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『まさか娘と生年月日が同じで、降霊術の依り代として適性のある娘が娘の亡くなった日の前に見つかるとは。
これも神の導きだろうな。娘の無念さがそうさせたんだ。
降霊術は非常に危険と言うけれど、冬真ほどの魔術師なら君もきっと無事に済むだろう。
娘のためにしばらく我慢しておくれ』
朱音はずっと英語でトミーが自分に語りかけるのに、その愛おしそうな、気遣うような声と表情に、自分が今から起きることが余計に恐ろしいことなのではと顔が強ばる。
『しかしラピスラズリのブローチを目印にして、そしてそれが詠唱中の邪魔にならないように壊しておくなんて連絡をくれたけれど、そこまで娘を思っていてくれたと思うと私は嬉しいよ。
今日のためにこのお嬢さんを逃げないように洋館に住まわせて君を信頼させるようにする、本当に君は根っからの魔術師だね』
はは、と笑いながらトミーは立ち上がって冬真に話しかけるけれど、冬真の表情は全く変わらずただ目の前のトミーを見ているだけ。
トミーはそんな冬真を見て肩をすくめると、テーブルの上に置いた猫の血が入った瓶と筆を持ち、奥の広い場所に置かれた羊の皮の上に書かれた円の中に進む。
『この下書きの上になぞったあと彼女を置けば良いんだね?
さすがにこの歳だとここまで連れてくるだけでも腰が痛くなってしまったから後で手伝っておくれ』
そういうとトミーは人が一人余裕で入るような円の中に進み、しゃがみながら既に羊皮紙の上に書かれた古代文字に沿い筆を血にひたらせゆっくりとなぞりだす。
だが突然円に書かれた下書きが赤く染まりだし、異様な光を走らせ出した。