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宇宙のカラー  作者: 湯長 森一郎
第一章 龍の影
16/26

16 ルティの呪い

 宿の部屋に戻ると、ベッドに、ぽっちゃりしたピンク色の少年がいた。

 髪に呪い除けが付いている、イモムシの呪いが解けて人間の姿に戻っていた。


「ふぇぇぇーん」とラインガルスに抱きつき「さみしかったですよう、兄さま」と、顔をこすりつけてきた。


 ラインガルスに兄弟がいるのは湖の別荘で知っていたが、どうしてイモムシに。

 なつかれているようだ。たぶん弟な少年は「まだ眠いです。一緒に寝ましょう」とラインガルスの手をひいてベッドへ。腕枕をしてもらい、えへへ、うふふと不気味に笑い、すやー、と眠ってしまった。


 少年は裸で、おなかがぷにぷにしていて、香料付き石鹸のあまったるい香りがする。変な弟だけどかわいい。


「明日も早いから寝るか」

「おやすみー」


 ベッドに倒れ込むとアガタはすぐに眠ってしまった。


「着替えは明日でいいか。チートン先生、おやすみ」



 腕に乗っている頭が動いたはずみでラインガルスは目覚めた。

 少年の頭から腕を抜こうとして目を向けると、美しい少女と目があった。

 みずみずしい頬、愛らしい鼻、ハシバミ色の涼やかな瞳が挙動のおかしな動きをしている。


「誰?」

「し、知りませんョ」少女は精神が凍えた声で言った。

「髪に呪い除けが付いている。とりあえず確認したい、君はイモムシだった弟なのか」

「くっ、認めるしか、ないのかっ」血を吐くように少女は言った。

「よくわからないけど、甘えんぼうだな、寝てる間もやけに顔をこすりつけてきて猫みたいだった」

「ぐはっ」


 少女は精神に致命的なダメージを受けた。

 ラインガルスは様子をうかがっている。

 少女は逃げ出そうとベッドから滑り降りた。

 なんと少女は裸だった。


「ぎゃーーえろすぅーーーー」


 少女は叫び、掛け布団を体に巻いて、転んだ。


 シャワールームでラインガルスの予備の服を着て少女が戻ってきた。


「マホウデス、ノロイトマホウガマザッチャッテ、ショウネンノスガタニナッテイタノデス、ワタシハアナタノオトウトデモイモウトデモアリマセン」

「なるほど、呪いと魔法が混ざって混乱していたと」

「ソウデスネ」


 イモムシの時の記憶はあると言い、少女はお礼を言った。


「私はルティ、アウルクス家の者です」


 起きてきたアガタが「よかったねー」と言うと

「きゃーーー人食い」とルティが大声で「この子、私がイモムシだった時、あじみあじみって、こっそり私をかじった!」

「だいじょうぶ、皮がじょうぶだったから」

「皮が厚くなかったら食べられてたんじゃない!」


と、ルティはアガタを警戒してラインガルスの腕に抱きつき、それに自分で驚いて「わっ」と手を離した。

 ラインガルスは、少女は兄と仲が良いんだろう、と解釈して『あまえんぼうシスター』の称号を内心で贈った。


「いろいろ事情を聞きたいけど、狩りに行かないとなあ」

「狩り?行きたい!」

「家に帰らなくていいのか」

「ここの行政官に手紙を渡して迎えに来てもらうまで、ね、いいでしょ。魔法も弓も使えるよ」

「馬車から降りないならいい」

「わかった、オッケー」


 交渉というよりは、作戦行動に慣れた応対。


 冷えた空気を朝日が暖めてゆく。

 台車にチートンとルティを乗せ、ペゼットの倉庫へ向かう。

 建物の間を通るときに日が当たり、ルティの肩まで伸びた髪がきらめく。

 アガタはラインガルスの後ろを歩く、

 ラインガルスが振り返ると、持ち帰ったステーキを食べていた。


「あげないよ」


 アガタが数歩離れる。


「チーズケーキでいい、それと、今日は丸焼きを予約してる。食べられるのか」

「じゃあ、ちょとだけお肉もあげる」

「ルティ、食欲は」

「チーズケーキを、あれ、表面がこげてる」

「貴族はチーズケーキの中身だけ食べるのか」

「うん、あ、私が貴族だってわかってたの」

「アウルクス家が大貴族なのは知ってる」

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