003 猫耳の少女3
ニーナさんとギルドカウンターに依頼完了の報告を済ませ、ササッと自室に戻る。
外套をクローゼットに仕舞い、扉に遮音、結界の魔術符を貼り付ける。
簡単な依頼だったとは言え、もしかしたら死んでるかもしれない人を探すのはやっぱり精神衛生上宜しくないよね。
余分な荷物を部屋の隅に降ろし、魔術式を仕込んだ普段着に着替える。
ふと部屋に置かれた姿見が目に入る。
腰まで伸びた緑がかった銀髪、頭頂部にはピコピコと動く猫耳。
スカートの尻尾穴から生えた尻尾。
日本なら小学生と言っても通用しそうな小柄な体。
顔に関して…自分で言うのもなんだけど結構可愛いと思う。
この世界に来てはや5年。見慣れたといえば見慣れたものの、やはりこれが今の自分の姿だという実感は薄い。
元の世界での名前は『要 翼』、年齢17歳の高校2年生。性別は男。
大丈夫。ちゃんと覚えてる。思い出せないことは多いけど、思い出した内容はちゃんと覚えてる。
どうやらボクは一度死んだらしい。
らしい、というのはいかにも他人事のようだけど、ボクの場合前世の記憶は一部しか覚えていないし、死んだ理由も覚えていない。
何となく、死ぬ瞬間のようなものをうっすらと覚えているだけだ。
気付けばこの世界の森の中をさ迷っていた。
今思えばいつモンスターに襲われて命を落としていてもおかしくない状況だ。
ただ運が良かっただけ。
この世界では簡単に人が死ぬ。
そりゃ前世だって戦争なんかあれば簡単に多くの人が死ぬ。
でもここでは日常のなかで人が命を落とす。
例えば病やモンスターに襲われて、他にも盗賊の被害にあって。
とても簡単に人が死ぬ。
そんな中で今日まで生きてこれたのは森でさまよっている時にボクを拾ってくれた『あの人』のおかげだ。
離れてから約1年。
元気にしているかな?
懐かしい気持ちとともに『あの人』との日々を思い返す。
次回から猫耳少女の回想になります。
今覚えている前世の情報は
名前
年齢
性別
前世の世界での多少の知識
になります。
日付が変わるあたりにもう1話投稿できたらいいなぁ…(*´﹃`*)
感想、ご意見などあれば是非ともお願いしますm(*_ _)m