表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宇宙のカラー  作者: 湯長 森一郎
序走
1/26

1 ラインガルス

 目が覚めて、顔を洗って鏡を見たら、十代半ばの少年だった。

 黒髪を角刈りにした精悍な顔立ちをした


「ラインガルス」


 そう、知っている。

 ゲームのキャラクターで、主人公の敵として現れ、ライバルとして散ってゆく。

 ラインガルスの姿をしていても、自分はそうではないことはわかっているのに、誰だったのかは思い出せない。


 窓からは湖が見える。

 ここは別荘だ。

 と、なぜかわかる。

 部屋を出て、廊下で中年の男と顔を合わせる。


「ラインぼっちゃん、今日も鍛錬ですか」


「うん」


「いってらっしゃい」


 ラインガルスは湖を走って一周する。

 行き交う人たちはおだやかで、会釈をしてすれ違う。

 とても平和だ。しかしそれは、ごく限られた場所にしかない。


 何日か、夜に抜け出して周辺を探検してみた。


 この世界はひどく残酷で、強すぎるモンスターが徘徊する場所は人が住めない。

 自然発生した魔法が降り注ぎ、生物をおかしくしたり、焼き尽くしたりする。


 ラインガルスとして生きた先、数年後には、僕は死ぬだろうか。

 わからない。

 けれど、残りの寿命が数年だったとして

 僕は何がしたいだろう。


 ステーキだ。


 ゲームは見下ろし型で、主人公はパーティーを組んで探索をしてモンスターを倒したり発掘をする、夜になったらキャンプを設営して食事を作っていた。

 制作者の趣味か、めんどうだったのか、作れる料理のレパートリーが少なくて、ステーキにして食べればどの肉もプラスの効果が数倍になるというステーキ素敵待遇なゲームだった。


 それでいこう、それでいいや。


 そのためには、主人公の仲間になるキャラクターのうち、ステーキ要員たちを勧誘しよう。


 塩も最高級の岩塩がほしい。

 調理器具も。


 キャンプをして、ステーキを食べて暮らそう。


 ラインガルスは別荘に戻り、浴槽のぬるま湯につかりつつ、旅立ちの決意を固めた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ