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横浜山手の宝石魔術師  作者: 桜居 かのん
第二章 パライバトルマリンと人造石の輝き
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5




「ファンです!!」



突然大きな声で興奮気味に健人の横に行ってその本を両手で差し出し、健人は驚きながらもその本に視線を落とした。



「これ、俺が最初に出したイラストの画集じゃねーか」



「はい!初版本です!


以前本の表紙で見かけて以来のファンなんです!


てっきり女性が描かれているものと。


KEITOさんは一切表に出てきませんし、プロフィールも謎なので」



「別に性別を隠してたんじゃないが、絵の雰囲気からか気が付くと女と間違えられているようになっちまった。


元々表に出る気は無かったし、まぁイラストレーターとしてはそれで良いかと思ってな。


だから直接ファンと会うことはまず無いから嬉しいよ」



そう言うと、健人は笑顔を浮かべる。


健人の絵は優しげな色合いが多く、漫画っぽくもなく、かといっていかにも絵画という訳でも無い絶妙な雰囲気が男女問わず人気で、本の表紙からポスターまで幅広く手がけている売れっ子だ。



「これならお詫びが出来そうですね」



冬真の言葉に健人も頷く。



「そうだな。


どうする?サインいるか?」



「いります!これにお願いします!」



気が付けばアレクが健人のすぐ後ろにいて黒のサインペンを差し出し、画集の表紙を開くと余白に慣れたようにサインをした。



「後で好きな絵をやるよ。


データだからな、好きなサイズで印刷してやっから。


そこに名前入れてやろうか?」



「光栄です!!」



サインの終わった本を大切そうに抱えて朱音は未だ興奮気味に返事をすると、健人は目を細めて大きな手を伸ばし、わしわしと朱音の頭を撫でた。



「よろしくな、朱音」



「はい、健人さん!」



「健人にはすぐ名前呼ぶんですね、ずるいな」



少し寂しそうに冬真が言って、朱音が慌てるように取り繕うのを健人は内心驚いていた。


確かにこの家に住まわせた人間を冬真はとても大切にするが、あまり女性をからかったりすることは無い。


住人への扱いでは無い、何かもっと違う感じを受けて、じっと健人は冬真を見る。


その視線に気が付いた冬真は、少しだけ笑みを浮かべた。



『俺の違和感は気のせいじゃ無いのか』



へぇ、と健人は面白そうに冬真を見たが特に動じることも無く、また朱音と話しているのを健人は温かい目で見ていた。





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