2 肉の友
夜は静かで、バルコニーの寝椅子で横になり、まばゆい星空を眺めていた。
ラインガルスは両親から疎まれているようだった。
家族は皆、実家の帝都にいて、ラインガルスだけが半年、別荘暮らしをしている。
ラインガルスとして暮らした記憶はない。
たのみのゲーム知識は
「クリアしたんだっけ、してなかったかもしれない」
というくらいで詳細なことは、まずおぼえていない。
「もしかすると妄想を現実と混同しちゃってたらいやだな」
ラインガルスはアガタを探してみることにした。
最弱なのに肉補正で急速に強くなってゆくキャラクター。
唯一のイベントでは主人公にステーキを食べられて一ヶ月家出をして帰ってこなかった。
食べてしまったステーキを用意しておかないと、また家出を繰り返す、お気に入りのキャラだった。
「この湖から南の村にいたはず」
朝早く、オートミールとミルクの朝食を摂ってラインガルスは朝日と共に出発した。
湖の関所の番人はラインガルスの顔をおぼえていて、すんなり通れた。
彼は住人全員を記憶していて、顔をおぼえる特技で採用されたらしい。
なだらかな下り坂を歩く。
距離感がわからない。
今日中に村に着くんだろうか。
ちょっと散歩に、なんて言わずに、村までどれくらいか聞いておけばよかった。
背中の剣が重かったけれど慣れたらそうでもなくなった。
水筒からひと口、水を飲む。
昼を過ぎたあたりで村に着いた。
入り口にアガタがいた。
赤い巻き毛で、物欲しそうな目をして杭の上に座っている。
「アガターー」
ラインガルスは大声で呼んだ。
この世界で初めて知り合いに会ったうれしさは予想以上だった。
アガタは杭から降りて走ってきた。
「おにいさんだれー」
アガタが近寄ってきて、ラインガルスはアガタの頭をなでた。
髪の毛がつるっとして硬い。
「夢があるんだ。聞いてくれるか」
ラインガルスは話し始めた。
要約すれば、とにかくおいしい肉を食べたいよね、という話を、粘土をこねくりまわすように続けた。
アガタは、うっとりとして「すんばらしー」と、ため息をついた。
「でもぅ、狩りが下手ですから」
「いいんだ。これから強くなれば」
「そうですかー?」
「それに、毎日肉が食えるぞ」
「ふぁー」
「肉を目指さないか?」
「はいっ」
「ステーキと!勇気は!果てしない希望だろ!」
「お?おーー!」




