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「あ、あったわ」
「見せて下さい」
スマートフォンを理恵子から受け取ると、冬真はどこかの稽古場で集まっている女性数名の写真を指で拡大する。
「この人のしているネックレスですね?」
「そう。よくわかったわね」
十名近くいる女性はほとんどがネックレスをして大きな石のものをつけている人達も何人かいたのに、冬真はすぐにその相手をすぐに見つけ、しばらく画像を見ていた。
「彼女はこの宝石をどうやって手に入れたと言ってましたか?」
「確か親戚が舞台が成功するお守りとしてつけて行きなさいと言われて借りたとか言ってたかしら」
「なるほど」
「ねぇ、あなたさっきから色々わかったような顔してるわよね?」
「はは、まさか」
理恵子は苛立ったように言ったのに、冬真はいったん顔を上げ笑顔を見せるとまたスマートフォンに視線を落とした。
トントン、とノックする音で朱音が席を立ちドアを開けると、女性スタッフが申し訳なさそうな表情で立っていた。
「すみません、もう閉館準備に入るとのことで」
「わかりました、すぐに出ます」
冬真が笑顔で答えスタッフが顔を赤らめながらドアを閉めると、理恵子は早く進めて欲しそうな顔をしている。
「時間になってしまいました。
少しの時間話しを聞くだけ、ということをお話しして承知されましたのでキリが良いですしここで終了にしましょう」
「そんな!ちゃんと最後まで対応してくれないと!」
「無料なのに僕はまだ貴女に対応するのですか?」
理恵子が冬真のその言葉にひるむ。
冬真は笑みを浮かべているが、静かに怒っているような気がして朱音は冷や汗が出そうだ。
唇を噛みしめている理恵子に、
「そうですね。
僕の仕事の一つにジュエリーアドバイスというのがありまして、お客様からこういう洋服にどういった宝石が似合うのかというような疑問にお答えしているものなのですが、そちらでよろしければお受けしますよ?
費用は三十分につき七千円税抜きです」
そう声をかけた。