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「えっと、占いをされる方の総称ですか?」
「いえ。魔術を扱う者のことを指します。
信じて頂けないのは無理もないのですが」
苦笑いしながら冬真は続ける。
「以前お話ししました通り僕は日本人の父とイギリス人の母のハーフですが、母が魔術師の家系で、僕も小さな頃からそういう世界と触れあっていたせいか、魔術師という道を選びました。
まぁそれだとこのご時世怪しまれますので、表向きは宝石を扱う仕事をしています。
占星術やカウンセリングは本業と密接していますので必要に応じてですね」
「宝石を扱うって、ジュエリーショップを経営されているとかですか?」
「いえ、宝石の仲介業とでもいいましょうか。
魔術では宝石、私達の用語では『ジェム』と呼びますが、ジェムは非常にオーソドックスな品でして、魔術師が要望する宝石を仕入れたり、表向きは宝石業と名乗っていますので一般の方々へ販売することもあります。
こちらではルース、原石から研磨された状態のものを言いますが、そのルースと装飾品や魔術儀式用に加工された品を取り扱っています」
「それでラブラドライトのことも詳しかったんですね」
「占星術も宝石も、大元をたどれば魔術にいきつくんです。
魔術は現代にもごく普通に息づいているものなんですよ」
冬真は優しい笑みでそう答えたが、朱音からすればなんとも理解できるようで出来ない話だ。
だが昨夜のおかしな経験を考えれば、嘘だとは思えない。
まずは気になっていることを朱音は口にした。
「あの、今まで何故女装されていたんですか?
あ!いえ、セクシャリティな問題でしたらすみません、お答えしなくても」
慌てたように言った朱音を冬真は不思議そうにしたあと、口元に手を当ててくすくすと笑っている。
「お客様の情報に関わることですので詳しいことはお話しできませんが、魔術師としての仕事を受けていまして解決のためにあのような姿になるしか無く。
無様な格好をお見せして恥ずかしい限りです」
少し困ったように視線を朱音からそらした冬真を見て、なんてイケメンなんだろう、と思うと同時に、あの冬子がいなくなったのだと理解する。