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「私の言うように進んで下さい」
ただそれだけ言ったアレクに、うん、と朱音は答え、
「今から私の後ろについてきて」
と絵里と真央に言うと、二人が頷き急いで人混みを進む。
大通りに出ると見慣れた黒い車が走ってきて朱音の目の前でブレーキをかけると、運転席の窓が開く。
「朱音様」
アレクの顔を見た途端朱音安心して膝が抜けそうになるのを必死にこらえ、後部座席のドアを開け二人を乗せてドアを閉めると、朱音は助手席に乗り込みすぐに車は走り出した。
「朱音様と学生二名を無事保護しました。
・・・・・・はい、承知いたしました」
アレクは右耳にあるブルートゥースイヤホンで冬真からの指示に答えた。
朱音は正面を見たまま、今さっきまで自分に起きたことを思い返し怖さに身震いしそうになる。
本当は手も震えているし、顔もおそらく強ばっているのを自覚していた朱音は、振り返って後部座席の二人に声をかける余裕が無かった。
車は坂を上がり、気が付けばいつものメイン通りを走ってとある学校の入り口について守衛とアレクは簡単に言葉を交わすと門が動き、車は中に入る。
学校の入り口には女性が三名ほど立ってアレクの車を待っていて、車がその前に停まりアレクが降りようとしたので朱音もシートベルトをはずそうとしたらアレクに手で止められた。
「外に出ないで下さい」
「あのね、あの子達、冬真さんに」
何とか二人がインカローズのブレスレットを欲しがった理由を伝えようと朱音はしたのだが、アレクは視線をそらし何も言わずに運転席を降りた。