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「冬子さんの家か、あの車の中か。
どちらにしろあの部屋で見せた時はあったんだから、そうとしか考えられない」
連絡を、と思い、考えてみたら連絡先なんて知らなければ、タクシーじゃないからレシートも無いわけで車に連絡など出来ない。
方法はただ一つ、またあの洋館に行くことのみ。
朱音は大切なネックレスを無くしたというのに思わず笑みを浮かべてしまった。
「もう一度冬子さんに会えるかも!」
もう二度と行くことは無いと思ったあの洋館へ、そして冬子さんに会えるかもしれない。
どう考えてもあのネックレスがまた彼女に会うチャンスを作ってくれたのだ。
朱音はさっきまで凹んでいたことが嘘のように口元に笑みを浮かべ、風呂場に向かった。
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翌週の金曜日の夜朱音はまたあの洋館の前につき、前の歩道をうろうろとしていた。
本当はすぐにでも取りに行きたかったが仕事が立て込み、週末の今日なんとか来ることが出来た。
時間は夜の八時を過ぎていて、住宅街のこの場所は街灯だけがぽつぽつとあるだけで静まりかえっていて、洋館を見ればあの部屋には明かりがついている。
うろうろするのは不審者と間違われそうで朱音はわざとらしく散歩を装ったりしていたがさすがに限界だ。
周囲をキョロキョロしながら今は白いかどうかもよく見えないバラのアーチを通り、二カ所ある入り口のベルをどちらを鳴らすべきなのか悩み、やはり先日出入りした方が正しいのだとそのドアの前に行くと、朱音は洋館にしては不釣り合いに思えるプラスチックのベルのマークのついたボタンを押す。
ビーというなんとも味気ない音が奥の方からかすかに聞こえた。
しばらくその場に立っていたが足音も聞こえない。
広そうな洋館だ、もしかしたら他の場所にいて聞こえなかったのかもしれないと、少し迷った後、再度ベルを鳴らしてみた。




