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『まつげ長いなぁ。肌なんて凄くきめが細かい。
一応化粧してるよね?素材が良いとこんなに違うんだ。
大抵の男性はイチコロだろうなぁ、こんなに美しい人』
自分の足に女神が手当てをしてくれている様子を見ながら、彼女の瞳の色に気が付いた。
深い灰色なのだが、彼女が動くたびにその瞳は少し光って見える。
それも灰色では無い、何か他の色に。
『まるでラブラドライトみたい』
あのロンドンの王子様にもらった石は少し不思議な光を放つが、目の前にいる女神の瞳はそれを彷彿とさせた。
その石は普通に見れば灰色なのに、動かすと周りの光をまるで全て味方につけたかのように美しい上品な深い青へと変化する。
深いグレーの色が、上品で美しいブルーに変化するのを見るのが朱音は大好きだ。
まるで普通の人が美しい人に変わるのか、それともそれを隠して普通の人のように振る舞っているかのような、そんな二面性があるようにも思えるあのラブラドライトは、とても魅力的な石なのだ。
ふと朱音が間仕切りが開けられた部屋を見回すと、不思議な物が色々とあることに気がつく。
不思議な花や美しいアメジストの大きな原石、大きなテーブルの上には何か不思議な物が並んでいて、アロマがたかれているのか、何かの機械から水がコポコポと音を立てている。
この部屋がただの部屋では無いことがわかっても、ここで何をしているかはわからなかった。
「気になりますか?」
すぐ側から声がして朱音は慌ててそちらを向けば、見上げるように女神が微笑んでいる。
「ここは私の仕事場なんです」
少し部屋の方に目線を向けた後、女神は朱音を見る。