3 ビーフジャーキー
「そうだ、スカウトの手付けでビーフジャーキー持ってきたよ」
腰のパックから取りだしてアガタに渡す。
「うふぉーーー。一生ついて行きます。あにきぃ!」
アガタは一瞬でビーフジャーキーを口に含み、もむもむ噛みしめた。
「うめぇ、もうダメだ。しょっぱくてあまくてにくじるだ」
「そうだろう。最高級品を食料庫からちょろまかしてきたからな」
一枚、また一枚、ビーフジャーキーを渡す。
紙を吸い込む装置のように肉は口へ滑り込み、アガタに咀嚼されてゆく。
「それじゃ、行くか。家族にあいさつは?」
「うん、いってくる。ただいま」
すぐ近くの家に駆け込んで、アガタは戻ってきた。
「でもさぁ、モンスター倒すのに役立たないよ。雑用とかすればいい?」
「全部頼みたい」
「ふま!!」
「僕はなにもできないからなぁ」
「待ってよ!兄貴! 狩って、さばいて、小分けして、焼いてを全部?」
「まあね」
「無理だよ、狩りについてけなくて、ここでしょんぼりしてたのに」
「肉食ったろ」
「食べたけど」
「じゃあ問題ない、かもしれない。とりあえず手近なモンスター倒しに行こうか」
「じゃなくて」
肉を食べてステータスが上がってたんだから、ビーフジャーキーで強くなっただろう、とラインガルスは気楽に思っていた。
「わかってる。倉庫も欲しいよな、冷やせるの。肉質を浄化するのに魔払いも雇いたいし」
「ほしいけれども」
「よし、来る途中でホルモンラビット見かけたから探すぞー」
「うぃぃーーー、ホルモン、ホルモン」
ホルモンラビット食べたさに、アガタはつぶらな瞳を輝かせて、ラインガルスへついて走り出した。