表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
〔GIGA〕  作者: 藤宮 創
6/20

SCENE 5――ゴードンの懸念――

 「何だ……これは」

 ゴードンは茫然と呟いた。

 モニターが焼き切れるかと思うほどの、凄まじい光。思わず目を逸らした数秒――その間に、一体何が起きたのか。

 正常に戻った画面――そこには、うつ伏せに倒れたドレイクが映っていた。

 目立った外傷はない。だがその身体からは白い煙が幾筋も立ち昇り、銀色の防火服は、至る所が黒く焼け焦げている。

 その傍らでは、筋肉組織が露出するほど焼け焦げた――トレストの姿。ドレイクの意識はもう無いのだろう。彼が創り出した炎は、その身から跡形もなく消失していた。

 熱で濁った眼が、嗤う――それでも尚、平然と直立している様は、まるで悪趣味なSFX。

 この世界、だからこそ――そしてこの男の、異常な精神力を証明する光景だった。

 「――強力な電荷の放出……?」

 すぐ隣で、コンピュータの解析結果を凝視していたオペレーターが、思わず声を上げる。

 マグカップを握る手に、力が入った。

 「なに……?どういう事だ」

 困惑気味のゴードンが問い質す。

 「つまり――」オペレーターは、信じられないという風に、一度言葉を切った。

 「……落雷です」

 「……は?そんな――馬鹿な!?」ゴードンが声を荒げる。

 あり得ない事――。

 ――<GIGA>システムには、気象条件などプログラムされていない――

 このシステムは、“天候”という概念そのものを知らない筈だ。

 だとすれば――。

 「トレスト……奴の能力だというのか……?」

 ゴードンの顔が蒼ざめた。その眼が、モニターの中で両腕を高く掲げ、勝利を誇示する醜悪な怪物を見据える。

 ――あいつの能力は……システムを捻じ曲げるとでも……?――

 ――最悪だ。

 よりによって――<GIGA>の“真実”を知るあいつに、そんな力が備わるとは。

 何とかしなくては――。

 「……イレイザー支部長?」

 鬼気迫る、ゴードンの表情――オペレーターは怖々声をかける。

 「――研究チームは?今何をしている……?」

 眼球だけをぎろりと動かし、彼はオペレーターに訊ねた。

 「――遅れている<GIGA>ワールドの構築を……並行して、各被験体のデータ解析……それと……」

 「中断させろ」

 説明もそこそこに、ぴしゃりと言い放つ。

 「早急に、今の現象を解析させろ。トレスト・ミハエルコフの能力――それを徹底的に解明するのだ」

 「……ですが、支部長……」

 「――早くしろ!」

 一喝。オペレーターが、びくっ、と身体を縮込ませる。

 ――気弱な社員の抗議を聞いてやれる様な余裕は、今の彼には無い。

 大慌てで端末に向かう姿を、苛立った眼が、見詰めていた。


***


 「低能どもが……」

 延々続く、薄青の廊下。総合管制室を後にし、柔らかい光の中を足早に歩くゴードン――その手には、メタルシルバーの携帯が握られていた。

 ――時間が無いんだ――

 耳にあてた内部から、コール音が繰り返し、漏れ聞こえる。

 ――“法案提出”という虚偽(フェイク)で、なんとか体裁を取り繕ってはいるが……いずれ幹部どもは、レイスは……私の真意に気付く――

 その前に、何としても――。

 ――コール音が途切れた。

 どこかへ、繋がった様だ。

 「――私だ」

 その声に、僅かな緊迫感が混じる。

 ――もう、選択肢はない――

 ――覚悟した様に、言葉を紡いだ。

 「そうだ。あいつを……“教授(プロフェッサー)”を、覚醒させろ――」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ