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「魔術師秘書として、朱音さんにお願いしたいことがあります」
8月も終わりそうな日曜日、冬真から時間がとれないかと言われ、朝食後リビングで冬真と朱音が向かい合う。
「何か私に出来ることなら」
朱音はやっと冬真の魔術師としての活躍が側で見られるとわくわくしてしまうのを悟られないよう冷静に答えたが、表情から冬真にはしっかり朱音の本音がわかって内心苦笑いを浮かべる。
「この近くには有名女子学校が二校あるのですが、そちらから私達の団体に相談がありました」
朱音は女子学校と魔術師の団体が普通に話していることに驚いてしまう。
「ここに住んでいる人の中にはイギリスと関わる人も多く、それなりの立場の方々は大抵、魔術師の団体とコネクションがあるんです。
日本なら不可思議なことがあれば神社仏閣へ相談となるのでしょうが、この地域だと私達の所属する団体の窓口に相談して、その一部は僕が担当しています」
魔術結社と言えば朱音が心配しそうなのを見越し、冬真はあえて団体という言葉にし、朱音はその説明だけで納得しているようだった。
「ここで、先に朱音さんに確認を取らせて頂きたいのです」
話しが続くと思っていた朱音は急にそんなことを言われ戸惑った。
「どうしても今回は女性に手伝って頂きたくお願いをしていますが、平日休んで頂くことも一日はあると思いますし、あくまで僕が動けないときのサポートをお願いしたいのです。
最初の時のような危険な目には遭わせません。
もちろんそれだけ拘束しますし魔術師秘書という立場で動いて頂く以上、それなりの謝礼をお支払いします。
なので、詳しい話しをする前に勝手なのですが引き受けて頂けるか確認させて下さい。
もちろん受けて頂いても途中で嫌になれば辞めて頂いて構いません」
詳しい話しをしてしまえば朱音をその時点で巻き込むことになる。
冬真としては朱音の最終的な意思を確認してから話を進めたかった。