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〔GIGA〕  作者: 藤宮 創
19/20

SCENE 16――brute――

 ――まるで、光る砂浜の様だった。

 疑似(スパー)戦闘(リング)スペース。その白い空間一面に広がる破片――。

 疑似(スパー)戦闘(リング)ギミック=あのデッサン人形。

 眼の前の空間:見渡す限り――百体分はあろうか――その破壊された残骸が散らばっていた。

 ――その中で、佇む影がひとつ。

 樽の様な巨体が――蒼い瞳で、その光景を眺めていた。

 「まだ……足りねえ……」

 ――トレスト・ミハエルコフ。その口から、失望にも似た響きが洩れる。

 「おい……もう、終わりか……?」

 見上げた虚空に、問いかけた。



 ――彼は苛立っていた。

 現実に。

 <GIGA>に。

 自分自身に。

 それは――満たされない事への苛立ち。

 終りの見えない、監禁の日々。

 未だコントロール出来ない、自身の能力。

 そして、最も求めるものは――。



 「……もういいだろう」

 突然――足元から声。見下ろすと――地面から生え出た様な格好で転がる、人形の首がそこにあった。

 「システム的にもそうだが……これ以上は、我々の方も限界だ……」

 その首を介して――喋っているのは、忌々しい学者ども。

 心底疲労した声が、無機質な残骸から聞こえて来る。

 「フン……悪趣味だな」

 「媒体がなければ――この世界で肉声の具現化は出来ないからな……仕方あるまい」

 トレストの侮蔑に――声は、淡々と正論を述べた。

 ――<GIGA>ワールド:その基盤――徹底したリアリティ。

 その土台の上に、精神で構築する建造物――被検体の能力=≪MECELL(メセル)≫の性能。

 ゆえに――虚空から声を発する様な非現実は有り得ない。それを許せば――。

 この研究そのものが、意味を成さなくなる。

 「まあいい……ところで、ゴードンの野郎はどうした?今日はそこにいないのか?」

 首の残骸を介し――息を呑む気配がした。

 「いい加減……あいつには、約束を果たしてもらいたいもんだ」



 ――最初に奪われたのは、財産。

 メルザックの権力:研究チームへの資金提供をストップさせた。

 次に、仲間。

 苦楽を共にした研究員達:買収・罠・社会的抹殺――去っていった。

 そして――肉親。


 奪い返す。

 その為に、彼は――<GIGA>に身を委ねた――。



 「支部長は――」

 「――“出張中”だ。恐らく……君の父上の処だろう」

 ――突然。

 初めて聞く声が、残骸の発言権を奪い取った。

 「――何?」

 「あいつにも困ったものだ……父上程の天才的頭脳――活躍して頂かなければ、大きな社会的損失だというのに」

 快活な声――それが紡ぐ言葉に、トレストの意識が揺れた。

 「――どうだね?取引をしようじゃないか。君の望み……私には、それを叶える力がある」

 自信たっぷりに――その声が告げる。

 「……何者だ?あんた……」

 トレストの声が、僅かに震えた。


 「私は、レイス――メルザックを統べる王」


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