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宇宙のカラー  作者: 湯長 森一郎
第一章 龍の影

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23 リリネの願い

 ローチウルフとゴブリング討伐は、リリネがいることで査定官にスムーズに認められた。

 護衛の馬車はローチウルフの死体を積んで街へ戻ってゆく。

 マルミダチョウはブレントモーズに驚いて遠くへ逃げ去ってしまい、ラインガルスたちも街へ戻った。


 魔導人形マジックマタを手に入れるため、ヴァインとラインガルスが準備の相談をしているとアガタがやってきて


「そこってお肉ある?」と聞いた。

「谷間の岩場だから保存食の持ち込みだね」ヴァインが言った。

「それならポンゴルさんのとこに行っていい?お肉食べ放題なんだって」

「アガタ、一緒に行かないか。予想外の出来事があるかもしれない」ラインガルスが言った。

「ううん、いい。あにきぃ、どうもありがとう」


 アガタは宿を出て行った。出会ったときと同じあっさりした別れだった。

 欲望にまみれたアガタ、離脱。


「やっぱりなあ」ラインガルスが言った。


 アガタにとってタージラの街は、お肉あふれる夢の国。


「ポンゴルのクランは悪くはないけど、いいのか」

「まだ一ヶ月くらいのつきあいだからしかたない。無理につれていくより他のクランを経験するのもいいだろう」ラインガルスが苦笑した。「たぶん、どこでもここと同じくらい肉が食べられると誤解してる」

「今日は歓迎で大盤振る舞いだとしても、毎日、食費に金貨一枚払うところはないぞ」ヴァインが言った。

「予約しておいた丸焼きは容器へ小分けにして持って行くか」

「了解」


 ヴァインを雇ったおかげで旅にでる用意が楽になった。

 今までヴァインは母親が病気で、家を長く開けることができなかったために日帰りできる狩士の雑用係を仕事にしていた。

 母親は亡くなり、ヴァインはわずかな借金を返し終わり、これからどうするか迷っているところでラインガルスに雇われた。


「まだ生きていてほしかった気持ちはあっても、みんな墓に入るのさ」と、ヴァインが買い物に出かけた。


 ルティは明日迎えが来る、旅へ出るのはラインガルス、ヴァイン、チートンになった。


「ラインガルスだけ?」ルティが部屋へ入ってきた。

「チートン先生は奥で寝てる」

「そっか、あのさ、いったん帰るじゃない」

「ああ」

「実家で許可がでたらクランメンバーにしてくれない?」

「うーん、質問。食事の時間がたのしみでよく食べるほうか」

「イエス」

「ならいい、明日から旅に出てくる。戻ってきたら歓迎する」

「やったー」


 リリネがドア越しに声をかけてきた。


「話があるのですが、お時間は取れるでしょうか」

「いいよ」


 ルティがドアを開けた。


闇超級騎士ダークハイロード対策に超級騎士ハイロードを招聘しました。調査能力も高い精鋭です」

「ありがとう」

「あなたたちは何者なのですか」リリネが問いかける。「英雄よりもはるかに強い存在はドラゴンしか知られていません」

「チートン先生からは何も聞いてない」

「ではあなたは」

「自分の記憶はなくて予言の書だけをおぼえている」

「予言の書とはこれですか」


 リリネが羊皮紙を雑に束ねた本を取り出す。ラインガルスが読んでみると自分の記憶と似通った知識が断片的に記されていた。

 アイギスの標についての描写が多い。

 本として形になった予言書が出回ることで、ラインガルスが知っているゲーム進行が先取りされている。


「これは、数年前に討った闇超級騎士ダークハイロードが持っていました。あなたは私たちの敵ではありませんか」

「だいじょうぶ、キャンプしたいだけの気楽なクランでしかない」ラインガルスが断言した。「チートン先生は呪いが治ったら数年は昼寝をして暮らしたいから護衛をしてくれる契約になってる」

「他の予言書によれば、英雄が加護を失う時代が来るそうです」


 第九殲滅知性の危機を乗り越えた『小災厄』が終わり、中盤に入るとたしかに英雄は力を失う。


「そう記憶している」

「では、チートン様に私を鍛えてもらえないでしょうか」

「予言書はたしかなものではないよ」

「それでも、備えをしておきたいのです。私の師はなにもできなかったことを悔やんでいました。私は、大切な人たちを守れない悲しみを抱えて後悔したくない」

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