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横浜山手の宝石魔術師  作者: 桜居 かのん
第四章 恋と罠のインカローズ
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今年の夏も変わらず暑さは厳しいのだが、この洋館の中は割と涼しい。


だがそれは一階だけで、二階で仕事をしている健人はクーラーが無ければパソコンと俺が死ぬ、と深刻そうな顔をしていた。


この洋館は高台にあるせいもあるのか緑の多い裏庭から一階には風が通って、冬真も二階では無くリビングや仕事部屋で仕事をしているようだが、いつも長袖でシャツの第一ボタンを外すくらいで一切汗をかいていない。


それに比べ健人はいつも通り夏の正装であるタンクトップに短パンで朱音の前に出てきて、朱音は目のやり場に困っているのに気が付いた冬真がいさめたが、健人の辛そうな表情と朱音の説得もあり健人は今後も夏の正装で過ごすことを許された。



自室から出てきた朱音は、階段を降りてきた健人に気が付く。


朱音も前のアパートではTシャツ短パンで過ごしていたがここでは恥ずかしいので、つるんとしたノースリーブのロングワンピースに薄手のカーディガンを羽織っていて、健人はTシャツに短パン、そして大きめの布製バッグを肩にかけている。



「おでかけですか?」



「ジムで一泳ぎしてくるわ」



ギリギリ仕事を終えた健人は、首に手を当て大きく動かしながら疲れたようにそう言った。


朱音は自分なら疲れたら絶対寝るのになぁ、と思いながら近くに来た健人を見上げる。



「どうだ、一緒に来るか?」



「私泳げなくて」



「教えてやるぞ?」



「いえ、遠慮しておきます」



じりじり面白そうに詰め寄っていく健人に、朱音は焦った顔でじわじわと身体を後ろにのけぞらせていく。


健人がニヤッとした後突然しゃがんだかと思ったら、朱音のロングワンピースの裾をまくしあげ、左足のふくらはぎを揉んだ。



「全然筋肉ついてないのにガチガチじゃねーか。


デスクワークの弊害だな、運動しろ、運動」



そういって見上げれば、朱音は呆然とした顔で固まっている。


あまりに流れるような健人の行動に、悲鳴を上げることも出来なかった。



「・・・・・・健人」



静かな声に健人と朱音がそちらを向けば、冬真がきっちりとしたスリーピースを着て笑みを浮かべている。


笑みを浮かべているが、目は一切笑っていない。


隣にいるアレクが無言で何かを差し出し、冬真はそれを見ずに左手で受け取ると口元に持ってくる。


それはてのひらより小さいメダルのようなもので、図形が刻まれていた。




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