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「私、学生時代色々あって、そんな中でKEITOさんの絵はとても心を癒やしてくれたんです。
こんな素敵な絵を描いて、人を感動させられるなんてどんなに凄い人なのだろうと」
「それが俺でがっかりしただろ?」
「まさか!私だけこんな凄い話を聞けて他のファンの皆さんに申し訳ないくらいです!
それに、昔から思っていたんです、KEITOさんから見たこの世界はとても幸せで綺麗なんだろうなって。
きっと優しい人だからそう見えるのかな、一度その目を取り替えてもらえないかな、なんて思ったり」
「なんだそりゃ」
健人は笑って答えているが、朱音がどんなに自分の絵をよりどころにし、そしてうらやんでいながら、ただ純粋に好きだと言う気持ちを伝えたいという真っ直ぐな気持ちが痛いほど伝わってくる。
こんな気持ちを直接伝えてもらって、嬉しくない訳がない。
「朱音は本当に良い子だなぁ、お兄ちゃんは嬉しいよ」
おどけてそう言った健人に朱音はきょとんとすると、少し複雑そうな顔をした。
「嘘なんてついてないです、本当に好きなんです」
「うんうん、お兄ちゃんも朱音が好きだよ」
テーブルを超えてわしわしと朱音の頭を撫でながらそう言えば、より複雑そうな顔をした朱音に健人は思いきり笑う。
朱音と一度ゆっくり話して冬真のことについて釘を刺しておこうと思ったが、何だか自分が励まされてしまったようだ。
「もちろんここはお兄ちゃんのおごりだから、デザートも好きなだけ頼んで良いぞ?」
「・・・・・・後でチョコパフェ食べたいです」
不満そうな顔をしながらしっかり希望を言った朱音に、健人は目を細めて笑った。
後は冬真次第かな。
煮物を頬張っている朱音を見ながら、健人は出来るだけ二人が幸せな未来を迎えられることを祈った。