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横浜山手の宝石魔術師  作者: 桜居 かのん
第五章 偽りのラピスラズリ
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二人の下にあった魔方陣の描かれた羊皮紙が燃えながら空中に消え、床にはトミーと手を血まみれにした朱音が苦しそうな表情で目を閉じ倒れている。



「朱音さんを助けるよう命じた覚えはありませんよ」



朱音の側に座る黒い犬にそう言うが、犬はじっと朱音を見たままで冬真はため息をついて朱音の側に行く。



「・・・・・・何故こんな無茶なことを」



膝をつき、冬真は小さな声で呼びかけるが朱音の目は開かない。


朱音の顔は青白く、冬真は自分のポケットから白いハンカチを取り出すと朱音の手に丁寧に巻き付ける。


後ろから勢いよくドアの開く大きな音がしてそちらを冬真が向けば、健人が目を見開き立っていた。



「朱音さんを例の病院へ運んで下さい。


僕はまだやらなければならない事があるので」



「朱音は大丈夫なのか?」



「えぇ。ただ手の怪我が酷いようなのでそちらの方が気になります」



健人は赤く染まったハンカチの巻かれている朱音の手を見て奥歯を噛みしめると、そっと朱音を抱き上げる。



「そのじーさんは?」



朱音を抱きかかえている健人が聞くと、冬真は首を振る。



「彼はまだ自由には出来ません。


だから早く朱音さんをここから運び出して下さい」



「・・・・・・わかった」



健人はそういうと足早に部屋を出て、外から車のエンジン音が遠ざかった。



「ありがとうございます」



そう呼びかけると、ドアの後ろから年老いた女が出てきた。


70にも80歳にも見えそうで顔には深い皺が刻まれた小柄な老婆だが、その目は強い光を宿している。



「まぁ一応最低限の目的は達成できたからね。


あの娘については目をつむってやるさ」



そう言ってやれやれと古びた椅子をひきずって座った。



「しかし監視していた割にあっさり逃げられましたが」



冷たい青い目が年老いた女を鋭く見れば、女はふぅと息を吐く。




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