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「・・・・・・多分、僕は自分の知らないところで朱音さんが危険にさらされるのが嫌なんでしょうね」
困ったように冬真が笑って朱音は戸惑いながら冬真を見る。
「僕はとても身勝手な人間です。朱音さんが思うような優しい人間では無いですが、ここには健人もアレクもいます。
住んでからは僕では無く健人の言うことを信じていれば大丈夫ですから戻ってきませんか?」
自分の感覚も常識も基本魔術師としてのもので、おそらく一般人とは乖離している。
あの人の言うように、人として何か欠けていることも自覚している。
だから自分では無く、大好きなKEITOであり慕っている健人の名前を出せば戻ってくるだろうと冬真は考えたが、朱音は悲しそうな顔をした。
「私は冬真さんのことも信じています。
だってラブラドライトのネックレスを持っているように言ってくれて、ラピスラズリのブローチもきっとジェムだったんですよね?
知らない人についていかないように注意してくれたのについていったのは私です、私が悪いんです」
「ですから朱音さんは何も悪くないと」
「いえ私のせいです」
「朱音さんは人が良すぎます、僕に問題が」
「冬真さんの言いつけを守らなかった私が悪いんです」
「違います、それは」
ムキになっている朱音を落ち着かせるため最初冬真はゆっくりと答えていたはずが段々早口になってしまい、朱音は急に吹き出した。
逆に冬真はそんな朱音を見てため息をつく。
冬真という素敵な男性は、自分が思うより不器用な人なのかもしれない。
元々ここに戻りたかった、そしてまた今ここにいて、これからもいて良いと冬真が言ってるなら素直になっても良いだろうか。
朱音は自分から一歩踏み出す。
「・・・・・・本当に戻ってきても良いですか?」
「もちろんです」
「すぐ追い出されたりしませんか?」
そう尋ねた朱音に冬真はすぐに返事を返せなかった。
「次はこんな勝手なことさせねぇよ」
突然ドアが開き、健人がそう言いながら部屋に入ってくると仁王立ちして腕を組んだ。