19
「もしもあのサファイアが本物だとして約10カラット近いと思います。
最高級品だとすれば約10カラットで安くても数百万しますし、そのネックレスを貸したという親戚は随分気前が良い方なのでしょうね」
「えっそんなに?!」
思わず横にいた朱音の方が声を上げてしまい、慌てて口の前を手で覆う。
「産地や品質、加工の有無等で値段はかなり変わりますのでだいたいの値段です。
ネックレスのデザインからして最近の物ではありませんから、少なくともマダガスカル産のサファイアでは無いでしょう」
「どういうこと?」
理恵子が声をかける。
「サファイアの有名な産地はいくつかあるのですが、現在の主産地はマダガスカルです。
マダガスカル産は1998年頃からの南部イラカカ村から産出したのをきっかけに次々と鉱山が発見されたのですが、このネックレスのデザインだともっと前でしょう。
なのでマダガスカル産であることは無いと考えました。」
冬真が答えると、理恵子は頷きながら聞いていた。
確かにネックレスのデザインは無駄にごつい感じで、スタイリッシュではなく、むしろアンティークの印象だ。
「さて、今回はジュエリーアドバイスということでご相談をお受けしましたので、金額は抜きにあれがサファイアだと仮定して同じ色味でそれを超える品となると、希少性、人気、そして華やか、というところから、こちらの宝石をお勧めします」
そう言って出したのはケースなのでは無く大きめのタブレットで、それを開いて理恵子に見せた。
「なに、これ・・・・・・」
思わず理恵子はそのタブレットを持ち上げ、食い入るように見る。
「パライバトルマリンです」
その画面に映っていたのは、見たことも無いようなネオンブルーの宝石だった。