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興味深く頷きながら朱音は聞いていたが、ついさっき聞こうとして忘れていたことをやっと思い出した。
「急にそんなことを言うなんて、何か危ない事が起きているんですか?
冬真さんは大丈夫ですか?」
「心配させてしまってすみません。まだ何も起きていませんし僕も大丈夫です。
ただ僕が少々忙しくなりそうなのと、やはり朱音さんが心配なので。
知らない人に簡単についていっては駄目ですよ?」
子供を心配するように言う冬真に、朱音は口を尖らせる。
「子供じゃ無いんですから大丈夫ですよ」
「飲み会の時、男性から簡単に誘い出されていたようですが」
にっこりと言われ、朱音はすっかり忘れていたことを指摘され目が泳ぐ。
「朱音さんのその人を疑わないところは魅力の一つだと思いますが、人を疑うという事だって時には必要です。
覚えていますか?僕が以前、実は酷い男なのだと言ったことを」
冬真が唐突にそんなことを言いはじめイギリス館からの帰り道言われたことを思い出したが、でも、と朱音は声を出したのに冬真はその先を言わせないように首を振る。
「人というものは表面をいくらでも偽ることが出来ます。
おそらく健人が僕に注意するように言ったでしょう?
健人はむやみに嘘をつくような人間ではありません。
そういう正直な人間の意見を、朱音さんはしっかり受け止めるようにして下さい」
そう言うと冬真は顔を奥にある窓の方に向け、朱音は冬真が急に何を言い出しているのかわからなかった。
飲み会の時の事を注意していたはずが冬真自身の話になって朱音は戸惑いつつも、こんなに優しくしてくれるのに何故冬真は自分を遠ざけたいのか、朱音はその冬真の言葉を聞いて落ち込むよりも不思議と頭も心も冷静になってきた。
「冬真さん、何だか変です」
朱音のしっかりとした声に、冬真が窓の外を見ていた顔を朱音の方に向けた。