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言われたドアの前で待っていれば、出てきたのは朱音を家まで送ってくれた真っ黒な長髪を後ろで束ねたあの男だった。
昨日と変わらずきっちりと黒のスーツ姿で、背は高いのだが細身なせいなのかあまり体型だけなら迫力は感じない、が、上から無表情で見下ろされ、別の圧力を感じて怖さを感じる。
「こちらへ」
その男に言われ屋敷に足を踏み入れると思わずこっそりと朱音は見回す。
入った場所すぐに靴を脱ぐための広めの玄関があり、用意されたスリッパに履き替えもうひとつ現れた上半分が磨りガラスのドアをその男が開ければ、二階まで吹き抜けのホールが現れた。
目の前には階段が右側から二階に向けてあり、木の手すりは時代を感じさせる色の濃さだ。
このロビーからも二階の通路が見えどうやらドアがあるのはわかっても部屋数はわからず、一階には目の前や左右にいくつかのドアが見える。
男は階段を上がる場所の左側にある、玄関から入ってほぼ正面にあるドアをあけ、朱音に入るよう視線を向けた。
ドアを開けている無表情の男にビクつきながら中に入ってみると、そこはリビングだった。
木の肘掛けのついた数人がけの大きなソファーと、木製の広いローテーブル、奥にはサンルーフのような場所があり、そこにも大きな一人がけ用のチェア、天井からつるされたチューリップ型のランプからは温かなオレンジ色が部屋を包んで、部屋を落ち着かせる。
男は朱音をソファーに座らせると、無表情のまましばらくお待ちくださいと言って部屋を出て行った。
朱音は部屋の中が気になって、失礼だと思いつつもせめて座って見ますので!と訳のわからない言い訳をしつつ部屋を見回す。
ここはプライベートな空間のようで、木製の古い本棚に外国の本なのか古い本がずらりと並び、壁には大きなテレビが取り付けられアンティークと近代的なものがあるのに不思議と馴染んでいる。