22 吐き出されるゴブリン
人間側の最大戦力となる、アイギスの標より加護を受けた『英雄』をラインガルスはあまり知らない。
英雄は仲間にならず、戦況マップでアイコンだけ表示されていた。
顔だけ知ってる有名人。
ブレントモーズは地響きを立てて地面へ降りた。口を開き、泡に包まれた物体を吐き出す。
出てきたのはゴブリン。生物ではなく、木工細工に似た外見をした魔導人形が200体以上いる。
ゴブリンがカクついた動きで歩んでいる。
「人形がでてきたよ」
「これはまた、めんどくさい」ラインガルスがうなった。
これから先、主人公の戦力は魔導人形になるはずだった。
壊れてもすぐにリサイクルできて、消耗を気にせず戦線を押し上げられる軍団。
ゴブリンの魔導人形『ゴブリング』は最も弱く、手に入りやすい。
クローンと魔導人形を用意した闇超級騎士は異質な存在だ。
力場に頼った一騎当千の実力と、陰謀による人間関係の突き崩しが主流なはずなのに。
タージラの街が壊滅してしまうとモンスター肉の流通拠点がなくなってしまい、たのしい肉生活の質は激減してしまう。
とくに北の火山地帯からの肉はタージラにしか入ってこない。
ラインガルスが周囲を探ってもダークパワーは見えない。
「どうしました」
「闇超級騎士がどこかに潜んでいるかもしれない、リリネは見つけられる?」
「いいえ」
ブレントモーズが口を閉じて体を浮かび上がらせ、転回すると飛び去っていった。
「チートン様の戦い方を見せてもらっていいでしょうか」リリネが言った。
「それならチートン先生、なるべく粉々に、修理されないように」
チートンはマントの支えを解いて足を地面につける、ゴブリンたちが壊れた。
なんの前兆もなく、粉々になった。
「チートンがやったの?」ルティが言った。
効率良く土を通した。メモが上がる。
「リリネ、笑って」ラインガルスが言った。
「え?」
「舞台女優みたいに、ほら」
リリネが、ほーっほっほっほ、と小さく笑う。顔が赤くなり恥ずかしがっている。
ルティが「かわいい」と、にやついている。
「よし、これで英雄がやったと思うかもしれない」
「英雄は敵を倒して高笑いしないよ」
「そうか、それじゃ剣を素振りして」
「ええ?」
光沢のある赤い刀身を鞘から引き出したリリネが、自然な太刀筋で剣を振る。
「まだこのほうが慣れてる」と、リリネがつぶやく。
「すごいぞ薔薇の剣の姫がゴブリンを一掃しやがった」
狩士の護衛たちが大声で感嘆した。
胴部分は蔓色の緑、小手とブーツはレッドブロンズ、誰もが知る英雄が丘の上で薔薇の剣を振り下ろす。
皆が英雄の勇姿をたたえる。
ラインガルスとルティが、張り切って「すごい」「かっこいい」とほめる。
「私、泣きそうです」
さっそく飽きたラインガルスがチートンへ、魔導人形の重要さを話すと
キャンプに役立つ。
ラインガルスとアガタとチートンが焚き火を囲んで肉を焼いているイラスト付きのメモが上がる。
夜の見張りの問題が片づくなら、すぐにでもキャンプをはじめられる。
「そうだね、手に入れておこう」ラインガルスがうなずく。
「私はなにか役だったのですか」剣を収めたリリネが言った。
「おもしろそうだったから」と、ラインガルスが言った。
「闇超級騎士の注意を引きつけるのでは?」
「うん、違う。ごめん」リリネの目が怖かったラインガルスが謝った。
「わかるよー、かわいい子をかまいたくなっちゃう男子のやつだよね」ルティが言った。
そういうのでもなかったな、とラインガルスは思ったが、とりあえずうなずいておいた。




