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横浜山手の宝石魔術師  作者: 桜居 かのん
第四章 恋と罠のインカローズ
119/199

7


「冬真はあくまで朱音の大家。


俺が朱音にセクハラばかりするって毎度注意を受けてるよ、小舅みたく」



「なるほどねー」



置いてけぼり状態の朱音に気が付いた店員が笑う。



「橘とは水泳選手時代からの付き合いなんだ」



「水泳選手?」



「とりあえず注文取ってくれよ、腹減った」



朱音が不思議そうに尋ねると健人が耐えかねたように言い、店員は笑って注文を取って出て行った。




「まぁ別に隠していたわけじゃ無いんだが、昔は水泳ばかりやってたんだよ。


それなりに結果も出してたんだけどな。


身体壊して引退しても結局泳ぐことからは完全に離れられなくて、こうやってジムや元町公園のプールで泳いでる」



健人は苦笑いしながら初めて自分の昔話を始めた。


いかにもスポーツマンにしか見えない健人がイラストレーターをして今は売れっ子というのが朱音はなんとなく違和感を感じていたが、初めてその理由に触れられた気がした。



「昔から絵も描かれていたんですか?」



ちょうど飲み物が運ばれてきて、健人はビールのジョッキを取ってゴクゴクと飲むと、ぷは、と息を吐く。



「絵は趣味としてちょこちょこ描いてはいたが、学校の美術の授業以外で学んだことはないし、男が絵を描いてる、それも日頃は水泳選手としてそれなりにちやほやされてたからイメージを悪くしたく無いし恥ずかしいから誰にも言ってなかった。


で、大学もスポーツ推薦で入ったのにその途中で身体壊して、現実を突きつけられたんだよ、水泳取ったら何も他に俺には無いじゃないかって」



健人は特に悲壮感も無くただのおしゃべりのように話していて、KEITOの大ファンからすればあの優しげな絵は幸せな日々を送っている人だからこそ生まれた作品だと思っていたが、多くの苦悩を抱えてできあがった物だったのだと知り朱音の心は苦しい。


少しだけ特製フルーツジュースを飲んだ朱音は、じっと続きを待つ。




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