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「僕の親戚でも無く、ごく普通の方ですよ。
僕の不注意で本業の仕事中に朱音さんを危ない目に遭わせてしまいまして。
そして急に部屋を探さないといけないという話を聞いてあの部屋をお貸ししたんです」
「へぇ、お前が魔術師だって気づかれるようなミスするなんて珍しいな」
「朱音さんには本当に怖い思いをさせてしまいました」
「いえいえ、もう気にしないで下さいって!」
未だに気にしている冬真に、慌てて朱音が止めた。
彼も冬真が魔術師と知っている、ここの住人はきっと冬真が慎重に選んでいるのだろうと思うと、朱音は妙に嬉しさが沸いてしまう。
「なぁ、嬢ちゃんいくつ?」
「23歳です」
「あー、なら男の裸くらいみたことあるだろうし、最初が俺じゃ無くて良かった」
あっはっはと笑いながら唐突に健人からそんなことを言われた朱音はぽかんとし、段々と顔が赤くなって思わず俯く。顔だけじゃ無く耳まで赤い。
「え」
それを見た健人が今度は一言だけ発し、横に座っていた冬真が健人の脇腹に鋭い肘鉄を食らわせた。
いくら肉体を鍛えていても痛いものは痛い。
健人が脇腹を押さえつつちらりと横を見れば、冬真が心底軽蔑するまなざしを矢のように浴びせている。
「あーそれは、実に申し訳なかった」
朱音に交際経験があるかはわからないが少なくとも最後までの経験が無いことを知り、健人が隣からの鋭い視線に気が付いてそちらを向けば、真顔で、もっと謝れとの圧力を醸し出している冬真に、これはいつものこいつなりの気遣いなのか、それとも他に何かあるのかが引っかかった。
「本当に悪かった。
そうだな、何か詫びが出来ると良いんだが」
「いえ、そんなことは」
「俺はただの絵描きだからなぁ。
もし絵が好きならやるんだが」
困ったように頭をかいている健人の隣で冬真が、
「健人はかなり有名な画家というかイラストレーターなんですよ。
KEITOってご存じないですか?」
と話すと朱音は目を見開き、突然立ち上がると走ってリビングを出て行った。
冬真と健人が顔を見合わせていると、パタパタとスリッパの走る音がして朱音が現れた。胸にとある本を抱えて。




