小説家になろうに初めて作品を投稿したあなたへ読んでもらいたい
小説家になろうは面白いなー。一日中でも読んでられるぜ。
俺も転生したいわ!トラックカモン!
…………
もうハイファンタジーもめぼしい作品はほとんど読み切ったな。
何か目新しいアイデアの作品はないものか……
は!? ないなら自分で書いたらいいんじゃね!
俺天才か。そういえばたまにこんなスキルあったらマジ無双なんだよなーって思ったりするんだよな。俺国語5だったしいけるだろ!もしかして書籍化とかされちゃう!?
やべーよ、印税ヤバイ、マジヤバイ。なんてったって仕事になっちゃう。就職活動しなくていいじゃん!俺やっぱ天才。
カタカタカタカタカタカタカタ……
出来た……! 我ながら初めて書いたにしては粗削りながら才能をキラリとかんじさせる作品に仕上がったぜ。
んじゃぽちっとな。
ワクワク。感想とかこないかなー。明日になったら日間ランキング1位になってたりして。
「ちょっと失礼するよ」
誰!? ていうかどっから入ってきたの。
「夏場とはいえ戸締りはしっかりすることをお勧めするよ」
ここ7階なんですけど!?
「……あのー、どちら様ですか。警察呼んでいいですか。あ、うちテレビないんでNHKの受信料は払えませんよ」
「私のことを”なろうコンサル”と呼ぶね。様子を見てたら気になってしまってね」
そんな仕事あんのかよ。大学の就職課教えてくれなかったぞ。もしや……
「もしかして書籍化の打診ですか!? 俺ヤバイな!」
「君のポジティブなところは素晴らしいと思うけど、ちょっと違うね」
「んじゃ何しに来たんですか。やっぱり警察呼んでいいですか。もしくは立花さん」
「少しはNHKから離れたらどうだい。まあ平たく言うと君の作品がよりいいものになるお手伝いさ」
「そんなことしてくれるんすか! やっぱなろうはスゲーな! アフターサービス行き届きすぎだろ」
「君案外受け入れるの早いね……。まあ僕もそっちのが助かるけど」
「んでどうですか! 僕の作品。 何百万部くらいいけそうですかね! 映画化とアニメ化はどっちが先そうですか!」
「どれどれちょっと拝見するよ……」
じーっ…………
「まあまあかな」
「なんすかその微妙な反応は! もうちょっと讃えていんですよ! 素直になってくださいよ!」
「ちょっとこれを見てみたまえよ」
「なになに、アクセス解析? こんなんついてるんですか。やっぱなろうは便利だなー、えーと20? もう20人も見てくれてるってことですか! 投稿してから10分も経ってないのに」
「まあ20人ということはないんだけどね。ページビューだからね。目次を開いた回数もカウントされるよ」
「そうなんすか? でも目次と1話目で10人は見てくれてるってことですか。このペースだと明日の朝には数百人はいきそうですね」
「じゃあちょっと1時間後にでも見てみようか。それまでお茶でも頂こうか。僕はアールグレイが好きなんだけど」
「結構図々しいっすね。まあ一応お客様なんでいいですよ」
……1時間経過
「それじゃあ見てみようか」
「よっしゃ! 100人くらいはいってんじゃないですか!……あれ、さっきとほとんど変わってない。なんで!?」
「おそらく君の作品はなろうのトップページの”更新された連載小説”というとこらからアクセスした人がほとんどだろうね。ちなみに表示されるのは10作品までだから10分間くらいはそこに表示されていたんじゃないかな。そこから消えたら見つけてくれる人がいなくなってしまったというわけさ」
「そんな仕組みになってんですねー。あブックマークが1件ついてる」
「ブックマークを付けてくれている人は続きも読んでみようって人だね」
「せっかく頑張って書いたのに……1人しかいないなんて切ないっす」
「そうとも限らない」
「どういうことっすか?」
「君初めてなろうの小説読んだ時、ユーザー登録してたかい」
「いやー、自分読み専だったんですけど最初はスマホの方でお気に入り登録してましたね……ということは!」
「そう、なろうで小説を読む人が必ずユーザ―登録してるとは限らないわけだ。もしかして読んでくれた人の中には君と同じようにスマホやパソコンのブラウザでお気に入り登録した人もいるかもしれないね」
「ユーザー登録してない人って多いんですかねー?」
「僕の体感に過ぎないけど登録してない人がほとんどじゃないかな。結構読む人でも5人に1人くらいしか登録してないと思うよ」
「ほえー、そうなんすね」
「まあ次回の話を投稿したらわかるんじゃないかな。ほらぼけっとしてないで続きを書きなよ」
カキカキカキ……
カタカタカタ……
「おっしゃできた! 今度は100人くらい行くだろ!」
「話聞いてた?……」
また今度も投稿して少し時間置いてからアクセス解析を見てみる。
「今度はさっきの2倍くらいありますわ! さすが俺天才」
「さっきも言ったけどそれは1ページ開いたら1だから目次から全部見たらさっきより増えるよ」
「んじゃさっきとあんまり変わんないつー話ですか」
「そうとも限らない」
「どういうことっすか」
「それはまた明日のお昼にでも説明しよう。あ、それまで更新しなくていいからね」
「言われなくてももうクタクタで書く気起きませんわー」
「それでは僕は失礼するよ」
「やっぱ窓からなんすね……」
◇
「こんにちは」
「いつの間に!?」
「風呂場の窓は換気が終わったら施錠をお勧めするよ。枠は結構簡単に外せるからね」
「警察呼んでいいですか」
「そんなことよりアクセス解析を見てみようか」
「はーい」
カチカチ
「あ、なんか投稿から時間が経っても何時間かごとにちょこちょこ読まれてるみたいですね。ていうかブックマークが増えてますよ。やった」
「よかったじゃないか。見てもらってわかった通り更1話目を読んでブクマしなかった人も続きが更新されていないかなとチェックしに来る人も中にはいるのさ。おそらく更新するたびにこういう人は増えていくと思うよ」
「マジすか! じゃあいつかは絶対なろう全ユーザーに読んでもらえるじゃないですか!」
「それは流石に無理」
「さっきと言ってること違うじゃないですか! 嘘つき」
「君なろうで最初に読んだ小説ってなに?」
「転スラっすね」
「それって新着から探した、わけじゃないよねえ?」
「まあ総合ランキングからですねえ」
「ランキングに載ってない作品っていつ頃から読み始めた?」
「日間はとりあえず全部読みきってからですかね? あれ?」
「そういうこと。新着更新欄から作品を探す人は結構限られてる。だからたとえ一生更新し続けても全員に読まれるということは不可能だね」
「マジですかー。どうしたらもっと読んでもらえるんですか」
「うーん、とりあえず面白いもの書いたらいいんじゃない?」
「感想も評価ももらえないのに面白いかどうかとかわからなくないですか」
「知り合いにでも見せたら?」
「無理!」
「まあそりゃそうだね。それじゃあおもしろいと思われてるかどうかはわからないけど続きを読んでみたいと思われてるかどうかは教えてあげようか?」
「そんなんわかるんですか!?」
「だいたいだけどね。じゃあ一週間後に来るからそれまで毎日一話は更新しておいてね」
「頑張りマッス!」
◇
一週間後……
ピーンポーン
誰だろ? NHKかな。
「はーい」
「やあ」
「ふつうに入って来られるじゃないですか。いつもそうして下さいよ」
「防犯意識が高まったようで喜ばしいよ」
「んでどうやったら、続きが読みたいと思われてるのかわかるんですか」
「それはこの部分別ユニークアクセスというのを使う」
「あー、話ごとに読んでくれた人がわかるやつですか」
「ほんとはね、これエクセルかなんかにまとめておいた方がいいんだけどね。まあ簡単に説明するよ。1話から2話でちょっと減ってるだろ?」
「ここが一番ガクッと減ってますねー」
「最初の3行くらいで会わないと思って読むのやめちゃう人もいるからねえ。それ考えたら君のは書き出しにはそれなりに成功してるんじゃないかな」
「とりあえず1行目から死体転がしといたのが良かったんすかね?」
「ミステリーでもないのになんでその発想に至ったのかは甚だ疑問だけど。興味はひけたみたいだね」
「で、僕の作品はどう思われてるんですか」
「うーん、パッと見た感じだと」
「感じだと?」
「普通だね」
「普通っすか……」
「初めてならこんなもんじゃない?この更新した日の最新話のユニークアクセス数を見てごらんよ。徐々にだけど増えているだろ。これは着実に読者数が増えている証拠だよ」
「そうなんすねー」
「このことは君の作品が、新着から探す読者層、という市場に対してそれなりに受け入れられていることを示すね。さてさらに読者数を増やす方法だけど……」
「何したらいいんですか?」
「日間ランキング100位以内に入ることかな?」
「常識的に考えて無理だろ」
「おや、君が常識を語ってくれるなんて嬉しいね。でも残念でもあるかな」
「僕も段々現実が見えて来ましたよ」
「大変よろしい。で凡才の君はこの先も君は書き続けるかい?」
「当然っすよ。僕はこれ最高におもしれーって思ってるんで。それに読んでくれてる人結構いるんでしょ?そりゃ有名作品よりは少ないかもしれないですけどね」
「エクセレント。それでこそだよ。そんな君にアドバイスだ。君の作品はハイファンタジーだね」
「ですね。やっぱ剣と魔法っすよ」
「日間ランキングの100位のポイントをみたまえ」
「80……すね……無理でしょ」
「なんでそう思うの?」
「だって一回更新してもブクマ1増えるか増えないかですよ。更新40回分じゃないですか80ポイントって」
「じゃあ1日に40回更新したらいいんじゃない?」
「それは……キツイっすね」
「君はもっと自分の作品をもっと沢山の人に読んでもらいたいんだろ?」
「それはそうですけど……」
「更新がきついというなら後書きにクレクレでも書いたらいい」
「それは嫌かなあ」
「君はわがままだなあ」
「」
「ごめんなさいっす」
「最後に聞くけど、君はこの作品完結させる気ある?」
「当然っすよ。エタらせるとかありえないっすわ。僕もこの子達が満足する結末まで書きたいっす」
「それが聞きたかったんだ。初めて会った時の君を思い出すよ。それじゃあ僕の役目は終わったみたいだからもうさようならかな」
「え、もうお別れっすか」
「僕も忙しいからね」
「なろうコンサルって多忙なんすね」
「そんな仕事あるわけないじゃないか。君は単純だなあ」
「じゃああなたは一体……」
「僕かい? 僕は……」
その後に続いた言葉は……
「君の作品に最初にブックマークをつけたものかな。完結、楽しみにしているよ」
読み専からの切なる願い