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横浜山手の宝石魔術師  作者: 桜居 かのん
第一章 ラブラドライトの紡ぐ出逢い
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しばらく歩いて左側から目に飛び込んできたのは、美しい薔薇の咲き乱れる庭。


入口のアーチにはツタの薔薇が、まるでたわわな白い実を結んでいるかのように沢山の花で埋め尽くしている。


そこから奥に向かう小道の両端には黄色や赤など大輪の薔薇が、庭一面を豪華に彩っている。


庭の後ろには、濃いグリーンの壁で出来た洋館があった。


正面にある観音開きの白いドアから出てきたのは背の高い外国人の女性。


ゆるくウェーブのかかった長い金色の髪、足までつきそうな紺色のロングワンピース、首元にはシフォンの花柄スカーフがふわりと巻いてあり、鈍くグレーに光るブリキのじょうろを傾け、ドア近くにある薔薇の鉢植えに水を注いでいる。


朱音はその姿に目を奪われた。


歩道からは横顔しか見られないが、美しい外国人の女性が薔薇に囲まれている姿は、金の豪華な額縁に飾られた絵のようで、思わず息をのむ。


チリリリン!



「わっ!」



歩道にいた朱音の真横をベルを鳴らして自転車が猛スピードで過ぎ去り、朱音は思わず塀にぶつかった。



「痛っ」



足に走った痛みに目線を下げれば、塀に絡まっていた薔薇のトゲで膝下あたりを切ったらしく、ストッキングは破れ赤い血がだらりとたれてきていた。


あぁ、だめだ、本当に厄日決定。


いくらポジティブシンキングにしようとも、怪我までしてはさすがに凹む。


慌ててしゃがみ込み鞄からティッシュをだそうとしたその時、朱音の身体に影が出来る。


顔を上げると、あの外国人の女性が驚いた表情で朱音を見下ろしていた。



『女神だ』



背後に日の光をまとうその女性は、恐ろしいほどに整った顔立ちで、まるで中世ヨーロッパ絵画に出てくる女神のように朱音は見えた。


なんとなく周囲に小さな天使も見える気がする。


疲れたよパトラッシュ。


もしかして自分は実は事故に巻き込まれ、天に召される瞬間なのだろうか。




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