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「冬真さんは私に沢山のことをしてくれて、それは全て本当のことです。
健人さんは表面だけ見る人じゃないですし、冬真さんが好きだから一緒にいるんだと思うんです。
私は迷惑かけてばかりで何もお役に立ててませんが、冬真さんが楽しそうに宝石の話しをするのを聞くのが好きですし、初めて魔術師としての冬真さんを見たときもその、格好いいなって思って。
私は、冬真さんの表面だけを見てるつもりなんて無いです。
冬真さんは優しい人です」
冬真は朱音が目をそらさずしっかりとした声と表情で自分を見ていることに驚いていた。
朱音は自分の意思を持つようで、脆くて弱い、と思っていたのに。
「冬真さん、以前私に素直に行動した方が良いって言ってくれましたよね?
私はまだこの洋館で皆さんと一緒に過ごしたいんです。
だから、突き放さないで下さい」
その朱音の言葉とは裏腹に、気弱な雰囲気などみじんも無い。
突き放すなと言いながら、朱音から冬真の手をしっかりと握っているようにすら思えるほど強い意志。
冬真は、何故さっきあのような事を言ってしまったのか自分でもわからないが、朱音の芯の強さを垣間見た気がして不思議と安心していた。
冬真は少しして笑みを浮かべる。
「朱音さんが変な人に騙されるのではと心配だったのですが、その様子だと大丈夫そうですね。
えぇそうです、朱音さんはもっと自分を大切にすべきです。
とりあえず、お守りはしっかり持つこと、遅い時間に帰るときは気をつけること、知らない人にはついていかない、良いですね?」
「はい・・・・・・」
冬真は子供に言い聞かせるように指を一つずつ増やしながら笑顔で念押しする。
さっきのおかしな言葉は単に自分へのお説教の延長で話したことだとわかり、朱音は叱られた生徒のようにしゅんとしながら答えた。