辞書のような本を手前に置く。
横にはノートパソコンが畳んで置いてあり、何に使うのだろうかと朱音は疑問に思っていた。