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「さっきあんな態度を取っていたのって、どこまで彼女が冷静なのか確認するためですか?
気持ちが変わらないなら連絡を、なんて言ったのも?」
どうしても冬真が意味も無く人に冷たい態度を取るのことが信じられない。
まだあの洋館に住みだしてそんなには経っていないが、冬真は朱音が見る限り老若男女関係なく丁寧な対応をしていた。
考えてみれば今回も最初から断れば良いのに、条件付きとはいえ冬真は理恵子の話しに付き合った。
冬真には考えがあってわざとあんな態度を取った、朱音はそう思い前を向いたままの冬真をじっと見ていると、視線だけ朱音に向けてくすり、と笑う。
「いえいえ、僕は結構酷い男なんです」
何故か胸を張って言った冬真を見て、あまりのわざとらしさに朱音は笑いがこみ上げた。
「嘘ばっかり」
くすくすと朱音は思わず笑ってしまう。
「朱音さんは可愛いですね」
突然の言葉に一瞬ぽかんとしたが、笑っている冬真を見てただ複雑さが増すだけだ。
「絶対私のこと子供扱いしてますよね?」
「とんでもない、先日お刺身に間違ってわさびをつけたのに、気づかれないよう頑張って食べていましたし。涙目でしたけど」
「どういうところ見てるんですか!!」
横でしきりに怒っている朱音を見ながら、冬真は口元に笑みを浮かべる。
「疲れたでしょう?
アレクが手作りプリンを作っているそうなので晩ご飯前ですけど食べちゃいましょう、特別に」
「やっぱり子供扱いしてる」
プリンという単語に嬉しそうな顔をしたのに、今度は不満そうな顔で見上げた彼女に笑みを浮かべると、口をへの字にしている朱音を見て今度は冬真が吹き出した。
洋館まであと数分。
二人で笑い合いながらもう少し散歩したいという気持ちが沸いてくるけれど、朱音にはその感情が何を示しているのかはわからなかった。