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宇宙のカラー  作者: 湯長 森一郎
序走
10/26

10 三枚のマント


 アガタの食いしん坊すぎる無警戒っぷりに驚き

「フェニックススタート」あわててラインガルスは命じる。


 アガタが着けたマント『フェニックスノヴァ』が魔法色の青に燃え上がった。

 炎は体を包み込み、アガタの折れた腕が戻る。

 地面をバウンドして止まったアガタから火が消える。気絶している、そして無傷。


『フェニックスノヴァ』は持ち主の傷を癒し、攻撃力を上げるマント。

 昨日、宿で使い方を教えていたら、持ち主しか命令できないはずなのにラインガルスにもできた。

 マントが体になじんでくれば『フェニックスノヴァ』は自動起動してくれる。そのつなぎで使ってみようと選択肢に加えていたら、さっそく役だった。


 リンガリザードはチートンを狙っていた。

 まるっこい豚めがけて、着実に這い進む。

 聖片のマントでかろやかに跳んだチートンは、かみつきをくぐり避け、マントを短く伸ばして潜り込み、頭突きを一撃。心臓を打ち抜いて終わった。


『聖片のマント』は、魔法緩和、衝撃緩和、マントをたわませて跳躍機動ができる。

 それをチートンは手足以上に扱えている。マントで物をつかみ、歩き、多方向へ自在に操り、呪いで動かない体のまま大トカゲを圧倒する。

 歩いていて石ころがあったから蹴ってみたくらいの気軽さだった。


「チートン先生はなんでもありなんだな」


 ラインガルスはアガタを回収して、リンガリザードに近づく。

 大きい。まるごとは荷車で運べそうにない。腕だけ持って行こうか?おいしいところはどこだろう。


 モンスターを解体するには、血抜き、魔法抜き、硬すぎる骨と肉の分離、肉を低温で貯蔵して柔らかにと、手間暇がかかる。

 肉が固いまま薄切りにして加工したりもするが

 この場で処理するには魔法抜きができないと、しびれがあってまずい、体に害もある。

 というわけで、モンスターに分類されるリンガリザードを倒しただけでは食べられない。

 解体所や専用のキャラバンへ依頼するしかない。


「うーん、どうすればいい」

 はい、わかりません。いったん休憩しよう。


 マントの練習をするチートンが高く飛び上がり、滑空している。楽しそうだ。

 毛布を重ね、寝心地良くして、アガタを寝かせる。


 じつは昨日、ラインガルスは、こっそりミートボンを隠していた。

『工匠のマント』は、とても耐久性のある収納マント。ちょっと便利な、背嚢3つぶんくらいの容量がある。


 昨日、ミートボンを食べまくりなアガタが、お腹がはちきれそうなのに欲張って食べやまないのに気づいたラインガルスは、こっそりミートボンをマントへ落とし、賢いリスみたいにしまい込んでおいた。

 冷えて固くなったミートボンは、まだまだおいしかった。


「これはっ!」


 やっと気がついたアガタが、息絶えたリンガリザードに手のひらを打ち付け「食べようよ!」と言った。


「どうにかできるのか?」


「父さんたちはモンスター狩ったら解体所に預けて枝肉を持ち帰ってたから焼くのはできるよ」


「モンスターに突っ込んでいくのはやめな」


「しっぱいしっぱい」


 ためしにチートンに解体できるか聞いてみると、むりむり、とマントを振った。


「足だけでも持って行ってみるか」


 剣は王都へ来る途中であげちゃったから、小刀『龍切』と、ふつうの鉈がある。

 小刀を刺すと柄までするっと刃が通り、ひとまわりさせて間接の筋を切って、足の固まりを倒し、血が流れ終わるのを待つ。


「マントに入れてみよう」


 地面にしいたマントの上に、リンガリザードの足を押し込むと、4本全部入った。


「しっぽは?」


「荷台に乗せられるかな」


 長すぎて、しっぽを切って分けた。

 おぼつかない作業に手間取り、昼になった。

 謎のダメージが深かったのか、いったん横になると、動く気にならず、そのまま時を過ごした。

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