表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
横浜山手の宝石魔術師  作者: 桜居 かのん
第二章 パライバトルマリンと人造石の輝き
71/199

28



理恵子はぼんやりあのイベントで歌ったときのことを思い出していたが、そんなに客が喜んでいるとは思えなかった。


それとも感じ取れなかったのだろうか。


沢山客がいたわけでも、拍手喝采があったわけでもない。


子供連れも何組か見かけたが、あまり反応を気にはしなかった。


何だかあの宝石の一件から宝石ばかりに囚われて、自分の本来すべきことと、感じなくてはいけないことが疎かになっていたのではないだろうか。


未だに目の前の男に腹は立っている。


なのに、歌で見返してやりたいと湧き上がるその気持ちは、憑き物が落ちたように清々しかった。



「いいわよ」



ずっと黙っていた理恵子が浮かべた笑みは、自嘲なのか、諦めなのか、朱音にはわからない。



「アドバイスを受け入れるわ」



ただ最初来たときとは全く違う表情をしている理恵子に、朱音は驚く。


朱音からすれば、冬真は喧嘩を時々売っていたり、よくわからないことを提案しているように思えて不安に思い、こんなにもあの理恵子が表情も態度も変わるとは想像できなかった。



「さて、どういたしましょう」



だが冬真は理恵子の気持ちがわかっているように優しく微笑む。



「モアッサナイトでネックレスを作りたいの。


ここで作ってくれるの?」



「いえこちらでは。ですので僕が信頼するお店を紹介しましょう。


そちらは既にアクセサリーとして作っていますのでルースから始めるより割安ですし、それらが気に入らなければルースからある程度なら作成してくれますよ」



「ねぇ、そこ、紹介割引ってある?」



そう言ってにやっと笑った理恵子に、



「僕の紹介だと、裏からとっておきの品を持ってきてくれます」



そう冬真が返せば、理恵子は大きな笑い声を上げる。


その笑い声はとても明るく、声が通ってこの洋館に広がった気がした。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ