027 ボクとルームメイト達2
入学試験が終わってから始業式まで、5日程自由に出来る時間がある。
カンナと寝る前に今後の予定なんかを話し合っていた。
「ボクは小遣い稼ぎで依頼でも受けようかと思ってたんだけど、学費の割引が結構大きいから思ったより余裕があるんだよね。」
「そう言えばリリィって冒険者登録してるんだな。
ちなみに等級は?」
「ん?六級だよ。
まぁ二年丸々学費稼ぎでずっと依頼受けてたからね。」
「いやいやいや、二年丸々ってそれでも普通は十級から始めても八級になれればいい方なんだぞ?」
「あー、ボクの場合最初の一年の間一緒にパーティー組んでくれてた人が等級高かったからね。
勿論自力で受けた依頼もあるし、おんぶに抱っこで上げたわけじゃないよ?」
「あぁ、うん。実力に関しては疑ってないよ?
短縮詠唱なんてその年で出来ても簡単な術式を一つ二つ出来ればいいくらいなんだから。
そもそも実技試験のトップってだけでも十分だよ。」
カンナはご飯以降結構砕けた喋り方をしてくれるようになった。
やっぱり部屋が同じなのに他人行儀はちょっとさみしいよね。
「うん、まぁあれでトップって言うのもちょっと拍子抜けなんだけどね。
まだ盗賊に囲まれた時の方が厄介だよ。」
「その年で盗賊に囲まれて無事に生き延びるのがおかしいんだって…」
「それはそうとして、明日からどうする?
必要なものは買い揃えたし、観光するにもあんまり見るところ無さそうだよね。」
「あー、予定無い感じ?
だったらちょっとお願いしたいことがあるんだけど」
「なに?内容によるけど出来ることなら引き受けるよ?」
「ありがと。
リリィっていつも魔道書読んでるらしいけどさ、魔術とか教えてもらったりできない?」
「うーん、属性によるかな。
ボクの場合風属性は感覚で使っちゃってるから教えるのは不向きかも。」
「風属性『は』、って事は他にも使えるってこと?
「一応ね。風が主属性で副属性に闇と水。
あとは水の上位で氷かな。」
「いや、分かってたつもりだけど結構規格外よね…リリィって…。」
「そう?とりあえずその中なら教えられるよ。
あとは基礎的な事かな。」
「じゃあ基礎の方でお願い!」
「おっけー。ミアとシンシアはどうするのかな?
予定ないならみんなで一緒にやりたいし。」
「朝ご飯の時にでも聞いてみたら?
多分来ると思うけど。」
「そだね。明日聞いてみよう。
それじゃそろそろ寝ようか。」
「うん、おやすみ。」
「おやすみ。」
カンナは既にベッドの上で寝る体勢に入っている。
ボクもいつも通りの服を脱ぎ、チョーカーを外そうとして考える。
ボクが猫から人に化けてることとか、バレない方がいいかな?
でも三年間隠し通せる自信もないし…。
「ねぇ、カンナ」
「うん?どうしたリリィ?」
「ルームメイトに隠し事とかしたくないから話すけど、他の人には内緒にしてて欲しいことがあるんだ。」
ボクの真剣な雰囲気にカンナも体を起こす。
「なんだよ改まって。」
「大事な事だから。ちょっと見ててね。」
チョーカーを外し術式を停止する。
着ていた下着が床に落ち、猫の姿になった僕をカンナが凝視している。
しばらく無言の時間が続き、ボクは少し後悔した。
話すのが早かったかもしれない。
気まずくなってチョーカーを咥えて魔術を通し人化の術式を起動する。
「ごめんね、びっくりしたよね。もし気味が悪いなら先生に言えば部屋は変えてもらえると思う。
出来れば黙ってて欲しいけど、無理強いはしないよ。」
「リリィ、もう一回猫になれる?」
予想外の言葉に面食らっていると、
「黙ってるし気味が悪いなんて思ってない。
だからもう一回猫になってみて。」
その言葉でホッとしてもう1度術式を停止して猫に戻る。
「ねぇ、リリィ…
撫でてもいい?」
あの…カンナさん…?拒絶されなかったのは嬉しいけど、その手をワキワキ動かしながら距離を詰めてくるのは怖いよ…?
でも、黙っててもらうならそれくらいは我慢できる。
カンナの足元に移動して背中を丸める。
最初は恐る恐る撫でていた手が背中から頭に移動して顎を指先が撫でる。
何この子撫でるの上手い…。
気づくと喉がゴロゴロと鳴っている。
猫の姿でなさせたのはエレナさん以外に居なかったから、かなり久しぶりだった。
うつらうつらし始めたところで膝の上に移動され、いつの間にかボクは眠っていた。
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翌朝目が覚めるとカンナに抱き抱えられた状態で寝ていた。
起こさないように静かにベッドから抜け出し、窓から朝の散歩に出かける。
知らない間に寝ちゃってたのもそうだけど、エレナさん以外の人と一緒に寝たのが初めてでちょっと恥ずかしかった。
学園の時計台は街のどの建物より高く、学園の敷地内ならどこからでも時計が見えるように出来ていた。
新しい街で新しい友達と新しい生活、不安もあるけど楽しみでもある。
そしてボクは知らない。この朝の散歩が後に騒動を引き起こすことを。
でもそれはまた別のお話。
満足したボクが部屋に戻るとカンナが起きて身嗜みを整えていた。
窓から入り、予め用意しておいた足ふきで足の裏を綺麗にする。
猫のままじゃ喋れないので人化の魔道具を身につける。
「おはよう、リリィ」
「おはよう。ごめんね、昨日はいつの間にか寝ちゃってたよ…。」
「あぁ、気にしないで。こっちも満足させてもらったから。
また撫でさせてね?」
「あ、うん…。出来れば寝たら自分のベッドに置いて欲しいんだけど」
「えぇー…寝てもいいから撫でさせてよ」
ちょっと悲しそうな顔をされてボクが折れた。
「じゃあ程々にね?」
「おっけー!とりあえずそろそろ朝ご飯食べに行こ!」
朝からカンナは元気だなぁ。
さっさと出ていくカンナを追いかけて食堂に向かうと、ミアとシンシアも既に席についている。
「二人共おはよう。」
「おはようございます。」
「おはよ。」
「それでさ、ご飯食べてからミアって予定ある?
シンシアは強制連行ね!」
「特にはないですよ?
何かするんですか?」
「カンナ、確かに予定はないけど聞くくらいはして欲しい。」
「リリィに魔術の基礎とか教えてもらおうと思ってね、どうせなら皆で一緒にやらない?」
「いい「ね」「ですね」
こうして今日の予定は決まった。
思ったより早く書けたので投稿します。
引き続き始業式までののんびり日常パート。
今日中にあと1話投稿したい。
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