14 タージラの街4
倉庫まで戻ると、ホッツが短笛を鳴らした。
奥からペゼットが「なんだ帰ったか」と、寝ぼけた様子で出てきた。
「シカ1、トリコカバ3」ホッツが報告する。
「ほんとうかよ、おい、なんだこのイモムシは」ペゼットが言う。
ラインガルスがイモムシを抱き上げて馬車から降りると、ペゼットがシートをめくって「傷もない、でかい、新鮮なうちにバラすんじゃあ!」と、興奮して出て行った。
「トリコカバじゃしかたない、これからすぐに解体か。夜中までごたつくな」ホッツが言った。
ピンクイモムシを運ぶ台車を借りて、ロコンコ亭の地図を書いてもらい
「明日の午前中に来てくれ、正式に契約しよう」と、ホッツに送り出されラインガルスたちは倉庫を出た。
取っていた宿で人間サイズのイモムシを見せると宿泊を断られた。
そうなると予想していたホッツの教えてくれた新しい宿へ、ラインガルスは台車を押してアガタは荷車を引いて行った。
大型の使役獣用の狩人宿では快く迎えられ、四人部屋を取り、イモムシをベッドへ寝かせて呪い除けをくっつける。
アガタが「はあ、おいしそぅ、でも非常食だね」と言った。
「これは中に人が入ってる」
「そうなんだ、ちょっと切り取って味見しなくてよかった」
泥虫ばかり食べていたアガタにはクリーム系のごちそうだった。
イモムシが激しく胴をくねくねさせている。
「ほら怒ってる」
「ごめんー」
そんなピンクイモムシを部屋に置いて鍵をかけ、食事にでかける。
厩舎では旅人たちが肉のかたまりを、大きいトラの使役獣に与えていた。
アガタが肉に引き寄せられてゆく「これから食事だから」襟をつかんで引っ張る。
「だからこそ、お腹がぺっこりしてるんだよー」
なんだあいつ、と珍しいものを観察するトラたちをあとにする。
タピリーニ通りのマルカンザ高層建築から道を数本横切り、広場に、ロコンコ亭のドアを押して入った。
「いらっしゃいませ」
元気な少女が案内してくれる。膝丈にリボンのついたボトムス、顔横に束ねた髪がかわいい。
壁の木版のメニューには、モンスター料理名が並んでいる。
「丸焼きがあるよ!」アガタが叫ぶ。
「予約って書いてあるだろ」
「よやくよやくぅー」
「ステーキあった」
ウサギ、シカ、イノシシ、クジャク。
「ウサギなのにヒレか」
「モンスターのおっきいウサギです。イノシシはレングボアでおいしいですよ」
「おすすめのステーキ盛り合わせは注文できる?」
「聞いてきますっ」
アガタはどれも食べたいのか、何度も何度もメニューの文字をたどっている。
「レングボアのいいとこをメインに盛り合わせできます。何人前にしますか?」
「5人前で」
「うちは1人前でも多いですよ、いいですか」
「たちむかってやるぜ!」
「チートン先生は?」
インゲンがいい、とメモをもらい、炭酸水とサラダを追加で注文する。
「トリコカバのステーキたべたい」アガタが言った。
サラダを持ってきた少女が「お値段が高級すぎて、うちでは扱ってないんです」と言った。
「持ち込んだら調理してくれると聞いたが」
「はい、持ち込みの調理もやってます」
「じゃあ、薄切り肉のおいしいのたべたい」
「ステーキ、食べ切れませんよ」
「はっ、そうだった」




