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ラブラドライトには自分に合う人や良い縁を結びやすいと以前ネットで見たことがある。
冬子と出会えたことは、このネックレスのおかげだ。
でもきっとあの時と同じように、出逢いはこの時だけで後に続くことは無いのだろう。
だとしても、きっと彼女との今日の思い出は自分にとって大切な物になる、朱音にはそう思えるだけで嬉しかった。
「そういえば、何故ここの前を通られていたんですか?」
ふとした冬子の質問に、実は、と苦笑いを浮かべ見合いに疲れプリンを洋館に食べに来たが閉店して食べられず、どこかカフェが無いか探していたのだと恥ずかしそうに話すと、冬子が笑顔を浮かべ手をたたいた。
「なんて偶然!実は先ほどプリンを頂いたんです。
同居人の分もと沢山頂いたのですが帰ってくるのは早くて明日ですし、賞味期限は今日までなのにさすがに食べきれないと困っていて。
よろしければ一緒に食べませんか?」
「え、でも同居人さんが戻られたりは?
明日くらいなら味は持つんじゃ無いですか?」
「いえ、当分帰ってきませんし、手作りなので早めに食べた方が良いんです。
お時間はまだ大丈夫ですか?」
「あ、はい」
「では決まりですね!
紅茶も準備しますからここで待っていてください」
「私も何か手伝います!」
にこにこと椅子から立ち上がった冬子を見て、慌てて朱音も立ち上がる。
何だかさっきからしてもらってばっかりで、その上デザートまで出てくるなんてさすがに贅沢すぎる気がして落ち着かない。
年齢的にも仕事場では一番動く立場であり、朱音はしてもらうことにあまり慣れていないせいか戸惑ってしまう。
そんな朱音に少し目を細めて冬子は優しく声をかける。
「朱音さんはお客様です。それも私がご迷惑をおかけしたんです。
ホストである私が準備するのは当然のことなのですよ?
それに手伝ってくれる者もいるのでご心配なく」
そういうとウィンクし笑顔を浮かべ、部屋を出て行った。