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宇宙のカラー  作者: 湯長 森一郎
第一章 龍の影
25/26

25 ダークハイロード

 ベーコンを焼く匂いが漂っている。

 公園にある小山の傾斜を子供たちが板で滑り降りている。

 それを眺めているリリネを見つけた。

 向こうもラインガルスに気づいた。


「これから夕食なんだ、一緒にどうかな」ラインガルスが言った。

「いいですね」


 リリネが沈む夕日のように微笑んだ。


「未熟だと思い知らされました」

「まだ若いんだからしかたない」


 リリネは不思議そうにラインガルスを見て


「薔薇の英雄を知りませんか」と、言った。

「記憶がなくて」

「そうなんですね。私はずっと眠っていました。氷山の洞窟でずっと。目覚めたら知っている人は誰もいませんでした。

 それで私を不老の英雄だと誤解している人が多くて」


 ラインガルスはうなずいた。


「私は強い力を扱えるようになっていました。防御技能の研鑽を積み、独旅が認められ、今は各王国へあいさつをしています」

「英雄は自動で守られるのに防御の練習?」

「ふんだんにある守護の力を攻めに回せるのです」


「さみしくはなかったの、目が覚めて」

「あなたはどうでしたか」

「アガタやチートンを見つけたとき、体の周りが明るくて懐かしい気持ちがした」

「私は、友人の子孫で顔立ちが似ていたことや手紙が残っていたのが、悲しくてうれしかったです」


 道の向こうから行商人が大きな背嚢を背負って歩いてきた。

 下を向き、くたびれた中年だが、ダークパワーにあふれている。

 知覚できるのは自分だけなのか、ラインガルスがリリネの横顔を見る、見つめ返される。

 なだらかに上がった眉と、輝く瞳。


「リリネ、あの人、闇超級騎士ダークハイロード


 リリネが力場をふくらませる。

 行商人の姿をした闇超級騎士も、すぐさま力場を展開した。

 リリネは薔薇の剣を肩の高さにかかげ、斬る。

 衝撃波が闇超級騎士の力場に跳ね上げられ、夕空へ消えてゆく。

 闇超級騎士が視界を確保するためにフードを外す。表情のない模造顔が剥がれ落ちる。

 額から鼻までを広く被うゴーグル、豊富な髭で口元は隠れている。

「よく見破った」かすれた声。

 闇超級騎士が《ダークプラズマ》を発し、うねるヘビのように高熱が流体状に襲ってくる。

 リリネが左手をかかげ、空中へ透き通る小盾を作り、ダークプラズマに当てる。

 激しい爆発。

 人々の叫び。

 その一瞬で両者は死角を狙い、接近、右手で握った薔薇の剣でリリネは闇超級騎士の肩を貫いていた。

 闇超級騎士は剣を引き抜く動きで後ろへ飛びつつ、無事な手でダークプラズマをまっすぐに叩きつける。

 リリネは盾を作り、下がる。


 再び爆発。


「腕、変化へんげしろ」


 闇超級騎士の傷腕が力場を吸い込み、千切れ、濡れたオオガラスとなって襲いかかる。

 盾をかわし、リリネに体当たりをしかけ、くちばしで首をえぐろうとする。

 リリネは地面を蹴って、一気に空へと上がる。

 後ろから追ってきた闇超級騎士が黒剣を投擲する。連携してオオガラスが斜めにつっこんでくる。

 空中に生み出した盾を蹴り反転、勢いに乗ったまま黒剣を自らの剣ではじき、リリネは闇超級騎士へと大盾を叩きつける。

 闇超級騎士が墜落した。

 衝突した地面は力場と干渉し吹き飛ぶ、土砂で視界が煙る。

 深い傷を負った闇超級騎士は力場を収め退いた。

 オオガラスも消えていた。


「無事ですか」リリネが言った。

「なんだかすごい戦闘だったなあ」伏せていたラインガルスが起きて「おいしいご飯を食べて気楽に過ごしたいだけなのに」と、ぼやく。

「巻き込んでしまいました」


 リリネが謝る。


「どうかな、チートンがローチウルフの群れを倒した報復かもしれない」

「そうです、早く宿へ戻らなくては」

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