ANOTHER――分岐――
「そうですか……マグダネルが……」
――静かな声が響いた。
冗談の様に広い室内。柔らかな絨毯の上――重厚なソファが二つ、斜向かいに鎮座している。
その右側:座る人物――カーキ色のコートに身を包んだ男。大柄。
深いバリトンの声を発する。
「所詮……その程度の小物だった、という事ですよ……司祭殿」
その言葉に――左側:派手な刺繍の施された長衣の男が、小さく舌打ちした。
「せっかく、目を掛けてやったというのに……あの役立たずが」
痩せぎすの身体が、苛立ちに震える。
「今は意識不明らしいですが……まあ、どの道死んだも同然でしょう」
コートの男:にやりと冷たい笑みを浮かべた。
「それで――今後の事ですが」
長衣の男――司祭:険しい顔で俯いている。
その姿を楽しそうに眺めながら――コートの男は続けた。
「もうあの刑務所の中には……我々の使えるカードは一つしか残っていません」
「――“brute”……あの獣ですか」
苦々しげに、司祭が吐き捨てる。
両腕を飾る黄金の腕環が、しゃん、と微かな音を立てた。
「……果たして、まともに我々の言う事を聞くかどうか……」
「御心配には及びません」
コートの男:おどけた調子で人差し指を立て――首を傾げた。
この仕草は、どこかで――。
「我らが“取引相手”が――きっと、良く計らってくれるでしょう」