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「彼らが言うように僕はとても魔術師らしいと思っています。
ですから朱音さん」
朱音はこちらを向くように言われているのをわかりながら、下を向いて必死にそれにあらがう。
「僕はきっとまた、貴女に同じ事をしてしまうでしょう」
カウントダウンが始まっている。朱音はその怖さに必死に耐えていた。
「だからここに住むことはもうやめたほうが良い」
思わず朱音は唇を噛みしめる。
突き放さないで、お願いだからここにいさせてと訴えたいのに声を出せない。
「・・・・・・以前住んでいたアパートと同じ家賃の部屋を、知り合いのオーナーに用意してもらいました。
朱音さんの会社からも近いですし、セキュリティもしっかりとしたマンションです。
僕が勝手にお願いしていることです、引っ越し費用など全て持ちますので安心して下さい」
ずっと冬真の声は何の動揺も無く、穏やかで、それが朱音には一切拒否することは出来ないのだと理解させる。
でもどうしても言いたかった。
「・・・・・・冬真さんは、私を守りたいんですね?」
朱音はやっと隣にいる冬真を見た。最後の望みにすがるかのように。
冬真はそんな朱音の瞳を受け止めて、
「いえ、違います。
言ったでしょう?朱音さんは人を信じすぎると。
貴女が自分を守るためにそう思いたいのなら構いません。
でもそうでは無いのです。僕は、貴女が思うような人間じゃ無い」
静かに、冷静に、朱音に言い聞かせるように冬真が言い切って、朱音の表情が歪み俯く。
そんな朱音を見て、泣き出すだろうと冬真は思い目を伏せた。
しばらく朱音は俯いていたが、
「わかりました」
そういうと顔を上げて冬真を見た朱音は、涙を溜めてすらいなかった。